第46話 社会だってさ
「…はじめましてー。」
ガラガラと古い戸を開ける。
「あ、インターンの人ね。そこ座って。」
私に気づくなり、デスクから立ち上がってこっちに寄ってくるおじさん。
…ああ、やっぱ社会やだ。
私みたいなのが出ても大丈夫?平気?
興味本位で、映像制作の会社に行ってみた。
でもやっぱりそんな心配が頭から離れない。
「今日からよろしく。」
その笑顔が怖い。私のことを殺そうとしてる気がする。
「よろしくお願いします…。」
そんな不安の中、インターンは始まった。
業務内容は主にポスター制作、カメラ撮影のためのセッティング、動画編集についての勉強。
そんな日々が1ヶ月くらい続いた。
仕事にも慣れてきた時、思った。
これ、私じゃなくても良くない?
基本的にやってることは、別に中学生でも出来ること。
なんで私こんなことしてるんだろう。無給で。
そんな疑問を晴らしたくて、ちょっと聞いてみた。
「このポスター、こんな感じにしたいんですけど良いですか?」
社長は顔を歪める。
「うーん…。そのフォント、ダサくないか?なんか、一般的というか…。」
「面白くない。」
?
良いか悪いか聞いてるんだけど。感想は求めてないんですけど。
「じゃ、これでいきますよ。」
「いや、ダメだ。」
「はい?なんでですか。一般的なんて個人の尺度で測れるものじゃないと思うんですけど。」
社長は軽く机を叩いた。
「この会社では、そのフォントを使うことを禁止する。いいな?」
ああ…ダメだ。
こんなことがありながらも会社に勤しむ毎日。ふと社長に言われた。
「今日からは、3Dの勉強を本格的にしてもらえるかな。」
条件反射的に言葉が吐き出された。
「それ、ここでやる必要ありますか?」
言ってから場が凍りついたのに気づいた。
ヤバいかも?
「…えっと、質問の意図がわからないんだけど。」
言い訳しなきゃ…と思ったけど、
「勉強なら家でも出来ますよね?通勤の時間無駄じゃないですか。」
思ってること言っちゃった。あーあ。
社長はちょっと口をパクパクさせて、頭を書いて困った表情をした。
「…いいから会社でやりなさい。ノートPC持ってるだろ?」
理解してもらえなかった。
生産性が悪いなあ…。私は会社に貢献したいだけなのに。
その日から私はインターンを辞めた。
理由は単純、理解できないことが多かったから。
これって私がおかしいのかな?社会がおかしい?
何もわからない…。わからなくて頭がぐるぐるする。
それで大学の教授に言われた。
「短期インターンも出来ないようだったら、病院にでも行って診断書をもらってきなさい。」
…あ、これやっぱ私が悪いやつ?私が悪い子なの?
…。
笑える。




