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2章 1

完結まで書き上がりましたので、タグを追加しておきます

 大地さん達と出会って一年もすると、俺の学力も大分上昇したし、俺も二人の訓練を手伝い、大地さん達の戦闘能力もかなり上がった。


 大地さんも「教科書もないから確かなことは言えないけど」と、前置きをしながらも中学二年生レベルの勉強はクリアした、と言ってくれた。


 大地さん達もそんじょそこらの兵士達にはまず負けなくなった。もちろん軍団長レベルが相手だとまだ相手にならないけれど。


 また、大地さん達はロクタンズの家を出て兄弟で二人暮らしを始めたので、俺も気軽に会いに行けるようになった。


 ただ、基本的に俺はマケン所属で大地さん達は近衛軍なので、仕事で一緒になることはない。それが少し残念だった。




 ある日の夕方。いつも通り訓練を終えたら大地さん達に二時間程勉強を見てもらい、そろそろ晩御飯を食べようと近所の食堂に入り、席についたところで大地さんがふと俺に言う。


「あ、そうだ。シローに伝えておこうと思ってたことがあったんだ」

「どしたの?」


 大地さんはメニューを見ながら俺に告げる。


「俺達しばらく王都を離れることになるから、シローの勉強見れなくなっちゃうんだ」

「あ、そうなんだ」


 まあこういうことは偶にある。大地さん達が所属する近衛軍は国王を守ることが仕事なので、国王が仕事で地方に行くときなどは必ずついていくことになる。


 一応聞いておこう。


「どのくらい掛かりそう?」

「どのくらいか……あぁ、んー」

 

 なぜか大地さんが言い淀むと、僕の正面に座る渚さんが代わりに小声で言う。


「どうせすぐバレるんだから、言っても大丈夫だよ。私達ね、戦争に行くことになるの」

「へ? 戦争?」


 俺は驚いて鸚鵡返ししてしまった。が、大地さん達は落ち着いていた。


「ああ、マルテーって街わかる?」

「うん。国境近くの街だよね」


 より詳しく言えば、ランドレス王国の西方に位置するサリアマーレ帝国の街で、帝国内でランドレス王国との国境に最も近くに位置する街だ。


「ロットバインさん曰く、マルテーは武器や兵糧を買い集めていて、我が国に攻め込む気配を見せている。攻め込まれる前にこちらから攻め込もう。今なら不意を打てる、だそうだ」

「……」


 俺は呆れてものも言えなかった。俺の様子を見て、渚さんもうんうんと頷く。


「うん、わかるよー」


 今、この世界では五百年以上の長きに渡って封印されていた邪神が復活し、人同士が争うのは不毛なことだ。進んで邪神の手伝いをするようなものだ。今こそ手を取り合って邪神を退けよう、と世界各国で協力し合うのが当たり前となっている。


「これは結構やばいんじゃない?」


 当然サリアマーレ帝国もランドレス王国から攻め込まれるなんて想像もしていなく、多分マルテーもほぼ無抵抗で奪うことができるだろう。だが問題はその後だ。


「そうだね。下手したら世界中の国が敵に回るよ」

「ほんと、ちょっと前まで高校生だった私でもこんなの駄目だってわかるのに。なんで大人がわからないんだろ」


 大地さんも渚さんも当然戦争には否定的だ。


 俺は納得がいかない気持ちで聞く。


「ロットバインが言い出したんだよね? それをクリスやウチの所長も賛成したの?」


 大地さんは首を横に振って答える。


「いや、今日クリスさんと訓練した時に聞いたんだけど、ほとんどの人は反対したらしい。でもロクタンズさんが賛成の意見を出した途端国王が出てきて鶴の一声で決まったらしい」

「三人の間で話が決まってて、出来レースだったんじゃないかって」


 はあ、とため息をついてしまう。


「なんであんな馬鹿が宰相やってるんだろ」

 

