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1章 1

 日々依頼を受けて強敵と戦い、王国軍と鍛錬を続け、俺も大分鍛えられたな、と思う。


 一対一なら王国軍の奴らになら大抵勝てるようになったし、今ならあの異常個体の悪魔だって完封できそうだ。だが、それでも叶わない相手がいることは理解している。


 俺は召喚された剣士だ。異世界から召喚されると、幾つかのギフト――俗に言うチート――を付与される。言語共通化とアイテムボックスは召喚された人全員に付与され、その他に召喚されたものの個性や特性に合わせ、幾つかのギフトがもらえる。俺の場合は成長倍化と、聖ドーズの加護だ。


 成長倍化の効果はそのままだ。ただ、ユルマズさんは俺の成長率は二倍ではきかないと言ってはいた。聖ドーズの加護についてはちょっと説明が必要か。


 俺のいる国、ランドレス王国では誠心教という宗教が主流で、誠心教では主神マイヤーズを信仰している。マイヤーズは世界のために邪神と戦い、邪神に傷付けられた人々を広く救済したことで神に至ったそうだ。

 この話は神話ではなく、実際にあった話だという。そして極稀にではあるが、主神マイヤーズは現世に降臨されることもあり、神様は実在すると広く信じられている。


 そして聖ドーズだが、ドーズはマイヤーズの教え子とか弟子に当たる人で、マイヤーズのために暗殺や破壊工作、隠蔽工作などの汚れ仕事を専門にしていた人だそうだ。ただ、闇の仕事をこなしていくうちに堕落し邪神の手先に成り果てるが、マイヤーズ自ら救出し、それ以降はマイヤーズの影に潜み、マイヤーズの命を幾度も救い聖人と認定されることになる。


 ギフトの効果としては聖人だからだろうか、聖属性の適性が付与される。また、一度堕落したからだろう、闇属性の耐性を付与。更に敏捷のステータスと会心率が上昇する。


 一般的に適性値が高い属性があると、対する弱点属性の耐性値は低くなってしまうものだが、俺の場合はチートの効果で弱点属性がなくなっている。その上敏捷と会心率が上昇するので、聖ドーズの加護は非常に優秀な加護だと言える。


 実際俺は召喚されるとすぐにステータスを鑑定されたが、聖ドーズの加護を鑑定士が読み上げると周囲にいる軍人や政治家みたいな人達は大いに喜んでいた。


 まあこのように、俺は召喚された剣士として少々特殊な能力を持っている。俺はこの国の偉い人たちのことは嫌いで、正直国を出ようと考えたこともある。だが俺のような特殊な能力を持った戦力を、国が易々と見逃すとは思えない。特に上司のユルマズは。


 俺は現在王立魔導研究所に所属しているのだが、ローテム・ユルマズは王立魔導研究所、略してマケンの副所長だ。


 軍人にボコられながら鍛えられ、それなりに強くなった俺をユルマズは上手く利用している。そう簡単に手放すつもりはないだろうし、もしも本当に逃げたとしてもユルマズに追われたらお手上げだ。ユルマズはこれまで俺が戦った相手の中では最強だった。


 ユルマズはマケンに所属している通り魔法使いで、得意な属性は土だが全属性使いこなすことができる。その上近接戦闘もでき、攻撃魔法、回復魔法、強化弱体魔法、防御魔法、拘束魔法、状態異常、とどんな魔法も判断良く使いこなす高いセンスを持つ。端的に言ってバケモンだ。


 逃げるにしてもナンにしても、とにかく力をつけねば。




 今日も俺はマケンから……というかユルマズから依頼を受けて洞窟タイプのダンジョンに潜っている。


 王都から馬車で二日程の位置にあるダンジョンだが、これまでいなかったはずのエルダーリッチが棲み着いたので、討伐して、できればなぜ突然棲み着いたのかも調べてこい、とのことだ。


