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魔導学生ミアの受難恋愛~ネコミミ生真面目生徒と冷徹教師~  作者: 村城 良夢
第1章:魔導学生ミアの研究レポート~終わりなき恋人たち~
1/3

一話 どうしてこうなった / 二話 少女、奮闘する

 一、どうしてこうなった


「俺のこの手はッ……悪に染まってしまったんだァッッ!」

「はぁ……」


 私と先生は、うんざりした様子で、先程から叫んでる男性に目線を向ける。

 ――何故こんなことになってしまったのか。


 ことの発端は数日前に遡る――

『お願いです!恋人を探してください!』

 ルナリス学園に舞い降りた一通の伝書鳩。

 依頼者は、学園に多額の出資をしているチェンバース家のご令嬢。エレナ=ヴィクトリア=チェンバース。

 内容は、『親の反対で、離れ離れになってしまった恋人を探し出して欲しい』

 シンプルながらにややこしそうな依頼だった。

 人探しなど、警察や探偵にでも頼むべきものだが、学園としては、スポンサーの娘の依頼は無下にできない。

 そこで白羽の矢が立ったのが、その場に居合わせた学園一番の実威力者であるロウェン=マクロード先生。

 人手要因として、先生の研究室所属で探知が得意な私、ミア=パーカーが駆り出された。


「……面倒だ、攻撃魔法一つで済ますか」

「気持ちはわかりますが、お願いですからやめてください」

 というわけで、忙しい中駆り出されて、マクロード先生はまったくやる気がない。

「先生の匙加減一つで、この町がクレーターと化します」

「無論、冗談だとも」

 目が笑ってないんですけどぉ。


 ――ロウェン=マクロード先生。

 ルナリス魔導学園の教授にして、名のある魔道士……どころか、王国でも五本の指に入る大魔道士。

 年は、二十代後半だろうか。やたらと整った顔立ちをした長身で銀髪の男性。

 まさに魔法がかかったルックスだが、モノクルの奥に光る鋭い眼差は、冷然な雰囲気をまとっている。

 見た目通り神経質で気が短いのに、依頼を受けてからずっとごきげん斜めだ。

 無関係な恋人同士の茶番に付き合わされて、たまったものではないのだろう。

 ――私としては願ってもないことだが。


「俺がこの手で伝説を成し遂げるまではッ!帰るわけにはいかないんだ!」

 今回の目的、チェンバース嬢の警備員兼、恋人のカール=ハインツ。

 依頼文章の通り、浅黒い肌で黒髪を後ろに結んだ二十代前半の青年。

 どこにでもいそうな若者だが……剣を携えながら、おどおどした様子はなんなのだ。

「いや、そのわりには町中でぐだぐだしていたようでしたが……」

 獣人である私が探知能力を使うまでもなく、ちょっと聞き込みをしただけで居場所が分かった。

 というか、学園を出てすぐの雑貨屋でのんきに買い物していたのを発見した。

 ここ、ルナリス学園都市は、人口も人種は多いから、長丁場を想定したんだけどなぁ。


挿絵(By みてみん)


「ふむ、敵意は無いが、こちらを警戒しているようだな。

 ――さて、ミア=パーカー。

 ここで問題だ、話の通じない相手に対し、可及的速やかに無効化する戦法とは何か?」

 私の名を呼ぶマクロード先生は、どこまでも先生だった。

 いつだって、試されているのはこちらだ。

 堅苦しい教師の風格を嫌う生徒もいるが……私は受けて立ちたい。

「えーと、こちらの被害を最小限に抑えるためには、催眠術や幻術が望ましいです」

「だが、ミア=パーカー。君はどちらも使えないだろう。

 それに、相手が興奮している場合、効果が薄い可能性を考慮しなくてはならない」

 言ってる間にジリジリと距離をとるカール。

 青ざめながらロウェン先生をチラチラ見ているが、先生が誰だか知っている様子だ。そりゃ恐い。

「……私が捕縛術で確保するので、市内での魔法の使用を許可してください」

「よかろう。君がやれるところまでやってみなさい」

 よし!頑張るぞ!

 私は、並木の幹に手を置き、大地干渉の呪文を唱える。

地精触腕(アース・テンタル) 」

 ザァッ、と木々がざわめく。

 枝木の触手が無数に伸び、カールに襲いかかる!

「うあぁぁぁ!」

 恐がってうろちょろ逃げる。む、意外とすばしっこい。

 だが、無軌道な人ならざるものに対し、どうすること出来ず、枝木に足を絡め取られる。

氷結烈光(アイス・ブレイザー)

 私は、追い打ちをかけるように、冷凍魔法を解き放つ。

 かなり威力は落としたが、直撃したら死なないまでも、氷漬け必須である。

 こうなったら、逃げないように氷漬けにして、依頼人に送り返そう。

 まぁ、後のいざこざは、当人同士で解決してもらうということで!


 と、そこに――

「おい、お前たち!俺らの連れになんか用か!」

 カキンッ!コキンッ!