 とボヤくと大地さん達も苦笑する。


「実はさ、前にロットバインから馬鹿丸出しの指名依頼があってさ……」


 と、以前マケンに届いた宰相からの、賢さの欠片もない指名依頼の内容を二人に教えると、二人とも心底呆れていた。




 その後、ご飯が不味くなるから、と戦争の話は忘れて食事を楽しむが、その中で渚さんからこれまであまり考えてこなかったことを指摘された。


「聖ドーズってさ、堕落してマイヤーズに助けられた後、マイヤーズの影に潜んでマイヤーズを助けたんだよね? だったらさ、聖ドーズの加護を持つシローも闇属性の魔法とかスキルとか使えるんじゃない?」

「……闇属性か」


 実は、その可能性については過去、聖ドーズについて学んだ直後に気付いていたが、当時の俺はまだヒヨッコで、適性のない闇属性の魔法は魔力制御ができず発動しなかった。


 それについて簡単に説明する。


「こっちに来たばっかの頃に試してみたんだけど、魔力制御が上手くできなくて諦めたんだよね」

 

 すると大地さんが興味深そうに言う。


「へえ、来たばっかの頃か。じゃあ成長した今なら使えるかも知れないね」

「うん、もし使えるなら闇属性はシローの戦闘スタイルにも合うんじゃない?」


 渚さんも笑顔で続く。


 ふぅむ……影に潜むか。確かに使いこなせたら強そうだ。


「闇属性かぁ。資料室に教本もあるだろうし、勉強して練習してみようかな」

「良いじゃん! 私達が帰ってくるまでに使えるようになっててよ」

「うん、頑張るよ」


 今日の夕食は出だしは不穏だったけれど、結局最後は穏やかに終えることができた。




 夕食後、資料室で闇属性に関する本を借りて読みながら寝たけれど、以前にも目は通してるんだよね。


 新しい発見はなかったけれど、色々と再確認はできたので適当な依頼を受け、ダンジョンで格下のモンスター相手に実践がてら練習する。


 すると、意外な程にあっさりと闇属性の初歩的な魔法、『ダークボール』の発動に成功する。やはり地力がついたことで魔力の制御も上手くなったのかも知れない。


 ただ、俺は元々魔法攻撃力に関わる知力が低い上、闇属性の適性もないので威力は明らかに低そうだ。格下のモンスターでも一撃では仕留めきれなかった。瀕死にはなっているけれど。


 それでも、闇属性魔法は本来妨害魔法や状態異常を付与する魔法が多いので、知力の多寡は気にする必要はなさそうだ。ダメージは物理攻撃で与えれば良いし。


 うんうん、これは練習する価値がありそうだ。俺は依頼をこなしながら、熱心に闇属性魔法の練習に打ち込んだ。




 魔法に本来ランク付けのようなものはないが、先達がMP消費量や魔力制御の難易度などで初級、中級、上級とランク付けしている。


 俺はこの二週間程、集中的に闇属性のスキルや魔法の練習に打ち込んだ。聖属性に関しては戦闘中でも安定して上級魔法を発動できるようになったが、闇属性は戦闘中だと中級魔法ですら安定しない。


 初級魔法にランク付けされている目隠しの『ブラインド』や、闇のカーテンで聖属性魔法に対して効果が高い防御魔法、『ダークウォール』は問題なく使える。だが、一度にランダムで複数の状態異常を与える『フィルシースモッグ』や、影を操作して妨害する『操影』などは焦ったり急いでいる時は失敗することもある。

 フィルシースモッグと操影は使いこなせれば強力な武器となりそうなので、早く自分のものにしたいところだ。


 闇属性魔法の腕はまだまだ未熟だが、これで戦闘の幅も広がった。いずれは闇魔法を利用してユルマズを驚かせてやるつもりだ。


 そして、そこから更に一週間程闇属性の修練に励んでいると、大地さん達が戦争から帰って来る。思っていたより早い帰りだが、大地くんの顔には疲れと苛立ちが滲んでいた。


 


 

読んでいただきありがとうございます

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