表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニートヴィレッジライフ ~夢の理想郷~  作者: 神村涼
3.ウォータリア王国編
79/104

七十九.道中にて


 ウィンティア王都を離れ、十数日程進んだ。荒廃した大地は、段々と色鮮やかに瑞々しく草木や花は咲き、青臭い大地と変化していった。村々を繋ぐ街道は、きちんと整備されこの国の豊かさが垣間見れた。


 「なぁガイウス、もうウォータリアに入ったのか?」


 「そうだな、右手に大きな河が見えるだろ? もう数日進めば王都が見える筈だ」


 ガイウスが言うには、この河は海へと繋がっており河に架かった橋を中心に街が形成され王都になったそうだ。街の中を水が入り乱れ流れている様は、とても綺麗らしい。


 既に国境を越えていると言うガイウスに対して、検問が無かった事について尋ねると、「物品の行き来が激しいからこの国には無い」と言っていた。この道中ですれ違った馬車の数は、レイク王国を出るまでに遭遇した数の比では無かった。その事を考えれば、検問があった日には二進も三進もいかない事だろうと納得した。


 しばらく進んでいると、街道沿いに一台の場所が止まっているのが見えた。その周りで見るからに困っていそうな人が右往左往している。遠目から見るに、白髪のお爺さんのようだ。ガイウスは見かねて馬の脚を緩め声を掛けた。これも騎士の性分というものだろうか。


 「どうかしましたか?」


 「おお、気に留めて頂き感謝する。車輪が破損してしまって、荷が引けなくなってしまったんだ。急ぎの荷を運ばないと行けないから困っていてな」


 「そう言う事なら手伝いましょう。ショウ、ちょっと手を貸してくれ」


 ガイウスに呼ばれた為、ミズキ達に馬車の制御を頼み俺は馬車から降りた。爺さん一人では車輪の交換もままならないだろう。俺達は手分けして、積んである樽を降ろしていった。その樽は重心がはっきりとせずやけに重く感じた。荷車が軽くなると、手際良く車輪の交換を始めた。長い旅をすると結構慣れてくるものだなと感じながら作業を進める。時間はそれほど掛からなかった。


 「ああ、助かった。あんた達は騎士様とその奴隷かい?」


 爺さんはガイウスを見た後に、俺達の御者席に座っているミズキ達を見ながら不敵な笑みを浮かべていた。確かに出で立ちを見ればガイウスは鎧を着こなし、身嗜みは正にそうだと言って良い。俺達の格好はみすぼらしい訳でもなく別に普通だと思うのだが――――。


 「いや、ガイウス以外は皆冒険者だ。奴隷じゃあ無い」


 俺は少し強い口調で否定した。爺さんは思い違いをして、申し訳なさそうにしていた。


 「これは申し訳ない事を言った。許して欲しい、お嬢さん方を見たら娘の事を思い出してな……。そうだ! 今すぐお礼をする事は出来ないが、王都に着いたら『海猫』という商店に来てくれ」


 そう言って爺さんは、余程急いでいたのだろう、名前も告げすに急ぎ馬を走らせみるみる小さくなっていった。


 「あの爺さんの娘は奴隷……なのかな?」


 「何処にでも転がっている話さ。さあ、俺達も進もう」


 ガイウスは気を使ってそう言ってくれているのだろう。何処にでもある話……、当事者でなければどこ吹く風と頬を撫でる事も無い話だ。冷たいやつと、思うやつも居るかもしれないが、心の底から知らない誰かに冥福を祈ったりするのは少数だろう。自然と眉間にシワが寄るのを感じた。


 その様子を見かねてか、ミズキが俺に声を掛けて来た。ミズキもスクラの街での出来事を思い出したのかもしれない、少し不安そうな顔をしている。メグミンは表情には出していないが、何か考えているみたいだった。


 「また何か考え事してるでしょ? ショウが背負い込む事は無いんだよ」


 「うん、わかってる。答えが出ない時は皆に相談するよ」


 そうだな、答えが出ていない内に悩んでもしょうがない。大きな目標は決めたんだ。領地を手に入れて、行き場を失くした人々に安心して暮らせる街を作るんだ。その為には、まず色んな場所を巡って人と触れ合おう。どうするかは、ベネット村に帰ってからカオル君達を交えて話し合ってからでも遅くない筈だ。アイザック卿に相談するのも悪くない、俺達よりか長い事領主としてやっているのだから助力を求めよう。


 そうと決まれば、深く考えるのはやめだ。色んな国を周れるこの旅は今後の活動の役に立つ。この旅が無事に終わり、ベネット村に帰れるように思考を巡らそう。誰一人欠ける事無くカオル君達に元気な姿を見せるんだ。柴田がいないのは、もう手紙に認めたから驚かない筈だ。


 「暇だなー、そうだ、しりとりしようよ」


 「しりとり? 何だそれは?」


 メグミンが、馬車に揺られる毎日でとうとう痺れを切らしてしまったみたいだ、ガイウスは聞きなれない言葉に興味がありそうだった。


 「しりとりって言うのは――――」


 メグミンが簡単にガイウスに遊び方を教えて、俺達はその日、日が暮れるまでしりとりを行った。もちろん、ボロ負けなのはガイウス一人だった。もう一度、もう一度と執拗に食い下がっているガイウスを見るのが、面白かったのかメグミンは勝ち誇った表情で再戦を受け入れていた。


 特に意地悪だなと思ったのは、俺、ミズキ、メグミン、ガイウスの順番だったのだが、メグミンは卑怯とは言えないが『る』で終わる単語ばかり素人のガイウスにぶつけていた。


 ガイウスは口を尖らせ「るー、るー、るー」と連呼していた。そんなに言うとキタキツネが寄ってきそうだと内心思った。


 明日も引き続き、しりとりが始まるのだろうと思いながら、今日も何事も無く終わった。 


 

いつも読んで頂きありがとうございます!


これからの励みになりますので、宜しければ評価・感想等宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