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(^ω^)【ようです】のようです

(^ω^)【秘密結社に面接を受けに行く話】のようです

作者: 日曜日夕

―――慎重に選考を進めた結果、誠に残念ながら、今回はご期待に添えない結果となりました  ―――



メールを確認しながら、僕はうなだれた。



  ('A`)「これで38社目だ……もうだめかもしれない」



これだけ多くの会社を受けても、何処も自分を求めていない。



あぁ……僕は誰からも必要とされていないのか。



そんな自己嫌悪に陥っていた時、どこからかチラシが飛んできて、僕の足に引っかかった。



  ('A`)「ん?……なんだコレ?求人広告?」



『団員募集!!

     

     

 貴方も秘密結社で働いてみませんか?

      

      

 能力次第で数年で幹部に!!



アットホームな職場です!!



 ・勤務時間 9:00~18:00(休憩1時間,残業有)

      

 ・月収 18万~

      

 ・完全週休二日制


  TEL:0000-9526*5

              

 ※当社は改造手術は一切行いません

              

              秘密結社LOVE』




  ('A`)「秘密結社……?頭イカれてんのか?」



  ('A`)「……」



  ('A`)「応募してみるか…………」




 思えば、あの時の僕の頭はイカれていた。






―――




数日後、僕は都内の古びたビルの地下室に来ていた。



理由はもちろん、面接の為だ。




(・∀・)「はい、それでは面接を始めさせていただきます。」



(・∀・)「私、秘密結社LOVEの人事担当の古井と申します」



  ('A`)「よろしくお願いします」



(・∀・)「まぁそんなに畏まらなくてもいいですよ。弊社は人物重視で採用を行ってますから」



  ('A`)「あ、ありがとうございます」



(・∀・)「それでは……明村さんね……なんで弊社に入ろうと思ったんですか?」



  ('A`)「はい……偶然チラシを見つけまして……」



(・∀・)「あのチラシ見てくれたんだぁ!あれ作ったの私なんですよ!」



  ('A`)「あ!そ、そうなんですねッ!えっと、あの……はい」



(・∀・)「ああ。ごめんごめん。どうぞ」



  ('A`)「あ、はい……それで……私は就職活動に失敗し続けてまして……」



  ('A`)「こう……社会に対する不満とか、そういうのがありまして、社会の変革を……」



(・∀・)「あの~……君、何か勘違いをしてるみたいだね……?」



  ('A`)「え?」



(・∀・)「弊社は確かに秘密結社だけど、別に社会変革とか世界征服とか、そういうのが目的の結社じゃないんだよね」



  ('A`)「え?でも秘密結社って……」



(・∀・)「悪の結社とか言ってないよね?変革とか征服とか、そういうのはまぁ悪だよね」



(・∀・)「日本じゃもちろん違法だし、そんな結社は政府に潰されちゃうでしょ」



  ('A`)「あ、まあ、確かにそうですね……」



(・∀・)「たしかにウチは秘密結社だから活動については社外秘だし、ホームページもないから、分かんないだろうけど」



  ('A`)「ア……はい。マイナビに無かったので……ネットにも……なにも……」



(・∀・)「ふぅん。一応は検索してくれたんだ」



  ('A`)「……はい」



終わった。



面接玄人の僕の脳がそう告げている。



そもそも企業理念と活動が秘密だから志望動機とか考えられるワケないだろ!!



(・∀・)「ま、志望動機なんて使いまわす人もいるしね。全然イイよ」



(・∀・)「勘違いはあったけど、君みたいな正直な子は好きだよ」



  ('A`)「あ……」



  ('A`)「ありがとうございます……」



フォローが痛い。



もうだめだ。ここも落ちた……。



そう自棄になった時、僕の中で「何か」がハジけた。






(・∀・)「つぎの質問、じゃあ……趣味は何ですか?」



  ('A`)「秘密です」



(・∀・)「……なんで?」



  ('A`)「シークレットだからです」



(・∀・)「……」



  ('A`)「……」



(・∀・)「学生時代頑張ったこととかある?」



  ('A`)「著作権の関係でここでは語れません」



(・∀・)「大学での専攻は?」



  ('A`)「ひみつのアッコちゃん学」



(・∀・)「口は堅い?」



  ('A`)「友達がいません」



(・∀・)「……」



  ('A`)「……」



(・∀・)「……ごめん」



  ('A`)「……いいよ」






―――

 





