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三十四.建国祭 二日目 刺客の襲撃!


 いよいよお披露目の日が来た。事前にシンシア王女に、作戦を伝えていたお陰で、すんなりと舞台傍まで近づくことが出来た。


 警備に当たる騎士団員に、俺達の事を友人として、話を通してくれていた様だ。そのお陰で、人でごった返した中で押しつぶされなくて良さそうだ。


 ミズキをシンシアの侍女にする話は、余りにも不自然な為、シンシアに却下されたそうだ。襲撃があると、決まった訳では無いのでそこまでする必要は無いとの事だった。それにも関わらず、メグミンを潜めるのには賛成した。


 それを踏まえシンシアの本心を考えると、自分が狙われているのにミズキを傍に置いていたら危ないという判断だろうと思い至った。


 広場には続々と、一目王女様を見ようと、人が集まってくる。それに合わせて、騎士団員が広場の警護をする為に、持ち場へと点在していく。


 メグミンに馬車が着たら『隠伏』で、王女の傍に控えて欲しいと指示を出し、ミズキには、俺の傍から離れるなとは言えず、状況を見て逃げてくれと伝えた。本来であれば、ミズキは宿屋で待機が好ましいのだろうが、ミズキにとってはこの世界で始めて出来た女友達だ。どうしても、シンシアの晴れ姿が見たいとの事で意思を尊重して今に至る。


 盛大な歓声と共に、辺り一面花吹雪が舞い落ちる。それに合わせて、音楽が鳴り響き広場全体を高揚させた。


 王城から、馬車が出発したのだろう、人々の歓声だけでこの広場が若干振動しているのではないかと錯覚させられる。凄い人気だなと圧倒された。祭りの勢いに便乗している感じは否めないが、盛下がっているより断然良い。


 程無くして、副騎士団長だろうと思われる人物が先導する馬車が広場に到着した。 


 その人物が、手を挙げて合図すると、音楽が鳴り止み、一気に静寂へと誘われた。前の世界で見た、お昼に流れる長寿番組の司会者のようなだと思った。観客との息がぴったりで、気持ち良さそうだ。


 そこで、馬車から次々と、高貴そうな方々が降りて来て、舞台の上へと上がっていく。最後にシンシアが、上って行く。その時に、シンシアがこちらに気付き軽く手を振ってくれた。


 その瞬間何ともいえない、高揚感が湧き上がってきた。一般人には天のような存在の人と俺は友達なんだぜ、と言う様な悦が押し寄せてきた。この感覚は気持ち良いが、勘違いしては危険だ。凄いのは相手であって、俺は一般人の部類だからな。


 舞台上に、皆揃ったのか副騎士団長らしい人が、進行を始めた。式典らしく、口上が長く校長先生の話を聞いている気分になった。


 話を要約すると、国の成り立ちと国の繁栄を称えてとか話していた。


 そんな話をラジオ変りに聞きながら舞台上を観察してみる。中央に座っている人がシンシアの父で、この国を治めるレイク王なのだろう、頭の上をみると王冠を乗せているので一目瞭然だ。眼光は鋭い感じがするが、全体の表情はやさしそうに見える。


 王の左隣には、シンシア王女がいて、反対側には王と同じ年くらいの男性で、この式典を退屈そうにしている様に見えた。王の傍らには、賢者と言われる魔法使いが立っている。


 この世界においては、魔法が使える者は珍しい。戦場では、一つの魔法で百や千の軍勢を骸に帰す事が出来るそうだ。神子や聖者、賢者などと称えられてはいるが、言わば人間兵器の様な扱いだ。その代わり、普段の生活は高待遇を受けることが出来て、国に対しての発言権も高いと言われている。


