第61話 敷かれたレール
2週間後になった。
書類選考、通った。
呆気なく。
―「私ね、ここで部長してるの。良かったらうちの部署来ない?普通は一般採用しかしてないんだけど。」
西園寺さんは、誰もが知ってるような大手編集社の部長さんだった。
そこに特例で、編集部門の面接を受けることになった。
こんなこと、ある??
いや、起こるはずがない。
あり得ない。
あまりにもフィクションだ。
…でも起きた。
一次、二次、三次…。強くてニューゲームをしてる気分だった。
私は社会、世間からズレている。
だから、ひとたび口を開けば、周りから拒絶される。
そんな私が口を開いて、他の就活生を叩き落とす。
なぎ倒す。
まさになろう系って感じ。笑える。
四次面接。私は西園寺さんと再会した。
「久しぶり、一ノ瀬さん。」
「どうも。」
「何?面接の場だからって私に緊張してる?」
そりゃそうだろう。
「いえ、私の立場として当たり前に背負うべきものを自覚しているだけです。」
その後は、この前の居酒屋みたいな話。似たような話をした。
あっという間に終わった。あっという間過ぎて覚えてない。
「葵、おめでとう。」
「いや、まだ最終面接終わってないんですけど。」
面接が終わった日、私の家でつぐちゃんにお祝いされる。早いって。
「もう勝ち確定でしょ。」
慢心は…良くない。きっと私の本当を知られたら、西園寺さんからも見放される。
「ともかく、私は葵が一直線に進んでるの、見るの好き。」
…へへ。つぐちゃん好き。
「私も。つぐちゃんもまっすぐだから大好き。」
つぐちゃんのあったかさが、人生をかけて冷やされた心を温めてくれる。
ずっと、こんな日を続ける。そのために最終面接、私頑張る。
「一ノ瀬 葵です。よろしくお願いします。」
「よろしく。」
西園寺さんの面接は通り、最終面接。不思議と緊張は無い。
「君、色々やってるんだってねえ。」
「就職しなくても食っていけるレベルって西園寺から聞いてるよ。」
私、決めたの。
決めたことには一直線に向かうの。
それが私。
「全部切ってきました。」
「Twitterのアカウント、消しました。」
「ゲーム制作、やめました。」
「御社で働くために、線を一本に絞ってきました。」
社長は笑った。
「私はまだ採用するなんて言っていないのだが。」
「はい。」
「この会社、落ちたらどうするのかね?」
「わかりません。」
再び笑った。
「君、面白いね。」
私が人に面白いと言われる時、それは大抵変だと言われてる時。
それでも良い。私の本気でぶつかって、砕けるならそれでもいい。
その覚悟が、伝わればいい。
「ありがとうございました。」
私は深く頭を下げ、扉を閉じた。
これで、良かった。




