第51話 何のため?
大学3年になった。
なったから何か変わったかと言えば…。
特に。講義は減って家にいる時間と飲み会の時間は増えたけど。
「じゃあつぐちゃんはさ、何のためにバンドしてる?ギター弾いてる?」
酒カスのつぐちゃんに付き合わされて、私はいつの間にか肝臓を労る必要性を感じ始めている。
そんな中、どうしてこの話題になったのかもわからないけど、訊いた。
つぐちゃんは相変わらずビール、ビール。たまにハイボール。
飲み干して一言答えた。
「楽しいから。」
…。予想してた回答じゃない。
「意味わからん、だって普通、音楽で食っていきたいとか、自分を証明したいとかそういうもんでしょ?」
私なりの反論。つぐちゃんはすぐ返す。
「そんな重ッ苦しいのいらないの。楽しいからやる。これの何がいけないわけ。」
「私はギター弾いてる時が一番楽しいし、生きてるって感じる。」
納得がいかない。だってそんなの、生産性がまるで無い。
…でもどこか、完全には否定しきれない自分もいた。
「葵はさ、なんで私とバンドしてるの?」
私は…音楽で食っていく?自分を証明したい?
…。
いや。答えはわかってる。
「高校の軽音部では…上手く出来なかったから。」
そう。結局私がバンドしてる理由なんて、過去のやり直し。
掴んでたはずの青春を取り戻すための作業。
私の自信なさげな回答を聞いて、つぐちゃんはぷぷっと息をこぼした。
かと思ったら涙も出るような大笑い。
初めてこんな笑ってるの見た。
…ってかおい、人が正直に話した事で笑うな。
「あんた、ほんとブレないね。」
つぐちゃんは涙を拭いて、一言。バカにしてますか?
すると焼き鳥の串を私にまっすぐと向けて、一転して真剣な眼差しを向けてきた。
「その自己愛的思考と過去に塗れた鬱憤は、全部音楽にぶつけりゃいいんだよ。」
酔ってるのに難しいことを言わないでほしい。
えっと、つまり…。どゆこと。
「…作曲でもしろっての?なにバカなこと…。」
流石に笑えませんよ、つぐさん。
真剣な顔でつぐちゃんは静かに頷いた。
「えっ…マジで言ってるの?」
「うん。」
作曲か…。音楽制作ソフトは持ってるけど…。
私の気持ちを歌に、ねえ…。
「無理無理!キショすぎるし絶対出来ないわ!って言っちゃった。」
《草。》
次の日、速攻でマギカさんに共有。
《でもまあ、お前ならできんじゃねーの。》
え…。
マギカさんまでこんなこと言ってくる?流石に想定外。
「どういうこと?私を調子に乗らせても良いことないよ。」
《お前、絵描いたりもして音楽もやっててさ、作曲も出来るってなったらすげーじゃん。》
たしかに文面だけ見れば凄い、けど…。何が言いたいんだ。
《まずは文字にするところから始めてみね?》
嘘、背中を押されてる?マギカさんに?なんで?
「マギカさん、マジか冗談かわかんないからやめて。」
《イチノセさ、一緒にゲーム作んね?》
息を飲んだ。…ん?
はっ?ゲーム?




