第60話 緊張するの合ってる?
「君、お名前は?」
「一ノ瀬 葵です。大学4年です。」
おばさんは私とつぐちゃんの聖域である2人席に椅子をくっつけた。
「私、西園寺って言うの、よろしくね、一ノ瀬さん。」
西園寺…かっこいい。このおばさん、よく見ると顔も整ってて…
ちょっとかわいいかも。30過ぎくらい?
「普段、何してるの?」
「創作を色々…って感じです。西園寺さんは?」
「私はね…。」
ビールを一口。
「私は編集社で働いてるの。」
ビビッと来た。
心が叫んでる。
これは
掴むべきものだ。
「それでシナリオに反応していただいたんですね。」
「あら、かしこまらなくていいよ、さっきと同じ感じで!」
一瞬で見透かされた。
「他にも、色々やってるんだって?」
「はい、絵、音楽、ゲーム制作をしています。」
ガヤガヤとした普通の居酒屋。
なのになんだこの緊張感は。
「あらー、すごいね、多才だね!どれ、見せて見せて。」
距離が近いなこの人…。私は黙ってスマホを出してTwitterを開いた。
「え!6万フォロワーもいるの!?」
「ああ…まあ…。」
「絵もすっごく上手いじゃない?ゲームはどんなの作ってるのよ。」
正しく根掘り葉掘り。
「こんな感じのノベルゲーです。ベータ版はSteamに上げてます。」
「あー、これのシナリオね!これの絵と音楽と…動きも?」
「はい。出来る最大限がこれですが…。」
褒め上手な人。私なんて周りと比べたら大したこと無いのに。
「帰ったらこのゲームやってみる。連絡先交換しない?」
え、まじ?とっさにつぐちゃんの方を見てしまった。
「別にいんじゃね、葵の好きにすれば。」
そうか…じゃあ好きにするか…。
西園寺さんとLINEを交換した。
で、ゲームのリンクを送った。
「執筆歴はどれくらいなの?」
「大体…2年くらいです。」
「二次創作?オリジナル?」
「基本オリジナルですね。初めて書いたのがオリジナルだったので。」
「1から生み出すっていうのは凄いことよ!作品数はどれくらい?」
「大体…4作品くらいです。それぞれ10万字ちょい超えくらいですかね…。」
「それって、プロットから完成まで含めて?」
「そうです。」
なんだなんだ。やけに興味持ってくれてるな。
「ちなみにですけど、どこにもアップしてないので見せれはしないですよ。」
「え!自己満でそこまでしちゃうの!いい熱量持ってるじゃない。」
酒の手が止まらなくなるからやめてね。
「あのさ、一ノ瀬さん。」
「はい。」
「うち来ない?」
…来た。
大学4年9月。このフラグ。




