第63話 あ
最終面接の結果が来るまでの間。
私はつぐちゃんとイチャイチャを謳歌していた。
もちろん、物理的な意味以外でもね。
つぐちゃん、あんまそういうのしたがらないから…。
でもその距離感が好き。
操られてる?それでもいいの。
私は表情の固いつぐちゃんの笑顔が見れるだけでいいの。
私にしか見せない顔があればいいの。
つぐちゃんがいればいいの。
「はい、新曲できたよ。」
「まじで?一昨日言ったばっかじゃん。」
つぐちゃんの路上ライブを応援するために曲を作った。
今日はそれを見に行く日。頑張ってるつぐちゃんをね。
狙い時は平日夜らしい。てなわけで金曜20時過ぎ。
着々と準備を済ませるつぐちゃん。
マイクテストをして、路上ライブ禁止って書かれた看板の横でライブを始める。
私の曲を始める。
「♪携えた 恋心は 雨上がりの夜空を作って」
「♪もし何か 邪魔されてもさ 構わない君と一緒なら」
「♪伝えても伝えきれない 重い想い思い出し暮れる」
「♪この世界の軸は私じゃなくて 君で良いって ねえ」
つぐちゃんに言われた。
―「あんたの気持ちで書いてみてよ、歌詞。」
だからありのまま書いてみた。今の気持ち。
つぐちゃんへの気持ち。
ラブレター朗読会みたいで恥ずかしい。
「♪乱反射した気持ちは 未来に届く過去をも変える」
「♪論理も理由も説明も いらないのだって私は」
「♪この瞬間君と一緒だから」
つぐちゃんのギターと歌声、そして私の曲は気づいたら人だかりを作っていた。
スマホ構えてる人もいる。私の純粋な気持ち…つぐちゃんを通して伝わったのかな。
「ありがとうございました。今の曲はオリジナルで、響心といいます。良かったらTwitterフォローしてください!絶対有名になるので。」
つぐちゃんの力強いMCを最後に、路上ライブは終わった。
「葵、私のライブどうだった?」
わあ。こんなこと聞かれたの初めて。
路上ライブは何回か行ったことあったのに。
「最高だった。最高に恥ずかしかった。」
吹き出すつぐちゃん。
「そりゃあんな歌詞自分で聞いたら恥ずいわな。」
「あんたの心、思ったより綺麗じゃん。気づかなかった。」
褒め言葉として受け取っておこう。
「やっぱ、創作で語る人間なんだよ、葵は。」
改札を抜けながらそんなことを言われる。
今まではうがってたのかもしれない。
「ありがと。」
純粋にこの言葉を使える日が来て嬉しい。
駅のホームにて。スマホが鳴る。これは…。
「つぐちゃん、来たかも。」
「え、今?遅くね?」
震えかける手でメールを開いた。
【採用のご連絡 一ノ瀬様】
「ああ!あああ!あ!あ!」
「おお、落ち着け落ち着け。おめっとさん!」
ああ!受かった!
2人で採用メールを黙読する時間が生まれる。
「んだようっせーなあ…。ざけんなよ…。」
…うるさいな。ホームで喧嘩してる人がいる。
「これ間違いなく採用通知だよね!?」
「件名に書いてあったでしょ。」
「ああ!?だからこっちが先にここ立ってたっつってんだろ!?」
「そんなこと言ってねーよ頭わりーなあ!」
会話に割り込まないでください、酔っぱらい。
『間もなく、列車が通過いたします。』
つぐちゃんは優しい目でこっちを見る。
「ねえ、葵。」
かわいい。朗らかな笑顔。
『危ないですから、黄色い線の内側まで…』
つぐちゃんは笑顔で口を開く。
「私、あんたと」
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ーーー
ー
瞬間、つぐちゃんの背景に写っていた男二人組が気づいたら目の前に現れていた。
…あれ、つぐちゃんどこ行った。
『えーただいま緊急事態が発生しました、落ち着いてください!』
駅員の肉声。声色がこわばってる。
つぐちゃん、どこ。
「つぐちゃん?」
あたりを見渡してもいない。どこにもいない。後ろにも横にも、電車のま
あ




