アメの降る
連日の雨は、洗濯物を溜めていく。
湿気を含んだ空気が部屋の中に充満する。
雨の日特有の頭痛が私を襲う。
こんな日は外に出掛けたくないなあ。
しかし、そんな私のこころ持ちなど知らないかのように無情にも、冷蔵庫の中は空っぽだ。
そういえば、昨日も一昨日も買い物に行っていなかった。
今月はもうピンチなのでデリバリーを頼む訳にも行かない。
頭痛薬を口に放り込み、買い物支度をする。
最後に折り畳み傘を手に取り、寮の階段を降りた。
玄関で折り畳み傘をほどく。
ほどかれた傘の生地が喜ぶかのように躍る。
ふと、私は折り畳み傘に対して羨ましいと感じてしまう。全くどうかしている。
雨水の流れるアスファルトに軽く足をつける。
なるべく、地面を踏み締めてしまわないように、「地に足つかない」そんな足どりで、私は、近くのスーパーまで向かう。
ぼたりぼたりと大粒の雨が傘に降ってくる。
少しでも濡らすまいと頑張った甲斐もなく、私の足は靴下まで、もうぐっちょりと濡れ、諦めた私は、のんびりと「地に足つけて」進むことにする。
ちょうど、私が雨に屈した時、水分をよく含んだ重たい空気の中で、ほのかに爽やかなそれでいて甘酸っぱいそんな匂いを感じた。
通りがかった長い髪の人の香水の匂いだった。
その人は、曇と暗い空模様を追いやってしまいそうな、そんな凛とした歩調をしていた。
匂いのせいだろうか、何故こんな無謀なことを考えたのかは解らないが、私は、雨に勝ってやろうと決意した。
いつもより声のトーンを高くして、いつも以上に胸を張り、堂々と、力強く歩みを進めた。
こんなことで雨に勝てるはずもない、そう解っているのにこんなことをしてしまうのは、私が厨二病だからなのだろうか。
私がスーパーを出る頃には空はもう光を降らしていた。
私は雨に勝ったのだ。