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1章 2

 さて、遠目にエルダーリッチを観察してみるが、彷徨きながらアンデッドを召喚するだけで、特別何かをしているようには見えない。


 聖属性が得意で闇属性に耐性がある俺にとって、エルダーリッチは相性の良い相手だ。とりあえず倒してみよう。


 まずはアサシネイトモーションで背後を取って奇襲攻撃。奇襲攻撃にクリティカルが乗ると、完全魔法特化で物理防御力が低いエルダーリッチは一撃でダウンしてしまう。


 ガンガン斬り刻むが、高レベル帯のダンジョンでボスを務めることもあるエルダーリッチはまだまだ倒れない。


 一旦下がると、エルダーリッチは手に持った仰々しい杖に魔力を込め、アンデッドの一斉召喚を始める。エルダーリッチの武器は高火力の魔法と大量のアンデッドでの物量作戦だ。


 俺の戦闘スタイルであるアサシンスタイルは、基本的に一体のモンスターに大ダメージを与える武技が多い。そのため、俺も対多数との戦闘はあまり得意としていなかった。だが、先月ユルマズとの模擬戦中にようやく範囲攻撃を使いこなせるようになった。しかも聖属性での広範囲攻撃だ。今の状況に持って来いだ。


 ただ、これまで軍人にスパルタで鍛えられてきた俺がようやく使えるようになったということは、かなりの高威力、かつ高難度の技で、当然のように溜め時間が必要になる。


 短剣を右手に構えて魔力を込める。が、魔力を込め終わる前にエルダーリッチの召喚魔法が完成し、大量のアンデッドが召喚される。


 アンデッド達は召喚されると、すぐに俺をロックオンして迫ってくる。中々の迫力ではあるが想定通り、アンデッド達が俺のもとに辿り着く前に短剣に聖属性の魔力が込め終わる。


 短剣を下から上に振り抜くと、凝縮された聖属性の衝撃波が”ズオン”と音を立てて拡散し、衝撃波に触れたアンデッドは粗方蒸発するように消し飛び、生き残ったものもほとんど動けない有り様だ。


 エルダーリッチも衝撃波を受けてダウンしているので、更に魔力を溜めてディバインピアースを突き刺すと、エルダーリッチもポリゴンと化した。


 生き残ったアンデッドも順番にとどめを刺していく。目に付くアンデッドを葬れば、無事ノーダメージクリアだ。


 先程の武技は、凝縮した聖属性の魔力で広範囲を攻撃する『曙光』という技だ。ちなみに、武技の名は気が付いたら曙光と決まっていた。システムが名付け親だ。多分、夜明けの太陽の光がパーッと広がるさまをイメージしたのだろう。


 この曙光を覚えたことで戦闘の幅が大分広がった。実際、曙光がなければエルダーリッチ戦はかなり面倒だったはずだ。


 モンスターを討伐すると、モンスターはポリゴンとなって討伐者に吸収される。すると、討伐者は経験値やドロップアイテムをいつの間にやら手に入れているわけだ。わざわざドロップアイテムを探す手間が省けるのはありがたい。


 アイテムボックスは多少カスタムすることができ、俺は新規に入手したものを一番上に来るようにしている。

 

 エルダーリッチと大量のアンデッドを倒したので、ドロップアイテムを調べてみるが……特に変わったものはないようだ。特別な個体などではないのだろう。




 エルダーリッチ討伐後、俺はダンジョン深層に向かっていく。他にも呪物があるかもしれないからだ。


 実際、深層のポータルまでに二つの呪物が見つかり、浄化するとダンジョン内のマナはほぼ元通りになったのではないかと思う。測定する魔道具などを持っていないので厳密な数値などは出せないが。


 マケンから借りている魔道具の『通信モニター』をアイテムボックスから取り出す。これは、スマホとタブレットの丁度中間ぐらいの大きさで、用途としては電話機能と写真機能がないタブレットのような感じだ。


