第56話 楽しいはずだった
学園祭の日になった。
それが意味するのはそれすなわち。
Insightのライブ。
これだけ。他にも出展はあるけど、そんなの飾り。
私たちのライブのためにこの学園祭は開かれた。
そのために必死になって練習して練習して、指の皮が剥がれても練習して、声が枯れるまで歌った。
心が繋がると演奏が良くなるっていう私の予想は大当たりだった。
ギターとボーカルが合ってるから、自然と他を引っ張る。
最高ね。
それに今日はもう一つ最高なことがある。
マギカさんが学園祭に来てくれる。
どこに住んでるかを聞いたことは無かったけど、意外と近かったみたい。
どんな化学反応が起きるのか楽しみ。
「とりまリハまで自由行動で。」
つぐちゃんの号令により一旦解散。
「つぐちゃん。」
「なに?」
「今日のライブ、成功させようね。」
「当たり前過ぎて忘れてた。」
出店を見ながらつぐちゃんとゆっくり練り歩く。
そんな中スマホの通知が鳴る。
《XxmagicaxX:ついた》
着いた!
「つぐちゃん行くよ!」
「うえっ?」
走った!!
「マギカさーん!」
叫んだ!!!
「うっす。」
出会った!!!!
…ふう。息を整えよう。
「今ちょうど回ってたとこなんだ。一緒に回ろ?」
「いや、遠慮しとくわ。邪魔だろ?」
ああ、この人気を使ったりするんだな。目線がつぐちゃんに向かっているのがわかる。
「マギカさんね?葵からよく話聞いてます。つぐです。」
「どうも。俺もイチノセからよく話聞いてます。マギカです。」
私を通じて知り合いが知り合った!ヤバ!
「て、ことなので3人で回りましょい!もうほぼマブでしょ!」
私がお互いの情報をお互いに流してるから、初対面なのに友達以上に知ってるという不思議状態。
インターネットの面白さ、ここにあり。
その後はリハまで回ったり、3人で適当に話したりした。
つぐちゃんを交えてゲームをする約束もした。へへ。
そしてリハを終え、マギカさんが観客席にいるのを確認しステージに立つ。
学園祭は、今幕を開ける。
『こんばんは、Insightです。ぶち飛ばします。風速は台風を超えます。』
ギタボの私が適当にMCをして、掴みで流行り曲1曲、オリ曲を3曲披露した。
正直あんまり覚えてない。これがゾーン?ってやつかも。
とにかく必死に歌って弾いて。頭より身体が先に動いて。自分の気持ちをぶつけて。
…もういいや。言葉にするのが面倒。何が言いたいかっていうとさ、
人生、サイコー。
この一言で十分。私、多分今世界で一番輝いてる。LOVE、世界。
「それじゃねマギカさん!」
「またDiscordで。」
マギカさんを見送ってステージの方にいるメンバーの所へ。
はあ…最高の日だった。この日のこと、一生忘れない。
私たちは一緒にいる限り最強で最高なんだから。
そう、ずっとずっと一緒に…。
「なあ、俺たち解散しね?」
えいじくんはステージに足をかけながら言った。
この日のこと、一生忘れない。いや、忘れられない。




