第48話 右手にペンを握って
「一ノ瀬です、よろしくお願いします!」
渾身の力で頭を下げた。閑散とした拍手でお出迎えされる。
祝福なんて求めてない。私はここで出来ることを証明する。
「君、ポートフォリオ見たよ。独学なんだってね?」
「はい。」
「どうして専門とか、美大とか行かなかったんだい?」
どうして、それは…。
当時そんなこと考えてる余裕無かったからです。
なんて言えない。
「大学に入ってからイラストに本気になって…。」
「なるほどねえ。独学にしちゃ上手いよ、君。よろしくね。」
わあ、褒められた!
やっぱり正解を引いたんだ。私の道はここ。
「それじゃ、まずここからお願いできる?最初は簡単なところから。」
「はい、ありがとうございます。」
ちょっとした小物の作画。うん、最初から大きな仕事は期待してないし、丁度よい。
「次、これ。」
「はい。」
「これお願い。」
「はい。」
「これ手伝ってくれない?」
「はい。」
順調だった。驚くほど順調。そしてストレスが無い。板タブなのはちょっと描きにくいけど…。
「それじゃあ、インターン生の進捗発表の場を設けさせていただきます。」
今日は社内全体での進捗発表会。今後の私の待遇に関わると勝手に思ってる。
「この会社でインターンをさせていただいてからは、主に以下のような業務に携わらせていただきました。」
順調に進む発表。
小物、背景、そして人物、キャラクターデザイン。いろんなことをさせてもらえた。
「以上で発表を終了とさせていただきます。ありがとうございました。」
パチ、パチと響く拍手。その中で一際目立つ手が上がった。
「さっきのキャラデザ、現代風って言ってたけど…最近の子そんな服着なくないか?」
40過ぎの髪の毛の薄いおじさんに言われた。
思わず反射的に返した。
「そんな事無いですよ。こちらのデザインをした時は、最近のトレンドをリサーチした上で描かせていただいています。」
「私も思ってまして~、なんかちょっと女の子っぽい?っていうか~。」
続けて女の人の声も上がる。
「最近はユニセックスなものなどが流行なので、最近の子という定義をした場合だと、こちらが正しいという風に思います。」
どうして無知な分野に対して突っ込んでいけるのだろう、あの人たちは。
そんなことを思いながら発表会は終わった。
「お疲れ様ですー。」
「ああ、一ノ瀬さん。」
「はい。」
「君、明日から来なくていいから。」
はい?
「なん…」
「発表会で人を不快にさせたからね。あの言い方はちょっとねえ…無いよ。」
「うちのお偉いさんに向かってねえ。そういうことだから。」
はい?
私、またミスった?
「え!またインターン辞めたのか!」
たくや…良いよなお前は陽気で。
なーんも知らずの目で。




