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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

チート魔女に憑依してしまったようです。

作者: 嘘蜂ユウ

一人で生きてきた最強転生魔女 ✕ 人の心がわからない腹黒完璧皇帝




「貴方が好きだ」



「ずっとずっとずっと貴方だけを愛し続けるよ」













「どっかで見たな…」


黒髪、深緑色の瞳、そして神丹精込めて作ったであろう天女のような顔。

これは確か…




『でねっ!このキャラが黒髪翠眼の超美人でその上超超超強いの!!』

『チートじゃんそれ。てかスマホ近い。見えてるから。』

『で!どうどう?!』

『…私だったら嫌い。一から自分でレベル上げてくのがゲームの楽しさってもんでしょ』

『〇〇ってば相変わらずRPGゲームオタク。一回くらい私のおすすめやってみてよ』

『アンタのおすすめって乙女ゲームじゃん。却下』

『いやこれは乙女ゲーだけどRPG要素ありだから!』

『じゃあそっちも私のおすすめのゲームやってよ』

『えー…それはやだ』

『じゃあ私もやだ』

『このゲームホントに良いのに』

『はいはい』

『あーもうホントなのに!』





そんな事を話した後その子と別れて、自分の家に戻ったはずなのにそれからの記憶がない。



これは私…


「転生してる?」




うわぁ…本当にそう言うのとかってあるんだ…。

しかも私の視界の端に見えるウィンドウ…これって見間違いじゃなかったらステータスウィンドウだよね?少し興味を持ちながら確認すると、


「いやいやいやいや…既に育ちきってるじゃん…」


火、水、風、地、これらの全部はレベルカンストで測定不可能。

かろうじで光、闇はレベル999/999と記されている。


しばらくの間、ウィンドウを見て唖然とする私。ふと思い出し、右上を見るとそこにはこの体の持ち主の名前が書いてあった。



「スキアナ…スキアナ・トリシガル…」



やっぱりこのキャラってあの子が言ってたチート級に強いキャラじゃない?名前知らないけど。

こんな事になるんだったならあの時めんどくさがらずにちゃんと聞いとけばよかったな…。


確か、あの子が言ってたこの世界のストーリーは、主人公エレナと5人の騎士というパーティだったはず。エレナは公爵令嬢で、富も権力もあったのにそれらを気にせずずっと一日中ベットの上で過ごしていた病弱な少女。しかしある日彼女は浄化の力に目覚め、それと同時に自身の体調は回復に向かっていった。そして15歳の時、エレナは魔法学園に行き、そこで聖女として魔王の討伐を任される。エレナの護衛として、将来国のトップに立つであろう5人の貴公子たちが選ばれ、そして旅の途中で愛を育んでいくという王道展開だ。

確か黒幕は帝国の皇帝・ルーカス・ディ・ペンデンス。彼は帝国唯一の闇魔法の使い手であり、15という若さで皇帝にまで上りついた策略家だ。ルーカスという男は闇魔法で魔物を召喚して操り次々と主人公達の敵として立ちはだかる。彼はゲーム内でもトップの戦闘力を持ち、友達曰く『軽く500回は死んだ』とのこと。

ちなみのなぜこんなに詳しいのかというと、あの子の最推しがこの皇帝だったからに他ならない。


まぁあらかた思い出せたところで私自身の問題に入ろう。

どうするかな…ゲーム開始時点で私は生きてた。だからそれまでの間生きてなきゃなんだけど…


暇を潰せるものがない。



「どーするかな……あ、」


目の前に見えるのはステータスウィンドウ。

まだレベルカンストしていない光魔法と闇魔法。



うん決めた。




取り敢えず鍛えよ。





目指せ測定不可能!





「よし!良い感じじゃない?」



毎日毎日鍛錬鍛錬そんなことを続けてはや100年が過ぎ去った。

そして私はついに光魔法と闇魔法のステータスを測定不可能にすることに成功した。


「ついにやってやったわ!…自分でもこの集中力は恐ろしいな」


目標を達成してしまったので急に暇になってしまってはや数年。その間、私は新たに薬学について勉強を始め、知識を蓄えていた。暇つぶしに始めたこの勉強は案外面白く、新しい調合で様々な効果のある薬を作ることができるようになっていた。



そして何百年越しに人里まで降りて、そこで村の人にその薬を売りに出したり、食べ物を買ったり、良好な関係を築いていた。



それがまずかったのだろうか。



世間では魔女狩りというものが始まったらしい。

気づいたときには家を特定され、騎士団が待ち構えていた。

なんともう魔女は私一人らしい。

しかも家までバレているとなると…村人の誰かが情報を売ったか。



「下賎な魔女め」

「ついに人間にまで危害を加えるとは」

「ああ卑しい卑しい」

「無駄な抵抗はやめろ」



「「「「魔女め」」」」



…本当に馬鹿だなぁ。






気づいたらあたり一面炎だらけになってた。

私を捉えようとした騎士団はもちろん全滅。どこもかしこも燃えてる燃えてる。やっちまった、と思ったけど先に攻撃してきたのはそちらなので許してほしい。

それでもしつこく追いかけてくる馬鹿な皇帝達。流石に1年も経つとめんどくさくなるもので、いっそのことこちらから姿を現して、これ以上私を追いかけて殺そうとしないように言えばいいのではと思い始めた。



