ニ.
エルトは西にある森に向かって走っていた。
遥か後方にある、帝国のテント密集地では混乱した様子を思わせる声が響いていた。指揮官が殺されたのだから、当然だろう。
西の森──
エルトはようやくにして、森に辿り着いていた。ふと二人くらいの女性の話し声が聴こえた。
繁みを掻き分けていき、森の開けた場所に出る。
そこには、十代後半の女性と、エルトと同い年くらいの少女がいた。
「エルト、合流しました……」
エルトを見るやいなや、真っ先に反応したのは少女だった。
「エルト、お疲れさまー。怪我はない?」
そう明るく言う少女は、八重歯が可愛く、ウェーブがかったツインテールのヘアスタイル。
髪色は赤く、瞳は、琥珀色だ。
服装は黒が基調で、下に身に着けている服などは、短パンにニーハイ。足元は動きやすいようショートブーツを履いている。
それに鎖鎌を携帯していた。武器だろうか?
「怪我は無いよ、セナ……」
そう答えるエルトの灰色の瞳は、感情が読み取りにくい。
「良かった。それはそうと、エルト、初任務おめでとー」
少女・セナは、安心した後笑顔で祝う。
その言葉に続いて、十代後半の女性も口を開く。
「本当に良くやったな、エルト。この任務は、姿を消せるお前向きだからな」
そう褒める女性は、栗色の美しい髪に瞳は灰色だった。
服装は、やはり黒が基調で、下半身に着用しているのは、両側にスリットが入ったタイトスカート。あとは、膝丈くらいのブーツ。
武器のたぐいは、身に付けていなかった。
「でも、ワタシも早く実践したいなー。ねえ、シェリス姉、次の任務は?」
そう問うのはセナ。
シェリス姉と呼ばれた女性は、「私達は、次の指令があるまで待機だ……取り敢えず、この場から離れるぞ」と返す。
「「了解!」」エルトとセナは、そう返事をした。