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三十三.建国祭 初日 黒幕はあいつだ!


 ギルドで昼食を取った俺達は、王都の広場で腹休めをしていた。


 朝はトラブルがあり食べられなかった為、昼に思いっきり食べたら予想以上にお腹一杯になってしまった。メグミンの奢りと言う事もあり、遠慮は無かった。


 そのせいで、メグミンは元気が無い、少しやり過ぎたかも知れないと思い、後で半分を負担してやろうと決めた。


 広場では、人々が入り混じり大いに賑わっていた。この広場では、明日シンシア王女のお披露目が行われる事になっていた。その、下見も兼ねて俺達はここに休みに来たのだ。


 この広場は、王城から延びるメイン通りの途中にあり、ここまでの道のりは馬車で来るそうだ。当然、人払いをして、騎士団で両脇を固めて誘導する事になっている。


 広場に到着すると、大工が設置した舞台の上に王族、そして副騎士団長が参列し、この国の繁栄を祈って祝辞を述べるそうだ。その時に、シンシア王女の挨拶も行われる。


 狙われるとすれば、一番、聴衆との距離が近いこの瞬間だろう。


 広場内では、騎士団員が配置されるから近距離戦又は、乱戦は安心だが、遠距離となると逃げの一手になるだろう。


 その時は、メグミンに誘導して貰って逃げれいいし、その間俺の『快刀』で牽制出来るかと考えた。


 まあ、シンシアに何か遭っては事なので、基本は逃げる事になるのだが、敵を捕まえることが出来れば黒幕が分かるだろう。


 爆発物による攻撃も視野に入れようかと思うも、身内の仕業なら一同に会する場で、自身が危険に襲われる方法は選択しないだろうと結論付けた。


 これなら、何とか凌げそうだ。何も無いのが、一番良いけれど一杯フラグを立ててる気がするから避けられないような不安がある。


 ミズキはどうするかな? シンシアの侍女役として、舞台傍にいて貰おうか、乱戦になると危ないし守る対象が近いほうが俺も動きやすくなるし、そうしよう。


 俺が考えた事を、ミズキ達に伝えて互いに意識を統一させておく。


 そうと決まれば後は、明日を待つだけだな、腹の調子も良い具合になった事だし、服でも探しに行くか。


 「俺は、ちょっと行くところあるけど、ミズキ達はどうする?」


 「何処行くの?」


 「いや、ちょっと服を買いに行こうかと思って」


 改めて言うと、その日の為に用意する事が照れくさくなる。それを察してかミズキも照れくさそうに俯いていた。


 その様子を見ていたメグミンは、何かを悟った様に話し出した。


 「ふーん、うちは付いて行く! 初日に良さそうなお店見つけたんだよ! そこに行こうよ」


 そういう事なら凄い助かるなと思い、同行を許可する。


 「私は、シンシア王女に会って来るよ。今さっきショウが考えた事は、伝わって無いでしょ?」


 「そうだな、そうしてくれると助かる。お願いするよ」


 ミズキとは、そこで別れて俺はメグミンに連れられて、洋服屋に向かった。


 「やっぱりショウは、ミズキの事好きだったんだね」


 道すがら突然そんな事を言い出したメグミンに、俺は焦りを感じた。何故なら、俺がスクラの街の一件で落ち込んでいる時、身体を張って慰めてくれたのはメグミンだった。


 「なんか……ごめん」


 「なんで謝るの? うちが、気にする事は一つも無いよ? 二人共傍から見ているとすっごくじれったいんだもん!」


 そうなの? てっきりメグミンは俺の事が好きなのかと思っていた。今まで、結構スキンシップが多かったし、身体を晒してまで、慰めてくれたあれは、なんなの? メグミンの貞操概念の基準は俺の範疇を超えていた。むしろ、そう勘違いしていた事に、恥かしさを覚えた。


 それにしても、傍から見ているとそんなに判り易かったのかと思い、若干心に衝撃を受けた。自分では普通に振舞っていた筈なんだけど、嘘をつけない性格かもしれない。


 「あのさ、もし……うちが、最終日に誘ったらショウは頷いてくれる?」


 唐突に、そう聞かれて俺は言葉を詰まらせた。どう答えて良いのか分からなかった。メグミンは明るくて、親しみやすいし別に嫌ではないけれど、ミズキのそれとは、どこか違うと感じていた。


 「そんなに真剣に考えなくても良いよ! 冗談なのに、そこらへんがショウらしくて良いけどね」


 俺のそんな困惑した表情を見て取ったメグミンは笑いながら言った。


 「ところで、何でメグミンも最終日の事を知っている訳?」


 「それはね、王都に来る前にミズキとうちが、ガイウスと話をした時があったじゃない? その時ガイウスが言ってたよ。誘ってみれば面白い事になるとか楽しそうに話してたけど」


 やはり、あいつの入れ知恵だったか、薄々そうでは無いかと思っていた。その話をしている時のガイウスの憎たらしい顔が映写機の様に映る。


 俺を困らせて、後で面白おかしく笑うつもりだったんだろうと容易に想像がつく。


 まあ、なんだかんだ言っても、自分の気持ちに素直になれるきっかけをくれた事には変わり無い、ガイウスの思う結果とは違うかもしれないが、一応感謝しとくか。


 雑談をしている間に、洋服屋に着いた様だ。前の世界では、スウェットが基本装備で外出も殆どしなかったので、洋服には疎い俺だが、メグミンが慣れた手つきで、色々な組み合わせを持ってきてくれた。


 持って来てくれた服を試着室で、着せ替え人形のように披露する俺は、その流れでたまに可笑しな服を着せられながら俺達は愉快に服を選んでいった。


 ミズキの服装を、考えるとやはりフォーマルな感じが良いだろうという結論に至り、白いカッターシャツに、紺色のジャケット、黒いスラックス、茶色の革靴とを選んだ。無難な選択に少し不服そうなメグミンだが、俺を玩具にして遊んだ為、本人自身は満足している様子だ。


 これで、準備が整ったな後は、無事に最終日が迎えられるように明日は頑張らないといけない。今日は早めに宿に戻り、明日に備える事にした。


 街の賑わいは、今夜も夜通し続くようだ。非常に盛り上がっているのが見て取れた、最終日は俺達もゆっくり楽しもうと心躍らせながら、宿屋へ歩を進めた。 

 

読んで頂きありがとうございます。


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