一.
街があった。だが、人気が全く無い。
そこから街外れの近くに陣取る、軍と思われる兵士の群れ・魔法使いの集団があり、後方にテントが幾つも張られていた。
反対側にも、兵士の群れが前線に、魔法使い達が後方に備え、中間には弓矢隊がいる。この軍は、街外れに陣取る軍と相対していた。
今にも、両軍は衝突しそうな雰囲気だった。
すると、街外れに陣取る軍へ向けて、剣を抜き、口を開く者がいた。
「これより、帝国軍から街を奪還する! 進軍開始!」
指揮官らしき男は、帝国軍へ向かって馬を進めていく。
兵士達も続く。
それを見て帝国軍も進軍する。
距離が詰まっていき、程なくして、戦いが始まった。
帝国軍の後方の一つのテント内──
椅子にふんぞり返っている男がいた。
傍らにはもう一人若い男がいる。
「指揮官殿! 失礼致します!」
そう声を上げ、テント内に入ってきたのは兵士だった。
「何だ? 騒々しい……」
椅子に座っていた指揮官は、煩わしく言う。
「報告があります! 我が軍が圧されています!」
傍らに控える若い男が、口を開く。
「どう致しますか?」
指揮官は、イライラを顕わにしつつ。
「決まってるだろう! アレを使え! 何のために持ってきてると思ってる……」
「はっ! 了解であります!」兵士は、テントを出ようとする。
その時、兵士の首から赤い液体が噴き出した。
すると、力無く倒れたのだった。
首には切り傷。それが原因だった。
「そうはさせないよ……」ふと、どこからか、少年らしき声が響く。
指揮官は、「な、何だ!? 何処にいる!」と立ち上がり、テント内を見る。その時、突然、何かを浴びた指揮官。
傍らにいた若い男の首から血が出たのだった。
男の首は下に落ち、僅かに転がって……止まる。
「ひっ!」指揮官は外に逃げようとする。
が、声が響く。「次はお前だ……」同時に、指揮官の首が宙に舞う。首が落ちると共に、身体の方も力無く倒れるのだった。
息をふぅっと吐く音がした。
すると、その場に、何かがうっすらと見えてくる。
徐々に濃くなっていき、はっきりした時、見えたのは少年だった。年は十代半ば、いや、それより下に見えた。
髪は暗い茶色で前髪で片目を隠している。服は黒色を基調としており、下に身に着けている服は、膝丈のゆるめなショートパンツ、それにタイツを着用していた。
手には血にまみれた長剣と短剣の間の長さの剣。
少年は、右手の甲を顔に近付ける。急に右手の甲に、紋様が浮かぶ。
すると、少年は喋りだした。
「こちら、エルト……任務完了」
少年・エルトは、何かを待つように黙った。
……少し間を追いて、エルトはまた口を開く。
「了解……これより、合流します……」