第50話 サヨナラってするべき
「ここなちゃん…。」
大人になったね。かわいい。
「お久しぶりでございます。ちょっと話そうよ。」
ああ、私このために同窓会に来たんだ。
しかし…。
「ここなちゃん、なんでこんな離れたとこにいるの?」
トイレの前の人気の無いソファで、静かに食べ物を食べてる。
私はバカじゃないから、理由はわからないけど元気が無いことはわかった。
「そんな気持ちの中でも、私のこと呼び止めてくれたのが嬉しい。」
「なにも言ってないよ?私。」
「聞こえた。」
数年ぶりのここなちゃんとの会話。懐かしい。
「中学の頃、色々あったよね。」
「そうねえ。色々。」
「一緒に美術館行ったの、覚えてる?」
「うん、楽しかった。」
「あの楽しさ、私も一生忘れない。」
ここから先は、あえて昔話をしなかった。
…ちょっと嫌な思い出だからね。
「大学では上手くやってる?」
「うん、やってるよ。なんとかって感じだけど。」
私はここなちゃんに、踏み込んでも良いのかな。
「ちょっと話聞かせてほしいな。」
グラスを持つ手に少し力が入る。
「私…さ、ちょっと流されやすいっていうか、流されすぎて自分の意見も流しちゃう所があって。」
そうだね。そこがここなちゃんの良い所でもある。
「それで正直…あんまり楽しくないことが多かった。」
初めて聞くここなちゃんの声色。
「今日の同窓会も行くか悩んでたんだ、実は。」
「でも、葵に会えたから来てよかったって思えた。」
いつまでも私の光であり続けるここなちゃんのそんな言葉。
大好き。
「私もだよ。ここなちゃんに会えて良かった。」
ここまでは本音。でも私は…私はこのままじゃいけない気がしてる。
「でも、これが最後なんだと思う。最後にしなきゃ、ダメなんだと思う。」
望んでない。離れたくない。でも…これ以上いたら壊れる気がする。
私の防衛本能がそう叫んでる。理由は全くわからない。
ただ幸せな時間を長く共有するのが、なんとなくどん底みたいに怖いだけ。
ここなちゃんはちょっと驚いた顔をして、目が合った。
「葵、嘘ついてるでしょ。」
簡単に見透かされた。
「また機会があったらさ、会お?その時もたくさん話して、さ?」
ああ…ダメなのに。
ダメ…なの?
今はこの笑顔にかまけて、了承しても良いの?
ねえ神様。私はどうすれば良いの?
…。
「わかった。じゃあ次は、就職先が決まったら会おう。」
これで良いでしょ、ねえ。
ここなちゃんはグラスを空にして答えた。
「いいよ、それまでに連絡つかなくなったら逃げたと思うからね。」
…へへ、まだ死ねないんだ、私。
最悪じゃん。




