トライアングルレッスン:B ~夢守の巫女~
小説家になろうラジオ 「トライアングルレッスン」への投稿作品です
1話完結で成り立っていますが、前回募集された「トライアングルレッスン;U」
からの続編のような展開になっています。
「すわ、巫女姫の再来か!?」と騒がれたのは1年前。
村祭りの行事の一環でやった ”なんちゃって儀式” で一躍私は有名人になった。
祭りの中で矢を放つ場面があったんだけど
鳴るはずのない鏑矢が音を立て、刺さるはずのない矢が的を射てしまったんだよね。
だから、その当時は大騒ぎになった。自分でもビックリしたしさ。
でもそれから、特に何事もなく時間が過ぎていった。
これといって、大雨が降るわけでもなく、日照りが続くわけでもなく
地震はあったけど、揺れてるなぁ、程度のものだったし。
近くに火山もないし、海もないからそれに伴う災害もない。
ただ逆に大豊作だとか、この村が突如有名になるなんてこともなかったけどね。
おかげで、今年も例年通りの村祭りが催されるはずで、私は1年の任を解かれるの。
や~、あの時は自分でも無敵感感じてたけどね。
やっぱり私は私。普通の人だったわ。特別じゃなかった。
去年のような大騒ぎもなく、今年は粛々とでもそれなりに賑やかに祭りは行われた。
滞りなく巫女の交代も。ふぅ、これで私は晴れて自由の身だ!
大役を終えたその夜、私は夢を見た。
顔のない人形のような兵士たちが村を襲ってきた。
みんなが逃げ惑ってる。私はその様子が社の中にいながら
手によるように見えていた。
私は立ち上がって、弓を取ると次から次へと矢継ぎ早に矢を射ていた。
どの矢も外れることなく兵士を倒していくにもかかわらず
何処から湧いてくるのか、その数が一向に減っていかない。
矢を射続ける私の全身から汗が飛び散り、矢を引き絞る手が痺れてきていた。
もう、出来ない。そう、思いかけたとき、タクミとヒロシが社殿に駆け込んできた。
「ユイコ、大丈夫か!?」
「しっかりしろ、ユイコ、俺たちがいる!」
そう言うと、タクミは真っ赤な鳥に、ヒロシは白い虎に化身した。
励まされて、私は自身を立て直す。
ポロロンというスマホの着信音で飛び起きる。夢の余韻で息が切れていた。
全身汗びっしょりだ。
「こ、怖かった…。」
着信のあったスマホをのぞく。
「巫女のお疲れさん会と誕生会込みで、パーティーしてやる。」
呑気なタクミからのメッセージが入っていた。
思わず笑みがこぼれる。OKの絵文字を送信した。
「やだも~汗だく〜、シャワー浴びてこよっと。」
私はタオル片手に浴室に向かった。
その後ろで、黒い亀がニッコリ笑って
「ようやったの~。これで次の1年も安泰じゃ。」
と呟いて消えたことには全く気が付かなかった。




