第53話 結果至上
ふう…。終わった。
5万字弱かな、1日1万字ペースといったところ。
ゲームのシナリオにしちゃ重めの設定になっちゃったかもだけど、満足はしてる。
《は?5万字?》
「え?なんか間違えた?」
とりあえずの最低ラインだと思って提出したそのシナリオにはそんな一声がかけられた。
《いや間違ってねーけど…俺メモ書きくらいしか出来なかったわ。頭どうなってんだよ。》
そりゃまあ、期待されたら最低限はやろうという頭をしていますが。
「つまり、私がシナリオ担当ってことでいいね。」
《まあそうだな。俺セリフとか出てこねーし。》
「セリフは…ほら、頭にキャラがいれば勝手に喋るでしょ。」
《喋んねーよ。》
イマイチ会話が噛み合わないな。誰でも出来ることのはずだけど…。
「あ、それとBGMも浮かんできたの作ってみたよ。」
再び驚きというか、歓喜の笑い声をあげるマギカさん。
mp3で送って聞いてもらった。ほぼ始めての作曲。どうだか…。
《いーじゃん。癖あるけどまあ…おけ。》
概ね良さそうだった。
「マギカさんの方が上手く作れるんだったらそれでも良いよ。」
《そんな簡単に出来るみたいなことじゃねーって。自分ちゃんと見えてんのか?》
褒め上手だなあ、全く。
「とりあえずこれでキャラデザも起こしてみるから。」
《おけ。モーションはこのソフト使う予定だから。使い方見といて。》
「はーい。」
これは…ゲーム版Live2Dみたいなもんだな。Live2Dは作ったことあるからいけそう。
…てな感じで、ゲーム制作のスタートはとんでもなく順調に切れた。
「一ノ瀬オリ曲まじ?どんな風の吹き回しよ。」
「まあ。気分がノッたっていうか?」
私はBGM以外にも音楽を作った。バンド、Insight用に。
真っ先に反応したのは、ベースのえいじくん。
「どれどれ…しょげてたってしょうがない、文句ありきの反省文書いてみて。ほら…。」
「一ノ瀬、めっちゃ青春みたいな歌詞書くじゃん。こういうの好きだっけ?」
Insight用に作った。それが意味するのは、バンドの空気に合わせた曲を作ったということ。
別に趣味ではない。
「このバンドの空気を壊さないかつ実現可能なラインを模索したらそれになった。それだけ。」
みーんな目を丸くしてこっちを見る。なんですか?
「…まあいいわ、練習しようぜ、これ!」
そろそろ気づく頃かな。
「てか葵さ、この曲ギター一本足りなくない?」
つぐちゃんが気づいた。思わず口角が上がる。
そう、この曲を演奏するにはギターが足りない。
このために私はギターを練習してきたのかもしれない。
隠していたギターを取り出す。20歳の記念に買ったフェンダーのテレキャスター。
「私がバッキングをやる。」
再び場面が凍りついた。今度は良い意味で。
ああ…私、今青春を取り戻せてる。そんな充実感に包まれてる。
へへ、笑みが溢れるぜ。