「というわけだから皇帝、次私に手を出したら帝国を潰す」

「巫山戯るな、卑しい魔女が!!」

「ん?何か言った?」

「ヒッ、ヒィィィっ!!!」



少し魔法で皇帝の体を燃やせばあら不思議、簡単にいうことを聞いてくれた。


それから何年、何百年経っただろう。


その日もいつものように眠っていた。

もう何もやる気が起きなかったから。


(……人の気配がする)

しかも物凄い殺気。

人なんて会うの何百年ぶりだろう。

これは確実に私の命を狙っている。

私は目を開けて、威圧する。



「…誰だ。貴様」

「ええと…すみません!あなたに危害を加えるつもりはありませんでした!つい気になったので……」

「…子供?」

「は、はい…」



まだ10とかそこらの歳であれほどまでに殺気を出せるか…。



「…お前、名前は?」

「ルッ、ルーカス・ディ・ペンデンスです」



ルーカス・ディ・ペンデンス…あ、


コイツが……ゲームの黒幕!!













「———う、師匠。何考えてたの?」

「ルーカスと…初めて会った時のことを考えていた」

「俺のこと考えててくれたの?懐かしいね。もう10年前だ」

「そうだな、懐かしい」



ルーカスと会ってはや10年の時が過ぎた。あの日会った気弱な姿から変わって今では見た目だけは老若男女を虜にするであろう見た目と地位を手に入れた。

やっぱり15の時に皇帝を殺してその地位に上り詰めたらしい。カラスに化けて城内を調査したから間違いない。性格改善できないかと努力してみたけど、根本的な狂気は変わらなかったらしい。これがゲームの強制力って奴なのか…。

ルーカスは先月で20歳になった。そして公女が浄化の力を開花させたらしい。それはゲームの舞台が始まるということを示している。

だから、



「…そういえば。リンデ公爵家の公女が浄化の力に目覚めたらしいな」

「うん。そうだよ」

「…この魔物、お前がやったんでしょ?」

「!それは」



私が見せたのは、コイツの使い魔のうちの一匹。

平民達が大声をあげているのを聞いて見に行ったけど、予想以上に良いものを得ることができた。



「ルーカス。こういうことは、止めろ」

「っでも!」

「お前がどんな意図でこれをしているかは分からないけど、これはダメ」

「…っ」

「ねぇ、なんでこんなことをしたの?」

「それは、」


何をそんなに言いづらそうにしているのだろう。そう不思議に思っていると、ルーカスは観念したように言葉を続けた。


「師匠が、世間から悪く言われることが耐えられなかったからだよ。皇帝の俺が実は真の悪人だったのなら、師匠への偏見は無くなるかもしれない」

「…なんで?」


意味がわからない。

なんでコイツがそこまで私に対してする必要があるの。




「好きだよ、スキアナ」

「は…」

「俺は世間一般の人間達が感じる気持ちを理解できない。人を殺すことに躊躇いなんてないし、大切なものなんてなかった。それでよかったしそれが楽だった。でも貴方といる時、俺の心は変になって、でもそれが嫌じゃなくて、貴方が欲しいと思った」

「ルーカ、」

「ずっとずっとずっと貴方だけを愛し続けるよ」

「……っ」



今私の顔は真っ赤だろう。

こんな、こんなのは何百年も生きてきて初めてだ。

知らなかった。いや、忘れていた。誰かから注がれる愛がこんなにも嬉しいことだったなんて。



「私は…ずっと一人で生きてきた。魔女狩りが始まって、村人たちに裏切られてから」

「…」

「愛なんて理解できない、でも、お前にそうやって見つめられるのが私はとても好きだ」

「スキアナ、」

「私は魔女だけど、それでもいいのなら!……お前のそばにいたい」

「!スキアナ!愛してる。愛してるよ。俺の、俺だけの魔女様」



これは、人間を信じられなくなった孤高の魔女と、人の心が理解できなかった完璧皇帝、二人の物語である。














『あー!やっぱりルーカス様とスキアナのカプは最高だわ!』

『ルーカス様が魔女のスキアナのために自ら悪の象徴になって魔女への偏見を無くす…やっぱ愛だなぁ〜!!』




ここまで読んでいただきありがとうございました。


物理的に一人で生きてきた魔女と精神的にずっと一人だった皇太子という全く違うようで似ている関係、素敵だなと思って書きました。

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