第52話 利用価値
読者が離れないようにってフックを作るのは良いけどさ、
あまりにも突然すぎると逆に煩雑に見えますよ?
…で、ゲーム?一緒に?私が?
「急にまたなんで突然そんなこと。」
全く意味がわからなかったので素直に質問した。
《…前言ったことあるだろ、俺ゲーム完成させられたことないって。》
ああ、そういうことか。
私がマギカさんと一緒にいて心地良い理由がまた1つわかった。
マギカさんも私と同じなんだ。
「なるほどね、だから人を巻き込んで達成しようってね。」
自信満々に答えた。
《いや、お前絵とか音楽とか出来るから手伝ってほしいってことだけど。》
…。
「私絵描くって言っても、趣味だよ?大した絵描けない。」
《でもお前3万フォロワーいるじゃん。》
「それは偶然だよ、運が良いからさ、私。」
《俺から見たら、お前絵上手いと思うけどな。》
私、今口説かれてる?
私の絵についての評価なんて私が一番わかってる。
下手。
楽しいから続けてるだけだから、所詮そんなもん。
TwitterのTLで流れてきて、1秒で消費されて終わるだけの絵。
「とりあえず、私がゲーム一緒に作るとして何すんの?」
交渉は条件による。さもなくば断るのみ。
《俺がプログラム全般。お前がキャラデザ、モーション、BGM、シナリオ。》
比重がおかしくはないだろうか。それに…
「私モーションもシナリオも未経験なの知ってるよね?」
《じゃあ俺と2人で進めて、出来が良い方がやるっていうのは?》
「それならまあ…。じゃない。BGMも未経験だよ。私普段歌ってギター弾いてるだけだよ?」
…。
なぜ黙る、マギカさんよ。
この沈黙…。覚えがある。
考えさせてるんだ、私に。
たしかに音楽の知識は並くらいはあるし、作曲も道すじは見えてる。
それがわかった上でマギカさんはこんなことを言い出したんだと思う。
そしてこの沈黙。沈黙。
私は今、やりたいことがあって生きている?
目標のために進んでいる?
…いや。自意識も定まらないド屑の大学生。
そんなのってさ、
つまんないよね。いっそのこと、もっと面白い方に舵を切っても良いんじゃないのかね。
「…理解したよ。」
一言。待ってましたと言わんばかりのマギカさんの声。
《答えは?》
もうわかってるくせに。答えさせる意地悪。
「YES。」
そうして私はゲーム制作をマギカさんとすることになった。
まずは方向性決め、ということでシナリオを各自書くことになった。
テーマは、異世界。これだけ。
シナリオねえ…。アニメも漫画もあんまり通ってない私から生み出すことなんて出来るのかな。
とりあえずと思い、私は重い腰を上げて椅子に座った。




