第40話 鏡写し
「すみませーん、2人いけます?」
軽音サークルの大群から離れて、私は連れられるがまま居酒屋に入った。
つぐちゃんと二次会。そんなつもり無かったけど。
まあつぐちゃんかわいいし…。
いいか。
「すいませーん、生とお冷ください。」
はっ?つぐちゃんまた飲むの?
…ほんとに全部が読めない。初めて会う人種。
にしても、顔整ってるなあ。
私と同じくらい。
「…なに。」
凝視してたら変な目を返された。そりゃそうか。
「いや…お酒飲むんだ、と思って。」
「私ここ来る前に専門出てるからねー、今21だよ。」
あ、まじ?同い年じゃなかった。
「いいよ今更、敬語とかにしなくて。同い年だと思ってもらっていいから。」
私は読めないのに私の心を読むな。
グビッとつぐちゃんは1杯。半分飲み干した。
…新歓に来た理由がわかった。
ジョッキをガチャンとテーブルに置く。
「あ~うめぇ~。」
今の私にはまだわからない。
「で、さっきの話本当なの?」
…ああ、この人も私を軽蔑しに来たのか。
「Twitterで見たこと話してました。」
「嘘が下手、葵。」
別に嘘じゃな…嘘だけど。
…いいか。試しに全部話してみるか。
それから20分くらい、私の過去を包み隠さず、全部話した。
黙って聞くつぐちゃん。感情が読めない!
「…なんとも思わないんですか。」
試しに聞いてみた。
そしたらもう一口で生を飲み干して、また頼んでから答えた。
「私、人間ってぶっ壊れてる方が面白い音を出すと思ってるから。」
何その、私がぶっ壊れてるみたいな言い方…。
不快。
ほんとに不快。
私をこんなに不快にさせる人…。
面白いじゃん。
私はちょっとした閃きをした。
大学に入って軽音サークルに入ったのってさ。
これは何のため?って聞かれたら。
多分高校時代に出来なかったことのやり直しなんだと答える。
それならば、私は利用出来る可能性があるものに手を伸ばさざるを得ない。
利用価値のあるものを見逃すなんてこと私はしない。
そうして一言、私は賭けに出た。
「ねえ、バンド組もうよ。私と。」
次こそは完璧にやれる。大丈夫。
邪魔者はいない。
つぐちゃんは私の言葉に一切の驚きを見せなかった。
頬杖をついて、私をじっと見た。
しばらくの雑踏が間奏を埋めた。
なに。答えてよ。
「葵、私のこと利用価値があると思ってくれたんだ。」
「別にそんなんじゃ…」
全然そんなんですけど。
「いいよ。利用されてあげる。交渉成立ね。」
新歓のつぐちゃんと二人きりでの二次会、バンドを組むことが決まった。




