第39話 多数派の目、狂気の目
「それでね、軽音サークルに入ることになった。」
《ほーん。》
夜。PCをつけてマギカさんと話す。
「たくやっていうヤツが話しかけてきてさー」
《おん。》
「あいつなんか勘違いしてるっぽくて、まじでウケる。」
《おん。》
「まだ産まれたてって感じ。このウザさわかる?」
《同意求めてくんな。》
なんにも包み隠さずに話が出来るの、もうマギカさんくらいかもしれない。
ほんと匿名、インターネット最高。
「でね、金曜日新歓あるから参加することになった。」
《ほーん。》
「新歓終わったらまた話に来るね。待っててね。」
《別にどっちでもいいって。》
「んじゃ、落ちるー。」
はあ…楽しい。新生活。
今日はお風呂入って寝る…前にギター練習しよっと。
「というわけで1年生のみんな、今日は楽しんで行きましょー!」
金曜日。居酒屋をほぼ貸し切って新歓が始まった。
ぱっと数えて20…30人くらいいる。
多いけど、多分サークルメンバーのごく一部でしか無いんだろうなあ。
「お!来た!生だぞ生~。」
「全員分あるからな!」
えっ?私…というかほとんどの1年生まだ18か19じゃない?
周りを見ても誰も疑問に思わないのか、次々とジョッキを持つ。
いいの…?ルールは守らなきゃ…。
「乾杯!」
…。
…。うわっ、不味い!なんだこれ。
みやこちゃん家で飲んだチューハイ、飲みやすかったんだな…。
「お~一ノ瀬、よく飲むねえ!」
「えへへ…。」
ああ、気持ちいい…。いけないことしてるのに…。法律守らなきゃなのに…。
でもまあ…
四捨五入すれば20歳だしいっか。
へへ。
「わらひですか?私は高校の時から付き合ってる子がいます~。」
顔がよく見えない。男の人?なんで昔の話してるんだっけ…。
あ、聞かれたからか。
「へえー!それでそれで?」
ヤバい、話すの楽しくなっちゃう。
「あとは私のこと好きって人を~みんな幸せにしてあげてました~。」
「なに、幸せって!おい!一ノ瀬酔ってておもしれーぞ!」
それな?おもしれー。
「だからあ、幸せってのは…私とアレな関係になりたいなって子を~みんな望みを叶えて~。」
「私の幸せって~、みんなの幸せで~。」
「みんなが幸せにしてあげたら~、もうむっちゃ幸せなんです!わかりましたか!」
…あれ。なんか静か。声大きすぎたかな?
「そか…はは…。」
あ。これやばい。
居酒屋ではあってはいけない無音。
周りを見渡すと、私のことを見る目がみんな同じだった。
屑を見る目だ。
違う、違うの。みんな勘違いしてる。
説明、説明しなきゃ…。
「お会計、こちらになります!」
新歓は挽回の機会も与えられず終わった。
終わった…。
酔いはすっかり覚めた。無理やり覚めさせられた。
「おーい。大丈夫?」
壁に頭を押し当ててアスファルトを見つめてたら話しかけられた。
顔を上げるとつぐちゃんだった。




