十六.冒険者ギルド
あれから、数日が経ち俺達は無事にアイディアール城のある城下町へと到着した。
道中、たまに魔獣に襲われはしたが、特別苦戦するような事は無かった。俺達の強さの基準がこの世界でどれほどかは、分からないがガイウスの言うように冒険者として食べていけるくらいには強いのかもしれない。
それも冒険者登録すれば、ランクが分かるそうなので楽しみだ。
そう浮かれていると、城下町に入る関所で衛兵に止められた。
「城下町に入る許可証を見せろ」
「許可証ではないが、アイザック卿からの許しは貰っている」
そうガイウスが返答するのと同時に、俺が貰ったアイザック卿直筆の書簡をみせる。
「申し訳ありません! ご無礼をお許し下さい! どうぞ通り下さい!」
急に態度が一変した、さすが城主の書簡の威力だとしみじみ思う。
「ここからが、大変なのだが……まあまずは冒険者ギルドに行こう」
不穏な言葉を吐くガイウスに対して何かあるのかと訝しんだが、冒険者ギルドが楽しみでどうでも良くなった。
この城塞都市は、城を中心に円形状に広がっており、城が一番高く、次に貴族諸侯達の住居、兵舎等があり、一番下には、町民の住居や商店街が階段状に区分けされ所狭しと、立ち並んでいる。
関所からまっすぐ行くと、正面に見えるのが冒険者ギルドでとても立派な石造りの建物だ。
内部は、酒場と併設してギルドの受付場所があり、とても賑わっている。
俺達は取合えず順番に並び、辺りを確認した。
クエストボードの前には若そうな冒険者達が悩んでいる様子が見え、酒場のほうでは屈強な男達が腕相撲大会をしている。
「すげえな! これが夢にまで見た冒険者達かよ! 俺のランクはSで決まりだな」
「ランクがSかどうか分からないが、恥ずかしいから静かにしておいてくれよ」
柴田の興奮が最高潮になり、中二病を発病しそうだったので抑えるよう促す。
「うち、よくわからないんだけど、冒険者って何する人達なの?」
「俺が教えてやるよ! ざっくり言うと冒険者は配達や、行商の護衛、魔獣討伐、資源の採集等ギルドに集まる仕事を選んで受ける人達で、取合えずかっこいいんだ」
「ふーん、何でも屋さんだね」
どや顔で説明した柴田であったが、冒険者というロマンに無関心なメグミンは疑問符を掲げながら、分かった振りをしていた。
説明するのが俺だったら、恥ずかしくて帰りたい心情に駆られるやり取りであった。
「次の方どうぞ」
その言葉と共に俺達は空いた受付に近づく。受付嬢はメガネを掛けてまさしくキャリアウーマン風の事務が似合う女性であった。
アイザック卿から渡された書簡を受付嬢に見せ、登録したい旨を伝えると別室に案内された。
ギルドでは魔鉱の研究が進んでおり、魔鉱の組み合わせで不思議な効果を現す実験に成功していた。
このランク付け用の装置もその研究の賜物と言えるだろう。魔鉱の埋まった壁に手をかざせば、身体能力等を計測しランク分けが出来るそうだ。
「誰からいく?」
「はーい、うちが一番」
メグミンがそういうと魔鉱に手をかざす。すると、魔鉱が光だしランクが表示される。Bランクと表示された。
「えー、中途半端で面白くない!」
不貞腐れているメグミンだが、俺達は誰かに勇者として召喚されたりしてないんだからね? と心の中で囁く。
俺もBランクで、ミズキはAランクが出た。
「Aって凄いのかな?」
「Aランク冒険者は、身体能力が高いか魔法が使える方でなければなれませんので、総数は少なめですね」
「通りでミズキに攻撃が当らない訳だな」
「ショウ、恥ずかしいから止めてよ」
これが若さかと思いながら、ミズキをからかってみた。柴田が最後で、さてどうだろうなと思っていると結果が出たようだ。
「何で俺だけCランクなんだよ! 壊れているんじゃないのかこれ!」
「そんなことはありませんよ。ランクはAからEランクまで有り基本的に身体能力でランク分けされます。大多数の方はCランクです。稀に魔法が使える方がいるそうですが、そういった方はSランクに位置づけされます」
「まあ柴田、俺達は国境を越える為に冒険者になっただけで、ランクなんか意味はないよ」
「ショウ様の言うとおりです。長旅をされるそうですがCランクであれば道沿いにいる魔獣程度には負けたりしないでしょう。遺跡探索とか未開の地に行かないのであれば事足りますよ。それに、あくまで現状ですから修行なり努力すればランクが上がる可能性もあります」
「せっかく冒険者になったのに探検出来ないのはクソゲーだ! そうだ、スキルとか無いのかよ! 必殺技みたいなやつ」
「スキルですか? 御座いますよ」
「まじかよ! それどうやったら出来るか教えてくれよ」
スキルがあるのか? ガイウスと模擬試合した時はそんなの使ってなかったと思うが、後で聞いてみよう。受付嬢の話だと自身の得手不得手によって使えるスキルに差があるそうだ。
例えば商人なら暗算、口弁、先見等のスキルが使える物が多い。
冒険者は探索系、採取系、戦闘系、隠密系等複雑で自身の今までの経験から使えるスキルが変わってくるし、経験を積めば増えてくる。
農民や町民の中にもスキル持ちがいて、生産系のスキルがあるらしい。ちなみに、魔法を使える人は形をイメージして使うそうで、長々と詠唱する人も要れば一言だけの人もいるという話だ。
スキルの使い方としては、その瞬間の閃きや直感で、すごく感覚的なものらしいので、今の所俺には使えそうにない。
「何だよ、使えねーじゃん。くそ、取合えずこの旅の間にランク上げてやる」
「まあ、柴田がそうしたいなら止めはしないけど、ところでメグミン見当たらないけど何処行った?」
受付嬢がスキルの話している時は近くにいた筈のメグミンが、いつの間にか見当たらない。
「うちはここだよ!」
俺の背後から声が聞こえる。振り返るとメグミンがいた。しかしいつの間に背後まで来たのだろうか? 先程まではミズキの隣にいたはずなんだけどな。ミズキも首を傾げている。
「メグミンさんは気配を消して、人目から逃れる隠伏のスキルが使えるようですね」
「うち、かくれんぼ得意だったなと思って試しにやってみたら出来ちゃった」
「どうやったら出来たんだよ?」
柴田の質問攻めに必死に答えようとするが、重要そうな所で擬音を使い説明しているので良くわからない。
柴田が、うおーとか叫びながら頑張っているが、そろそろ戻らないとガイウスが待ちくたびれているだろうから切り上げてギルドの外に出る。
去り際に、受付嬢が私の得意スキルは笑顔です、と言って見送ってくれた。それは、営業スマイルと言う物では無いだろうかと思い少し彼女の闇をみてしまった気がした。
そんな感じで、ランク付けも終わり、俺達は無事に冒険者になった。
ギルド前で待っているガイウスの所に戻ると、目の前に豪華な馬車が止まり、周辺を兵士が取り囲んでいた。
どういう状況だ? とガイウスに聞くと、やっぱりかと両手を上げやれやれと呆れていた。
馬車から優雅に降りてきたのは、見目麗しく気品のある女性だった。
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寒くなって来ましたので体調管理出来てますか?
私は少し風邪気味ですので、皆さん気をつけてください。