第12話 感情がジェットコースター
放課後の帰り道。
ふたりきり。
ここなちゃんと。
何を話せばいいんだろうってそれしか考えられなかった。
車道を通る車の走行音も、なぜだかありがたく感じる。
そんな私を突き刺した、ここなちゃんの言葉。
「ごめんなさい。」
今一緒に歩いてるここなちゃんは、明るくて無邪気だったあの頃のここなちゃんじゃなかった。
聞くところによると、私とはじめくんが付き合ってたことを拒絶しちゃったの、ずっと気にしてたみたい。
それで謝りたかったけど、小学校は卒業しちゃった。
佐枝中に私がいるって気づいて、罪悪感で押しつぶされそうになったんだって。
どこまでも優しい子。
私に向けられて良いとは思えない、優しい感情。私にはお世辞にもできない。
だって私…ここなちゃんを追いかけてこの中学校に来たのに。
そんな屑に、謝られる資格なんてない。
もうここなちゃんとは、サヨナラしたほうがいい。
その方がお互い幸せ。
幸せなはずなのに。
「ここなちゃん、こんな私でよかったら、また今度…一緒に帰ってくれる?」
脳みそはバカになって言う事を聞かない。
帰り際の分かれ道、ここなちゃんは私が吐き出した言葉を聞いて笑った。
懐かしい笑顔で笑った。
今になっては私にしか見せてくれない笑顔。
学校では見せない笑顔。
そうして答えた。
「当たり前じゃないですか、葵さん。」
ちょっと変な距離感。心地良い。
私、まだやり直せるのかな。
それからは、放課後は偶然ここなちゃんと一緒になったときは必ず二人で帰った。
別になんてことは話してない。ただだべって、笑って帰って。
ここなちゃん、私がここなちゃんのこと好きって知ってるんだよね。
ここなちゃんは私のこと、どう思ってるのかな。
思っても聞けずに、ただ今が楽しいからってそんな疑問は無視した。
「それじゃ、またいつかの放課後に!」
二人だけの時間、誰にも邪魔されない時間。
そんなことをしてたらあっという間に夏休みになった。
いろんな宿題。頑張って終わらせなきゃ。
美術の宿題は…美術館に行って心に残った作品の感想を書く…。
…。
スマホを手に取る。
《葵:ここなちゃん、美術の宿題やった?》
《葵:美術館、一緒に行きたいなと思って》
気づいたらLINEを送ってた。
やべ。
送った瞬間気づいた。
私、調子に乗りすぎだ。
送信取り消し…はこの時実装されてない。
ああ、終わった。もうこれデートのお誘いじゃん。
頭を抱えてたらスマホが震えた。
《ここな:おー!いいよ行こ行こ!いつにするよ?》
あー…。
胸が暑苦しくなる感覚に浸る。
私、もうちょっと調子に乗ってもいいみたい。
神様、せんきゅー。




