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4章 2

 国民からの依頼に同じものは一つとしてなく、一つ一つ懸命にこなしていると、時はあっという間に流れていく。


 一年も経てばカキンとキュージャンにいた第二、第三軍の兵士も皆戻り、第四軍も本来の仕事に戻ることができたようだ。


 俺は真面目に依頼をこなしながら大地さんや渚さんと遊び、行きつけのカフェに行ったり、こうやって時折ユルマズとのんびり過ごしている。


「こんばんわー」

「ああ、良く来たな。まあゆっくりしていってくれ」




 今夜はお土産にお酒を一本用意してきた。俺はお酒に詳しくないので、行きつけのカフェのマスターにユルマズが好きなお酒を教え、ユルマズが好みそうなお酒を教えてもらい買ってきた。


 お土産のお酒は白ワインで、甘みの中に酸味があるフルーティなワインだった。甘ったるくはなくて飲みやすく、


「このくらいの甘さだと飲みやすいな」


 とユルマズも気に入ったようで、お手伝いさんに果物をいくつかカットして持ってきてもらい、果物をアテにフルーティなワインを楽しんだ。


 ただし、飲みやすいお酒というのは自然に酒が進んでしまうもので、お酒に弱い俺はユルマズの許可を取らずに、ユルマズの家のリビングで寝入ってしまっていたようだ。




「シロー、そろそろ起きろ」

「……んむぅ」


 肩を優しく揺さぶられて目を覚ますと、俺は優しい香りがする、温かい布団に包まれていた。


「おはよう。確か今日も依頼を受けていただろう。そろそろ準備をした方が良い」

「はーい」


 俺はとりあえず返事をして、寝起きで動きの悪い頭を目一杯働かせ、現在の状況を理解しようと試みる。


「えっと……俺、昨日寝ちゃった?」

「ああ、少し飲ませ過ぎてしまったようだ。済まなかったな」


 ユルマズは謝るが、優しい表情をしている。俺は布団から出てユルマズは悪くないと言う。


「ううん、俺が酒弱いから」


 するとユルマズはふっと笑みを浮かべて言う。


「洗面所に新しい歯ブラシを用意してある。朝の準備を済ませたらリビングに来なさい。軽い朝食を用意しておく」

「うん。ありがと」


 軽く礼を言って洗面所に向かう際、ちらりとユルマズの顔を窺うと、ユルマズはとても優しい笑顔だった。




 顔を洗い歯を磨き、ついでにお手伝いさんに手伝ってもらって寝癖を直してリビングに入ると、ユルマズは昨日一緒にお酒を飲んだ席で、のんびりとお手伝いさんとおしゃべりしていた。が、俺がリビングに来たことに気付くとすぐにおしゃべりを辞める。


「来たか、さあ食べよう。遠慮するなよ」


 リビングの席についたユルマズからは先程の優しい表情は消え失せ、普段の冷静沈着なユルマズに戻っていた。そのおかげで俺も普段の調子に戻れた。


「ありがと。いただきまーす」


 なんだかあの優しい表情のユルマズは普段と違い過ぎて気まずい、というかなんというか、なんだかどう対応すれば良いのか迷ってしまった。でも今のユルマズなら大丈夫だ。


 ユルマズかお手伝いさんが用意してくれた、サラダとシリアルとヨーグルト、更にフルーツジュースを頂き、少しおしゃべりをしてからユルマズの屋敷を出る。


 その際もわざわざユルマズがお見送りしてくれる。


「また使いを出す。のんびり楽しもう」

「うん、朝ごはんまでありがと。またね」

「ああ、またな」


 お屋敷を出て貴族街に出ると、きれいに晴れ上がりとても良い天気だった。空には小さな二つ三つプカリと浮かび、穏やかだ。


 貴族街は元々あまり人通りは多くないが、道を歩いている人は……遠くに一人二人いるぐらい。まだ結構早い時間みたい。通信モニターを見れば時間はすぐわかるけれど、なんとなく調べなくても良いかなって気分。


 さて、お仕事頑張りますか!




「あー、しんど」


 今日の依頼では思いがけず強敵と戦うことになり、中々に疲れた。


 ターゲットのモンスターはこれまでにも何度か討伐しているのだが、何やら自然に進化したのか、これまで使っているところを見たことがない石化の状態異常を駆使するようになっていた。


 石化に対する耐性装備は準備していなかったので、一度は石化し始めた左足を斬り落とす羽目になった。高価な回復薬を使ってすぐに回復はしたが、とても痛かったし、左足の防具は石化が解けず駄目になってしまった。


 また石化を受けたらマズイので、魔法も全力で使って速攻で討伐したが、魔力を使い過ぎたか頭痛が治まらない。今日は大人しく寝ることにした。


 翌日目を覚ますと、疲労は少し残っているが頭痛は治まっていたので、普段通り依頼を受けに行く。


 そして仕事の合間を縫って、本格的に状態異常装備を揃えることに決めた。


 まずは身動きが取れなくなり、命の危険に繋がる麻痺と石化に混乱だろうか。魅了の耐性装備は以前借りたものを正式に買い取ったので問題無い。


 俺は幸いにも全状態異常耐性五十%カットの、『清浄の腕輪』を持っている。まあ「幸いにも」というか、厄介なボス相手に何度か死にそうになりながら倒して手に入れたものだけど。


 各種状態異常耐性百%の装備は非常に希少で、手に入れるのは難しいが、五十%の装備なら頑張ればどうにかなる。


 また、足の装備も石化して駄目になった。今は予備の装備を使っているが、ついでに良いものを探すとしよう。




 俺は状態異常の危険度から考えて、麻痺や石化の耐性装備を手に入れるのは難しいのではないかと考えていたが、危険度故に必要とする人も多く、普通に店で買うことができた。


 あと混乱の耐性装備も買えたが、毒や盲目など、命の危険に直結しない耐性装備は買えなかったので、地道に集める必要があった。


 足の装備に関しては、上位互換になるような防具は売っていなかったので、とりあえず予備の防具を使いながら、探索中に良いものが見つかることを願うことにした。


 


 二ヶ月もすると各種耐性装備は粗方揃えることができた。ただ足の防具はまだこれといったものが見つからないので更に探し求めた結果、半年後、ようやく良いものに出会えた。


 それは足の防具だけではなく全身セットで見つかり、思いがけなく全身の防具の更新ができた。


 そうなると今度は武器も手に入れたくなるのが人の(サガ)というもので、一月程で悪魔系の強敵から闇属性の強力な短剣を手に入れることができた。


 この短剣は『デビルズタン』という名で、純粋に攻撃力も高いので、闇属性に耐性がある相手にも使っていける。しばらくはデビルズタンが俺のメイン武器になるだろう。


 耐性装備、防具、武器と納得のいくものを探していたら瞬く間に時は流れ、気が付くと俺は来月で二十一歳になるようだ。


 早いもんだなぁ。俺は十三歳でこっちに来たから、もう八年か。


 そう言えば、俺って邪神討伐のために召喚されたんだよな。ちょっと真剣に邪神討伐も考えた方が良いのかな?


 この辺りは邪神がいるっていうダンジョンから遠く離れてるから、邪神による被害は特にないみたいだけど、邪神がいるダンジョン近辺の国は被害にあってるだろうし、放って置くわけにもいかないよなぁ。


 ちょっと……ユルマズに相談してみるか。




読んでいただきありがとうございます

よろしかったらブクマ、評価のほどよろしくお願いします

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