 いきなりしゃしゃり出て来た柄の悪い男たちに直撃する。

「あぁ!柄の悪い通行人さん!」


「――ふむ、困ったことになったな」

 マクロード先生は、慌てる様子もなく、淡々とつぶやく。

 いきなり出て来た連中は、よその町からやって来たならず者達らしい。

 何度か問題を起こしているようで、私の魔法で氷漬けにしたまま町の兵士に引き渡した。

 問題は、私と先生がゴロツキに気を取られた一瞬。

 ――その一瞬で、捕縛の魔法が緩み、カールを見失ってしまった。

 おのれ~。


 ◆


 二、少女、奮闘する


 ミア=パーカー ――十九歳、女子。

 ルナリス魔導学園2階生。超自然魔道学専攻。

 五分の一ほどケモノが混じってる獣人。タイプは猫。

 攻撃魔法は苦手だが、自然干渉系の魔法は得意。

 尊敬してる人は、マクロード先生。

 苦手な食べ物は、熱い食べ物。

 背は低め。常に眼鏡をかけている。

 授業は欠かさず出席している。いわゆる優等生。

 その甲斐あってか、100人余り在籍しているロウェン=マクロード研究ラボの期待のエースである。


 それが今、少々凹んでいる。


 カールを見失った後、一旦仕切り直しということで、また明日探索を進める方針となった。

 先生は、一旦学園へ戻られた。

 ターゲットの発見報告と、チェンバース家の関係について詳細の確認をしに行ったのだろう。

 今回の依頼人はエレナ令嬢。だが、学園に出資しているのは、その父親のチェンバース伯爵である。

 チェンバース伯爵は、二人の恋愛に反対している。

 エレナ嬢が言うには、説得するつもりらしいが、失敗した場合、学園が勝手なことをしたと判断されかねない。

 そこら辺の関係性の調整も兼ねての確認だろう。

 その他にも、先生が外に出ている間、会議や実験、授業を他の教授や担当主任に任せているため、色々連絡ごとが絶えない。

「それでも、いつも滞りなく遂行してしまうんだから、敵わないんですよねぇ」

 尊敬。そして、想うほど遠くに感じる。

 私はというと――カールを発見した場所に戻り、一人反省会をする。


「もっと距離を詰めるべきでしたか……いや、大地の魔法をコントロールしながら、別の魔法を使うには、まだ無謀でしたか」

 対人の実践は初めてだった。やはり動く獲物は上手くいかない。

 力技で追い詰めようとして失敗し、結果、先生の手を煩わせてしまった。

 先生とともに行動できるのは嬉しいが、迷惑をかけるのは望むところではない。

「う~ん、まだそこまで遠くへ行ってないはず。足取りだけでも掴めないでしょうか……」


 黄昏時。太陽が沈みかける時刻。

 町から外れた郊外の獣道。

「ニャッにゃぁおにゃぁにゃぁ」

 私は暗闇に向かって、人ならざる鳴き声を発する。

『みゃー』『に”ぁー』『うなぁにゃぁ』

 鳴きながら、数匹の野良猫が草むらから現れる。

「ありがとうございます。助かりました」

 懐から煮干しを取り出し、答えてくれたこの町の野良猫たちに与える。

 獣人というのは便利だ。草や木の気配、同族たちから人では知り得ない情報が得られる。

 私の場合、そこまで獣人の血は濃くないが、それでも猫や犬、ギリギリ鳥までは言葉が理解できる。

 そして――ふむ、どうやら目星をつけた通り、このあたりの洞窟が奴らのたまり場となってるようだった。



 夕暮れ時、森の中をひらりと駆け抜ける。

 獣人にとって、日の落ちる頃からが活動時刻だ。

 眼鏡が落ちないように、かけ直す。

 眼鏡には特殊な魔力がかけられており、体温などで他者の気配を察知できた。

 見つけたのは、大きな洞穴。

 入り口には、人工的な補強がほどこされていた。


 中からガヤガヤと人の声が聞こえる。昼間の連中の残党だろう。

 彼らは、カールのことを『俺らの連れ』と言った。

 ならば、カールもそこにいるのだろうと予想していたが――

「おい新人!パン買ってこい」

「はい!いますぐ!」

 ――ぱ、パシられておる。


「あの、こんなところで何やってるんですか?」

「ひぃぃぃ!」

 カールが洞窟を出たところで、声をかける。

「あ、大丈夫です。今のところ力づくでどうこうしませんから」

 多分。

 なんとなく、危険性はないと思って話しかけてしまった。

 私と同じくらいの年齢のようだが、卑屈に下を向く姿勢といい、醸し出すオーラがいじめられっ子のそれである。

「カール=ハインツさんですよね?

 私、エレナ令嬢からの依頼で、貴方を探していたミア=パーカーと申します。

 それであの……このような場所で何をしていたのか、事情をお聞かせ願えませんか?」

お読みいただきありがとうございました。

この章は3回で完結予定になります(作品自体は続きます)。

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