3日経った。



まだメールは来ていない。



まぁ当たり前だ。あんな面接で、受かるはずは無い。



さて、今日も元気にエントリーシートをコピペする作業に入ろう。



「you got a mail」



  ('A`)「おっメールだ。不採用通知かな」




―――選考の結果、明村様を当社社員として、4月1日付けで採用することに決定いたしましたのでご連絡いたします。つきましては……



  ('A`)「えッ?なんで!?」



訳が分からなかった。けれど、初めての内定に感激した僕は狂喜乱舞した。



企業説明会でもらったパンフレット類は全てベランダで燃やし尽くした。



書きかけのエントリーシート、履歴書は真っ黒に塗りつぶした後、紙飛行機にしてどぶ川に投げ入れた。



結局、クソの役にも立たなかった就職支援サイトは刹那で退会して0点レビューを付けた。



その後、ストロングゼロを飲んで公園で寝ているところを職質されたのは言うまでもない。



  ('A`)「ああ……なんて清々しいのだろうか……」




これが





そうか





内定か






―――






次の日、目が覚めると僕は見知らぬ地下室に居た。



  ('A`)「はッ”!?ここは何処だ!?」



(・∀・)「お目覚めかね……?明村利一君……」



  ('A`)「ぅぇ?ぉ母さん……?」



(・∀・)「古井だ。もう10時だぞ。いいかげん起きなさい」



  ('A`)「え?誰?」



(・∀・)「君は数日前に会った人のことを忘れるのか?」



  ('A`)「え?……あ!あの秘密結社の!!」



  ('A`)「す、すいません。いや、あの、ちょいと寝ぼけてて……」



  ('A`)「へ……へへ……えっと……靴の裏でも舐めましょうか?」



(・∀・)「キャラ違い過ぎじゃない?舐めなくていいよ気持ち悪い」



  ('A`)「いや、就活生ってそんなもんすよ」



(・∀・)「そうだけどさぁ……まぁいいや」



  ('A`)「ところで、ここってどこですか?なんで起きたら僕の部屋じゃないの?」



(・∀・)「秘密結社LOVEの本社だ」



  ('A`)「え?拉致ですか?」



(・∀・)「違うな……親御さんには話はつけてきている」



(・∀・)「迅速な行動は秘密結社の強み」



  ('A`)「つーか、よく俺の親承諾したな」



(・∀・)「二つ返事でOKだった。今日は君に渡したいものがあってな」



  ('A`)「なんすか?変身ベルトとか?」



(・∀・)「採用内定通知書だ」



  ('A`)「えッ?……あ、ありがとうございます」



(・∀・)「で?どうする?入社する?」



  ('A`)「はい。もう三月だし、ほかに行くところもないし……」



(・∀・)「じゃあここにハンコとサインを……あ、親御さんにはもう貰ってるから。大丈夫」



  ('A`)「どこか釈然としない」



  ('A`)「はい。書きました。どうぞ」



(・∀・)「はい。受け取りました。じゃあこのまま当社の活動について話そうか」



  ('A`)「え、今?」



(・∀・)「そりゃ、せっかく埼玉まで来たんだし」



  ('A`)「え?ここ埼玉なの?」



(・∀・)「ああ。悪いが四月からは引っ越してもらう」



(・∀・)「あ、支度金は出るから安心して?」



  ('A`)「は……はぁ……」



(・∀・)「で、気になる活動内容は……」



  ('A`)「……」ゴクリ



(・∀・)「『秘密』だ」



  ('A`)「え?教えてくれるんじゃないんですか?」



  ('A`)「まだ僕が信用できないと言うんですか?」



(・∀・)「あ、いや、違くてね」



  ('A`)「やっぱり靴の裏をお舐めしましょうか?」



(・∀・)「内定取り消すぞ」



  ('A`)「どうぞ続けてください」



(・∀・)「言葉足らずだったね。弊社は『秘密』を取り扱う秘密結社なんだよ」



  ('A`)「秘密ってなんすか?国家機密的な?」



(・∀・)「私たちが扱う秘密とは、日本全国に数多ある『秘密結社の秘密』だ」



  ('A`)「つまり……どういうことですか?」(一ミリも理解できてない就活生特有の澄んだ眼)



(・∀・)「明村くん。日本には、どれだけの秘密結社があるか、ご存知かな?」



  ('A`)「100万!!」



(・∀・)「……」



(・∀・)「……1万」



  ('A`)「え?」



(・∀・)「秘密結社の数、1万」



  ('A`)「……」



  ('A`)「……ごめん」



(・∀・)「……いいよ」



(・∀・)「でッ!それでは何故、1万もある秘密結社の存在が、世に知られてないのか!!」



(・∀・)「何故だと思うッ!?」



  ('A`)「分かりませんッ!!」



(・∀・)「良い答えだッ!!」



(・∀・)「実は、弊社が『秘密結社』を世に知られることの無いように隠匿しているのだ!!」



  ('A`)「えぇッ!?なんだってぇ!!そいつは驚きだぁ!!」



(・∀・)「良いねぇッ君ィ!!良い新人だぁッ!!」



  ('A`)「あざっした!!」



(・∀・)「また、我々は『秘密結社』と政治団体・企業との関連を隠したり、各組織団員の個人情報保護も手がけている」



(・∀・)「物事を秘密にするのは手間がかかる……そこを支えるのが私たちだ」



  ('A`)「確かに……友達に話した恋バナとか次の日には公然の事実ですしね」



(・∀・)「その通りだ。秘密結社を秘密結社たらしめているのが、我々というわけだな」



  ('A`)「なるほど、一種のインフラ系企業ですね」



(・∀・)「いや、秘密結社って呼んで。ここの規則だから」



  ('A`)「あ、はい」



(・∀・)「じゃあ、ここまでで何か質問はある?」



  ('A`)「そういや……あんまり関係ないけど、いいすか?」



(・∀・)「ん?いいよ?」



  ('A`)「なんで僕、採用されたんすか?」



(・∀・)「……」



  ('A`)「え……?なんで黙るんです……?」



(・∀・)「友達……」



  ('A`)「……えッ?」



(・∀・)「友達いないって言ってたし…………情報洩れる心配ないな……って思って……」



  ('A`)「……」



(・∀・)「……ごめん」



  ('A`)「……いいよ」



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