 実際この世界は一見中世ヨーロッパ風だが、魔法のおかげか結構文化は進んでいる。電気的なものは魔法で賄えるからね。野菜や果物や家畜などの品種改良もそれなりに進んでいるそうで、食事も俺としては問題ない。グルメな人だったらどうかわかんないけど。


 この通信モニターはマケンのデータバンクと繋がっているので、魔力を利用して様々な情報を呼び出せるし、逆に俺の方からマケンに新しい情報を流すこともできる。

 ただ、今は単純に時刻を調べた。魔力を流すことで正確な時間を知ることができる。


 時間は夜の八時を過ぎたところだ。一階ずつ徒歩で進んでいるので、何気に時間がかかっている。一度ダンジョンの外に出て野営することも考えたが、ここまで来たら最後まできちんと調べた方が良さそうだ。俺は先に進むことにした。


 


 このダンジョンはそこそこのレベルの敵しか出ない小規模ダンジョンなので、日が変わる前に最深部に辿り着いた。


 結局あの後は怪しげなものは一つも見つからなかったが、まあとりあえずこのダンジョンにはこれ以上怪しいものはなさそうだ、ということはわかったので、この調査は無駄ではなかったはずだ。


 ダンジョンを出て、仮の柵で門番をしている兵士に、このそばで野営をしても良いか、と聞くと、問題ないと許可が出たので遠慮なく一休みさせて頂いた。


 娯楽も何もない、こんなところで一日中立ち続けなければならない門番の兵達が気の毒なので、エルダーリッチを討伐したこと、怪しげな呪物を回収して浄化しておいたことなどを告げる。これから王都に戻って報告するのでまだ数日掛かるが、これ以上この仕事を長々と続けることはないんじゃないか、と告げると、


「ご苦労さまでした!」


 笑顔で労ってくれた。




「そんな感じで目的は良くわからないけど、とりあえず原因はなんとかできたと思う」


 マケンに戻りユルマズに報告すると、ユルマズは少し考えてから口を開く。


「ご苦労だった。念の為調査に数人出しておこう」

「そーっすね」


 俺もダンジョンがあれで完全に綺麗になったって確信はないしね、良いんじゃないでしょうか。俺が同意すると、ユルマズは頷いて言う。


「回収した呪物を『聖・闇部署』に預けたらゆっくり休んでくれ」

「ういっす」


 俺は適当に頭を下げたら立ち上がり部屋を出た。


 ちなみに、マケンは属性ごとに部署を作っているが、聖属性や闇属性は特殊属性になり、適性者が少ないので合同で一つの部署になっている。


 ユルマズの命令通りに呪物を預けたら、一旦資料室に寄って数冊本を借りてから自室がある寮に戻る。


 


 依頼を受けていない時の俺の一日は、訓練と食事と読書だ。もちろんトイレや風呂もあるけれど。


 俺はマケンの職員が敬愛するユルマズや所長に反抗的なため、残念ながらマケン職員に友達はいないし、時々訓練を付けてもらう王国軍の兵士にも友達はいない。


 まあボッチってやつだ。でも構わない。人さらいを良しとするようなお偉いさんを尊敬してる奴らと仲良くしようとは思わない。


 俺はこの世界に召喚されて三年程で今年で十六歳になるが、訓練は真面目に受けているので、ユルマズのような数人のバケモン以外には勝てるようにはなった。


 そのため俺が受ける依頼は、そこらの兵士やマケンの職員では倒せないようなモンスターの討伐依頼がメインだ。または、あの異常個体の悪魔の時のように緊急性の高い依頼だ。


 ただ、そんな高レベルのモンスターの討伐依頼はそんなにないし、緊急事態だって滅多にないから緊急事態なので、俺は案外のんびり読書を楽しみながら暮らしていた。


 だが、王宮ではそんな俺の生活を一変させる事態が起きていた。


 


読んでいただきありがとうございます

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