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二十六.王都到着


 道すがら、休憩の度に俺は斬撃を飛ばすスキルの練習を行っていた。


 こんな危険な技は使う機会が無い方が好ましい。だけど、いざと言う時の為だ。元々、自衛の為に始めた戦闘訓練だが、俺達の日常を無闇に壊そうとしてくる奴には俺はもう迷わない。カオル君達とも約束をしたのだ。俺達がベネット村に帰る為に、例え人を殺してしまう状況になっても逃げない。


 柴田が物欲しそうに眺めてくるので、教授したが剣が空を切る音のみ虚しく鳴っていた。


 「お前らばっかりずるいな。俺には何のスキルも出来ねぇ。やっとこの世界で無双への道が見えてきたのに……」


 ぶつぶつと、不貞腐れている様子の柴田だった。無双? こいつの中二病は重症かと俺は諦めの溜息を吐く。


 練習の甲斐もあり。振りの速さと、胆力の練り方で距離と威力が変わる事が分かった。身体強化はただ胆力を練れば身体全体に纏いつくような感覚があるが、それを意図的に腕から手、そして剣へと意図的に纏わせたものが斬撃として飛んでいく。


 胆力を強く練り、振りを速くすると長距離飛びそして切れ味も良く、振りを遅くすると鋭さが無くなり衝撃波のような感じになった。


 逆に、胆力を抑え、振りを速くした場合は、短距離で切れ味も良く、振りを遅くすると、そよ風機能だ。


 ここで言う振りを遅くというのは、ビュッといった具合の一般的な振り下ろし速度の事だ。これで、身体強化込みでやると、威力は比例するといった感じだ。


 ようするに、感覚的な要素が多く俺が意識を何処に持って行くかで使い勝手が変わって来る。


 一通り練習が終わり、ミズキが昼食の合図をしてきたので、俺達は軽く汗を拭いその場へ駆け寄った。


 あれから、ミズキとは何だか気まずい雰囲気だ。どこかぎこちなく、会話も用事を伝えるだけという、正に業務連絡しかしていない。俺としては普通に接しているつもりなのだが、避けられているようにも感じる。


 「食べ終わったら、うちにも教えてよ、ズバッといくやつ」


 「ああ、やろうかメグミン」


 やったー! とはしゃいでいるメグミンを尻目にミズキへと目線を移すと、パチッと目が合った。その瞬間ふいっと、目を逸らすミズキの態度は少し不快に思えた。以前からそういう態度をたまに取る事があったけど、先日の事故からあからさまに避けるのは、どうなのだろう。


 「あー、ミズキとメグミンはこの後、俺について来てくれないか?」


 唐突にガイウスが、二人を誘う。意外と珍しい行為だった。二人もそう感じてか素直に従った。


 遠ざかる三人の姿は次第に見えなくなっていった。俺達は昼食の片付けをして、ごろごろと草原でお腹を休める事にしよう。


 しばらくして、三人が戻ってきた。ガイウスに何の話していたのか聞いても「ちょっとした、噂話だ」と昔の悪戯小僧っぽく笑う。


 そんな事言われると物凄く気になるのが、人情というものじゃないのか?


 次にメグミンに聞こうと伺ってみるも「ひみつ~」などと、少し歯がゆい言い方をしてきた。


 最後に、ミズキに聞きに行こうとするが、あからさまに逃げて行った。


 俺は、村八分にされたような感覚になり、精神的に大ダメージを受けた。それを見かねて柴田が軽く肩を叩いて励ましてくれた。


 柴田が俺を励ますなんてな。これまで色々問題があった柴田にしては珍しい。今は仲間なんだと感じれる。


 ガイウスの出発の合図で馬車は先に進む。


 馬車内では、聞かないで! という雰囲気がに漂っていたので、もう聞かない事にした。


 「今日の夕方頃には王都に着くから、まずは宿の手配だな」


 俺達は初めての王都に、心を躍らせる。


 遠目には、大きな湖の中に陸地同士を繋げる十字の道が交差しており、中央に見える大きな建物がレイク城なのだろう。


 その周りに円形の城壁があり、それを囲むように放射線状に広がる城塞都市が見える。


 東西南北のメインストリートであろう、十字の道には荷馬車が行ったり来たりを繰り返し、大変賑わっているように感じられた。


 「この様子だと建国祭前に着いたようだな」


 何やら嬉しそうに呟いたガイウスを無視し、俺は王都の壮大さを堪能していた。


 「すっごいねー! アイディアール城の城下町より人が沢山!」


 「今は建国祭前だからこの程度だが、今年の建国祭はすごいぞ! 実は第一王女のシンシア様のお披露目という事で一目見ようと各地から大勢集まるのが予想される。今までにないくらい盛大な祭りになると聞いた」


 「ほんとに! 王女様は見たいな。やっぱり、綺麗なんだろうな~?」 


 「私も見てみたいな王女様!」


 「ふん、人込みは嫌いだ。俺は宿屋で過ごす」


 ガイウスがどや顔で言い放つ。素直に食いついたのはメグミンとミズキ。柴田は基本的に団体行動をするタイプでは無い。スクラの街でもそうだったが、特別用事がなければ大半は宿屋だ。何をする為に付いて来たんだろうかとも思う。


 この祭りで嫌な出来事を忘れ、気分転換したい。乗り気なミズキ達を誘って楽しむかと考えたが、ミズキには避けられてるんだよな。祭りが始まるまでに機嫌が直ってくれたら良いけど。


 取り敢えず宿を確保するため、揃って宿屋を目指した。  


 

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