偉大なるググれカスについて
寝る前に、ふと思いついたので。
私が「南無三」という言葉を初めて目にしたのは、手塚治虫の漫画『火の鳥・乱世編』でした。
源義経を討ち取ろうとする武士達が寄せてくるのですが、弁慶が通しません。横合いから丸太の一撃を浴びた寄せ手の一人が、そう叫びながら息絶えるのです。
大昔に読んだきりなので、うろ覚えですが。
当然、子供の頃の私に、「南無三」の意味なんてわかりません。
ただ、お寺に行くとみんな「南無阿弥陀仏」というので、何かお祈りの言葉なんだろうとぼんやり考えたものです。
その説明を目にしたのも、やはり手塚治虫の漫画でした。
ズバリ『ブッダ』の終わりのほうで、仏陀入滅の直前に、ある人が転がり込んできて、救いと教えを求めるのです。
私はどうすればいいのでしょうか? と。
すると仏陀は伝えます。
「仏と、法と、僧に帰依しなさい」
この仏・法・僧のことを三宝といい、これに帰依(南無)するから「南無三」なんだと。
仏とはブッダ、つまり真理に目覚めた人。
法とはその真理。
僧とは……これは現代とは微妙に意味がズレますが、もともとはサンガ、つまり出家修行者や信者の集団のことを意味します。
このことを、のんびり入浴しながらなぜか思い返していて……
「ひでぇなぁ、お釈迦さん」
と思ったのです。
だって、そうじゃないですか。
「そんな! 偉大な知者が世を去ってしまう! どうすれば私達は救われるんですか! 教えて!」
と必死で縋ってくる相手に、なんと言ったんですか、彼は。
「ググれカス」
まさにこれじゃないですか。
ブッダに帰依しろもなにも、もう死ぬところですし。
真理に帰依しろといっても、それがわかっていれば世話はないし、解脱できてるし、困りません。
じゃあ具体的に帰依する先ってどこですか。
僧ですよね。
「私は何も言わないけど、私の弟子達に訊いてね、バァーイ」
という意味でしかありません。
まぁ、お釈迦さんの立場を考えれば、わからなくもありません。
なにしろ入滅直前、もう死ぬところです。
そして彼の最期ですが、記録によれば、ひどい下痢に苦しんだそうで。
つまり、具体的に描写すると……
「師よ! どうすれば……」
(やめて刺激しないで出ちゃう出ちゃうからっウ〇コ出ちゃうけどああ困ったこの人知らない人だしいきなり目の前で脱糞したら今までの布教活動とかパーになる感じっぽい絶対これSNSとかで広まっちゃうグアアでも出る出る便意マックス大爆発ブリッ……っていきそうなのにこんな初歩的な質問五分もあれば答えられるけどあんまり喋ると出ちゃうってばああもうしょうがない弟子に任せよう)
「南無三」
「ハハァ! ありがとうございます!」
……同情の余地はありますね。
しかし、これが輪をかけてヒドい話になったのは、そう、仏典結集なんかしちゃうからです。
「私は師が亡くなる前に傍にいた」
「師は最期まで真理を追究し、それを人々に伝えていた」
「ああ偉大なる仏陀、その死の間際の言葉は、きっとこれ以上ないほど尊いに違いない!」
そこで仏典とかにも「南無三」が、さぞ素晴らしいことのように記録されちゃうわけです。
そうか、三宝に帰依すればいいんだー、と。
お釈迦さんはただ、時間もないから「ググれ」で済ませただけなのに。
初歩的な質問だったから「他の人に聞いてね」で片付けただけなのに。
それが大切な教義になってしまった!
こうして、人類史上最も偉大な「ググれカス」が、後世まで語り継がれる次第となったのであります。
ま、すべては便意が悪いのです。
きっとそうです。
とか考えていて、これはアホらしいから共有しよう、と思い、寝る前の時間を惜しんで急いでエッセイに纏めてみました。
え?
そんなのとっくに気付いてた?
いやー、私の足りない頭は、今、やっとそこに追いつきましたよ。
こんな単純なことに気付けないなんて。
でもまぁ、せっかくだからキレイゴトで決着しましょうかね。
ググってわかることくらい、自力で学べなきゃ。
そういう意味も込めてお釈迦さんがありがたい言葉を残したのだと、勝手にそう解釈しておきましょう。
ところで、「南無三」でググると、意味の解説としてこんなのがヒットします。
『南無三宝の解説 - 三省堂 新明解四字熟語辞典』より
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%8D%97%E7%84%A1%E4%B8%89%E5%AE%9D/
仏に帰依を誓って、救いを求めること。また、突然起こったことに驚いたり、しくじったりしたときに発する言葉
(中略)
救いを求めることから後者の意味が加わった
「しまった、大変だ!」
という意味らしいです。
とすると、冒頭で挙げた、弁慶にやられた武士の言葉が「南無三」なのは、不覚を取って一撃をもらったからなんでしょうね。
ですが、皆様にオススメしたい「南無三」の使い方としては、やっぱり……
うっかりウ〇コを漏らしちゃったときに叫ぶことですかね!