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十四.旅立ち


 あっという間にガイウスの共として出発の日を迎えた。


 人数が増えた事により、アイザック卿は馬車を用意してくれた。その馬車に、次の街までの食料や旅に必要な物を積み込む。


 俺達は旅の出来る装備が無い為、アイザック卿にお願いして一般的な装備を手に入れた。


 ガイウスの様にフルプレートだと俺達は動けないので、外套、胸当て、籠手、脛当て、を軽量化した物を着用している。


 メグミンとミズキは動きにくくなるのと可愛くないとの理由から駄々をこねたので、鎖帷子だけ中に着込んでもらった。


 全く女の子とは命よりも見た目が大事なのだろうか?


 あの二人ならば問題なく動けそうな気もするんだけどな。


 「どうだ? 似合うか?」


 嬉しそうに近づいてくるのは柴田だった。領地を跨ぐため冒険者になる事を伝えると俺の時代が来たとか言っていた。喜んでいるところ申し訳ないけど、登録するだけだからな? 仕事なんて受けないぞ。ガイウスの巡礼がメインなんだ。


 「お待たせー」


 元気良く待ち合わせ場所にやってきたメグミン、ミズキも一緒だ。


 「揃ったようだな、荷物を積んだら出発するぞ」


 ガイウスがそう告げると俺達は馬車へ荷物を積み込んだ。


 「じゃあ、出発しよう。カオル君あんまり無理し無いようにね」


 「ああ、ショウ達こそ浮かれるのはしょうがないけど、無事に帰って来るんだよ」


 カオル君達に、しばらくの別れを告げると、俺達はカオル君達が見えなくなるまで手を振り続けた。


 村の入口の橋を渡り、しばらく行くと辺り一面草原になり、日の光は暖かい。たまに吹く風は花の香りを乗せてやってくる。


 季節としては夏前の陽気だ。馬車の揺れがゆりかごの様に感じられ眠気を誘ってくる。


 「うちら、移住してから初めて村の外に出るよね。すっごくわくわくする」


 「そうだね。でもカオル君が言っていたように無事に帰る為に、危機感も持っていないと危ないよ」


 メグミンの浮かれ具合に、手を上に挙げやれやれと、ため息混じりに注意する。


 「あの、これから何処に行くの?」


 ミズキが聞いて来たので答えようとするが……そうだ俺は出発の準備で忙しく、ガイウスから特に行き先を聞いていなかった。


 「ガイウス、何処に向ってるんだ?」


 「ああ、アイザック様の城。アイディアール城だ。そこの城下町に、冒険者ギルドがあるからな」


 「「アイザック卿のお城?」」


 皆一様に首を傾げた、俺はアイザック卿にあった時に違和感を覚えていた。


 子爵の爵位を持っているのに農村の領地だけとは思えなかったのだ。そうなると理由がすごく気になるのが心情だ。


 「アイザック卿は、どうして農村なんかに?」


 「それなんだが……あちらに着けばわかると思うが、先に話しておくか。絶対に口外無用だぞ」


 そう言いながらガイウスは、道すがらに話し出した。


 アイザック卿は王国騎士団長の座を、婚姻を期に返上した。この頃にガイウスが頼み込み従士にしてもらったそうだ。


 アイザック卿は騎士団長時代軍務に明け暮れていた。城下町を見回れば、黄色い声援が瞬く間に集まる人気ぶりだ。騎士団長としての名前は伊達じゃなかったそうだ。


 遊びという物を、ほとんど経験の無かったアイザック卿は、黄色い声援に囁かれるまま誘惑され、いけないお遊びに目覚めてしまったようだ。


 こうして、城下町の女性達の間では、百人切りのアイザックとしての異名がまことしやかに囁かれている。


 それが、夫人の耳に届かない事も無く。アイザック卿は夫人の怒りに触れて、命かながらベネット村へと来たらしい。


 あの威厳の塊のような人にそんな一面があったとは、少し近親感を覚えそうだ。


 その話を聞いて女子達は少し顔を赤らめつつ、ガイウスを睨んでいる。確かにあそこまで詳しく説明しなくても良さそうだと思った。


 「ショウはもし有名になってちやほやされたら、そういう事するの?」


 メグミンが唐突に質問……いや、これは先制攻撃といっていい! この内容の答えによっては、メグミンとミズキから、この旅の間迫害される事は必死だ。


 助けて欲しいと少し目線をガイウスと柴田に移すが、あからさまに避けてくる。薄情な奴らだ。


 考えろ落ち着け、選択肢は三つだ。


 A、欲望のままに、男らしく次々と切り伏せていくと宣言する。


 B、欲望を抑え、そんな事をしないとカオル君のように爽やかに言う。


 C、冗談ではぐらかす。


 本心からいけばAだ。これは男のロマンだからな。だがここでは反感を買うのは間違いないので却下だ。Bは白々しく感じるだろう。そもそも俺にそんな爽やか機能は備わっていないだから無理。残るはCだが、上手く行きそうな気がしない。


 そもそも、考え方の前提がおかしいのではないだろうか。メグミンが質問してきたという事は、メグミン自身を引き合いに出した回答をすれば俺の傷は軽く済むのではと考え至った。


 「メグミンのように可愛い子だったら、心動くかもしれないね」


 「やだー、ショウってばー」


 俺は、どや顔で言い放った。 


 メグミンの攻撃をかわし俺は改心の一撃を決めたと安堵した瞬間、まんざらでもない様子のメグミンが少し恥ずかしかったのか、俺の頬に平手を放ってくる。


 予測できない速さで飛んでくる平手に対し俺は僅かに身体を動かし避けようとするもアゴに命中した。


 頭が揺れ薄れ行く意識の中で、ミズキが不満そうな表情をしているのが見て取れた。


 結局なにが正解だったのか分からないまま、俺はその場で倒れこんだ。

読んで頂きありがとうございます。


宜しければ今後の励みになりますので評価、感想等宜しくお願いします。



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