第3話 運命ってことなのかな
「ほら、貸してよ。」
抵抗するな、京山。私は京山が伸ばした手めがけてジャンプ。
無事強奪。
よく見てみると塗装が荒いのがわかる。所々青い部分が見える。
「これ、私のだよね。最近携帯失くしたの。」
ここは教室。先生も見てる。わかった上で大きな声を出してみた。
…。あれ。
「ちげーよ、母さんに買ってもらったんだよ!」
先生、今こっち見たよね?なんで何も言わないの?
「先生、京山が私の携帯盗んで…」
「いい加減にしなさい!人のことを泥棒扱いしてはいけません!」
…は?
意味わかんない。あれ、おかしいな…。それ、私が盗まれたんだけどな…。違ったっけ。
変えられなかった。
いやまあ、厳密には話しかけたからちょっとは変わったかもだけど。
そうしたらこのあと、私が取る行動は…。
「は?携帯失くした?」
母への報告。盗まれた、なんてことは言えなかった。
怖い。怖い。どうしてかな、この恐怖、俯瞰して見てるだけのはずなのに当時の気持ちが直で伝わってくる。
お母さんがこっちを見る目。
怖い。怖い。
この目は…
―自分の部屋のベッドに横になる。
頬が熱い。痛い。
どうしてこうなったんだろう。私が携帯持ってたからかな。
小学生で携帯って、珍しいもんね。
自慢、したくなるもんね。
じゃあ私が悪いんだ。
携帯持ってた私が悪い。
お母さんに怒られるのも当然。私が悪いんだもん。
私が悪い。
いけない子。悪い子。
悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。悪い子。
…いらない子?
そうかも。
―「葵、起きろ。」
…低い声。相変わらず聞き慣れない声で起こされる。
再再婚した父は私にはずっと冷たかった。
お母さんにも冷たかったから、ほんとどうして結婚したんだろう、って感じ。
…ってか今日休日じゃん、なんで起こしたし。
お腹空いたし…コンビニでも行くか。
ここらへんの空気も久々に感じる。ぼんやり道路を歩いてコンビニの駐車場前まで着く。
コンビニから人が出てきた。小さい…小学生かな。シャツを肩にかけてる。
…京山だ。
ああ、これってもしかしてそういうやつ?
運命とかいうやつ?
私はこっちに走ってくる京山を見て思い出した。追うようにして店員さんが走ってくる。
「待ちなさい!」
京山万引き事件を。




