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そこは退廃極まるソドムの街。今日も今日とて略奪、強姦、殺人などの悪意ある罪悪が蔓延っている。そんな街を現実そのまま捉えることは、非常に難しい。
現実を誤魔化し都合の良い幻想を見せてくれる薬は街の住人にとって欠かせない。他所では違法であるソレもここでは生活必需品であり、これがなければやっていけない。
俺は薬の効果が切れて、正気になりそうだったので、売人になんとしても接触して、薬を手に入れなければならなかった。金ならある、つい先日気まぐれに観光に来た観光客を殺し奪ったものだ。
売人は酒場にいて鴨を探している場合が多い。まあ大抵はお決まりの連中、たまに新顔が現れる程度だが。俺は急ぎ足で売人のいる酒場に向かった。途中聞こえる、歓声、悲鳴は気にしない、
もうここに住んで3年になるから、もう慣れきっている。酒場に着いた。売人は、いる。
「おい、いつものを寄越してくれ」
「おおカザマ、金はあるんだろうな?」
「十分ある、さあさっさと」
「コイツを切らしてしばらく経ったか、素面にこの街は辛すぎるからね、良しいいだろう。3ダース分の金はあるな?」
「ああ、それだけあれば一月は凌げる。」
俺は3ダース分のヤクを受け取ると、さっさと専用の注射器に入れて注入を開始した。現実が反転する感覚。脳に心地よい音楽が響いてくる。強姦される女の悲鳴も。刺殺される男の歓声も。
全てが心地よいコエに聞こえる。行きと同じ道を歩いているのに、それは天国と地獄の違いだった。
俺の寝床は高架下の川沿いの茂みの中だ。そこに簡易式のテントが張ってあり、
そこで寝泊まりし生活している。快適とは言い難いしかし慣れてしまえばそう不便でもない。なにしろこの街食料は豊富にあるので、足りなくなった奪えば良いし、糞尿の類は近くの川に流せば良いのだから。俺はくそったれな現実とお別れする為に、テントの中に入ってささっと心地よい気分のまま眠ることにした。
なにしろこのクスリをキメた状態で眠ると極楽の夢を見られるのだ。