 このダンジョンは普段は出現するモンスターは程々の強さで、その割に質の良い鉱石が取れることで需要の高いダンジョンだそうだ。


 しかし、エルダーリッチはかなりの高レベル帯のモンスターで、普段の感覚で鉱石を掘りに来た採掘士が複数犠牲になってしまい、俺に依頼が来た。


 ダンジョンの入口付近には柵が設けられ、門番の兵が立っている。エルダーリッチが出現したことで急遽作られたのだろう。


「こんちわー」


 挨拶をして依頼書と王立魔導研究所職員の身分証を見せると、あっさりと通してくれた。


 ダンジョン入口は一見すると普通の洞窟に見えるが、普通に通ろうとすると、バリアのような何かに阻まれる。このバリアは魔力を通せば問題なく通れるので、俺も魔力を通してダンジョンに入る。


「ふうん」


 このダンジョンには俺も以前入ったことがあるが、普段は土属性と水属性のマナが多く感じられるダンジョンだった。だが、今は闇属性のマナに塗り潰されているようだ。


 どういうわけか、ダンジョン入口にはモンスターは自分から近寄ってこないようになっているようだが、少し離れた場所ではゾンビやゴーストが彷徨いている。


 これまで入ったことのあるダンジョンでは全て共通して、ダンジョン入口には腰程の高さの石造りの台座があり、台座には水晶のような石が置かれている。


 この台座は、ダンジョンの規模によって変わるが、この洞窟タイプならダンジョン入口、ダンジョン中層、ダンジョン深層、と三箇所置かれていて、一度でも到達して水晶に魔力を流して登録しておけば、この水晶を介して瞬間移動できるようになる。そのため、この水晶はポータルとも呼ばれる。


 エルダーリッチは中層ポータルへ移動して二階下の階にいると依頼書に書いてあるが、なぜエルダーリッチがこのダンジョンに棲み着いたのか調べて欲しい、とも言われているので、調査がてら徒歩で進む。




 ダンジョン上層に出現するアンデッドはレベルも低く、襲いかかりもしない。雑魚め。


 スキルを使って索敵しながら進む。俺の索敵スキルは魔力の動きもある程度感知してくれるのだが、中々索敵に引っかかるものはなかった。


 まあまあ、すぐには見つかんないよね、とてくてくと進んでいくと、四階でようやく何か怪しげな魔力を感知した。


 モンスターは基本的にダンジョン内を動き回っているものだが、その怪しげな魔力はじっと動かず、それなのにジュクジュクと蠢いていた。


 慎重に近付いて行くが、そこにはモンスターの姿はない。その代わりに、通路の壁に何やら黒ずんだものが塗りたくられていた。


 こりゃなんだ、と手に付かないように気を付けて採取すると、アイテムボックスには『苦悶の灰』とある。サンプル用にある程度採取したら、呪われたアイテムっぽいので聖属性魔法で浄化しておいた。 


 更に進むと、六階でも見つける。今度は黒ずんだ布切れで、『惨劇の布』。短剣で切り分け、半分はそのままアイテムボックスに保管し、半分は浄化しておいた。


 また、惨劇の布を浄化したら、ダンジョン内のマナの雰囲気が変わった。なるほどねぇ。多分、誰かが呪われたアイテムをばら撒いてダンジョンの環境を変えたんだろうな。ただ、目的がわからない。まあ、なぜエルダーリッチが棲み着いたのか調べてこい、とは言われたが、目的を調べろ、とは言われていない。だから、まあそこまでは無理して調べなくても良いかな。


 七階に到達すると、ダンジョン中層のポータルがある。依頼書によると、エルダーリッチはここから二階下にいるという。とりあえず索敵スキルを掛けながらエルダーリッチを目指すことにした。


 道中特に変わったものは見つからず、雑魚アンデッドを斬り捨てながら進むと、あっさりとエルダーリッチのもとに辿り着く。


 ふむ、とりあえず倒しとくか。




読んでいただきありがとうございます

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