四.
とある、一室の前に聖女ミラと護衛のシリアはいた。
聖女ミラは扉をノックする。
「どうぞ」一室の中から、声がした。
「失礼します」と聖女ミラ。すると、シリアもそれにならって「失礼致します」と続く。
シリアが扉を開け、聖女ミラから部屋の中に入る。
シリアも部屋の中に入ると扉を閉めた。
部屋の中では、四十代半ばの男性が、羊皮紙の束に目を通しつつ忙しそうにしていた。
ふと、男性が二人を見る。
「おお、これは聖女様! 御足労痛み入ります。どのようなご用件でいらっしゃいますかな?」
「はい、教皇様。とあることを聴きまして。ティルノーク国内で行われていました戦いについてです」
聖女ミラは、問いにそう語りだした。
「ふむ。ヴォントレード帝国から、街を奪還したティルノーク国。その戦いのことですかな?」
「はい、その戦いのことです。不可解な点があったと聴いたのですが……」
「不可解な点……?」教皇は明らかに表情が変わったが、平静を装って話し出す。
「そのようなことは無いと聞いてますが」
「私は確かに聴いたのです。ヴォントレード帝国軍の指揮官が……相手の軍が到着した時には、既に死んでいたという話しを……」
「困りましたな。そのような噂を信じられては……」
「……教皇様、なぜ隠されるのですか? わたくしとしましては、そのような態度でいるのならば、考えがあります」
聖女ミラは無言の圧で、教皇を見だした。
場に、暫し沈黙が流れる。
「……負けです、話しましょう。我が国にそのような情報が、確かに入ってきました。聖女様の耳に入らないよう、気をつけていたのですが……」
教皇は、ため息をつく。
続けて話し出す。
「私の見解としてはですね。帝国軍指揮官は、暗殺された可能性が高いでしょう。しかも、ティルノーク国の手の者に……」
「やはり、そうなのですね。教皇様、折り入ってお願いがあります」
その言葉に、嫌な予感しかない教皇。
「わたくしを、ティルノーク国に連れて行って下さいませんか?」
「「なっ!!」」
予想はしていたが、その言葉に、教皇と護衛のシリアは驚く。