 現在は各国に均等に賢者や聖者がおり、絶妙なバランスで成り立っている。


 わざわざ、こんな式典に参列させるのも、国力の強さを示す建前なのだろうなと考えた。


 長々とした、口上は終わり、続いて王からの祝辞を言いそうだったので、目を向けると、レイク王は椅子から立ち上がり、傍聴人を一通り見回しながら話し出した。


 「この国は私達王族の物ではない、諸君達の日々の働きによってこの国は成り立っている。国を一つの家族とすると、諸君達は私の息子や娘だ。国とは家族の集合体であるべきだと私は思う。相手を想う心が自然と国を豊かにすると信じたい! この瞬間が、来年、再来年と未来永劫続く事を祈って、皆大いに騒ぎ、大いに楽しんで欲しい!」


 王の声はどこか豪気で、やさしい感じがした。皆、王の言葉に耳を貸し、歓声を上げ称え、中には泣き出すものさえいた。


 その状況から察すると、この王は民の事を第一に考える人物のように感じられた。


 「今日は、私の娘が大きくなったので、皆に紹介しよう! 名はシンシアと言う!」


 いよいよ、シンシアの出番が来た。王の隣に行き、シンシアが可憐にお辞儀をして、話し出そうとした瞬間、大きな爆発音と共に、王城とこの広場を繋げる道が周辺の建屋の瓦礫によって塞がれてしまった。


 舞台の後方は退路を塞がれ、今度は畳み掛けるように、舞台の前方、式典を観に来ていた人々の後方から悲鳴があがった。


 「うわああああ、魔獣だ! 逃げろ!」


 「ハイウルフだ! 盗賊ギルドの連中もいるぞ!」


 広場は次第にざわめきが浸透していき、一気に爆発しそうになっていた。そうなればもう式典の様相を保てないだろう、その時、一つの聞き覚えのある声が響き渡った。 


 「落ち着きなさい! この場所には騎士団がいます! 騎士団の方々に従って、避難を、特に年配や子供、女性を優先して下さい!」


 シンシアは舞台上から凛とした透き通る声を発して、パニック寸前だった人々の心を一瞬にして落ち着かせた。その言葉に呼応して、副騎士団長が魔獣に対応する団員と避難誘導させる団員とに的確な指示を送り、自身は舞台上を守護する為辺りを警戒しているようだ。


 その様子を、うろたえる事無く舞台上の方々は、堂々とした態度で見守っていた。


 王城への最短距離での退路は絶たれ、魔獣達の襲撃、だがこれだけでは、王女を狙うのには少し心許ないと思った。


 広場には騎士団員が配備され、観客の中には冒険者だっているだろう、そこら辺の魔獣では討伐されておしまいだ。


 どういうことだ? と、思考を巡らせると、舞台上から剣戟が聞こえた。


 「シンシア王女下がって!」


 『隠伏』のスキルで、シンシア王女にくっついていたメグミンが、誰かと相対していた。


 その者は、以前シンシアを助けた時に逃げて行ったフードを纏った人物と似ていた。


 舞台上には、副騎士団長や賢者が、まだ控えており、単身では到底敵わないだろうと容易に想像がついた。


 「ちっ! 小賢しい娘が! しかし、ここまでは計画通り。あの方から頂いたこの力さえあれば、近づけさえすればどうという事はない」


 その人物は、呟くような声を発しながら、自身を覆っていた外套を動きにくいと言わんばかりに高らかに投げ捨てた。


 すると、彼の全貌が明らかになった。額には、魔鉱と思しき石が埋め込まれているように見えた。


 「その姿は……魔人に堕ちたか! その様な非人道的な行いをどこで……?」


 「噂では聞き及んでいたが……まさか!?」


 「陛下、この場は危険です! 早く避難を!」


 王や賢者、副騎士団長が、目を見開きながら言い放った。


 途端に慌しくなった、舞台上に危険な香りが漂う。魔人だって? とても嫌な雰囲気を感じ俺は後方の援護に向う足を止め、踵を返し急ぎメグミンの加勢へと向った。


読んで頂きありがとうございます。


宜しければ今後の励みになりますので評価、感想等宜しくお願いします。


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