三.
数日後。神聖セレイン国にて──
一人の少女が足早に歩いていた。装いからして只者じゃないことが分かる。
服装は白を基調とした色で清楚を感じるデザイン。
ロングスカート部分は、裾辺りが外に広がった形状だ。
何より目を惹く薄い金色の髪。髪は後ろで一つに編み込んでいる。
「お待ち下さい、聖女様!」
後方から、急ぎ足で付いてくるもう一人の少女。
年は近いように見える。十六、十七くらいだろうか。
「どこに行かれるおつもりですか?」
そう問う後方の少女は、黒い髪に瞳は緑色。
肩当て、胸当て、脚などの部分に鎧を身に着けていた。腰には、鞘に収まった剣を下げている。
問いに対して、前方の聖女なる少女は、立ち止まり振り返る。
「知りたいですか? 知りたいなら、昔のように名前で呼んでください」
すると「なっ!?」と驚く黒い髪の少女。
「だめですか? シリア?」
「駄目と言いますか……私は聖女様の護衛の身分ですので……」
黒い髪の少女・シリアは、しどろもどろになって答えた。
「そうですか……だめですか……」聖女は、寂しいのか落ち込む。
「……」シリアは、その様子を見ると意を決したように口を開く。「分かりました……二人でいる時だけですよ……そ、その、ミラ」
名前を呼んだシリアは、頬を紅潮させる。
「嬉しいです……昔に戻れたみたいで」
聖女ミラは、暖かに微笑む。
「所で、ミラ。何の用なのですか?」
「それは、教皇様に用があるのです。あることを聞きまして……」
「ある事……?」シリアには何のことか予想が付かなかった。