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ヒトの星  作者: 設定厨
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「私の知る歴史そしてその顛末」 作者不明




2600年代後半。


空中浮揚技術の確立により、大きな技術の躍進が起こった。


人工的に無重力状態の発生が可能になった事で、

それまで宇宙空間で行なっていたタンパク質結晶の研究が手軽に行えるようになり、薬学が発展。

薬学の発展による医療の「手段」が拡張された事による医療技術の躍進。



科学は真空及び無重力状態での作製が可能になった。

精度の向上・空気抵抗や摩擦からの脱却により高品質かつ正確な製品が手軽に手に入り、さらに高品質な製品を産んだ。


ナノテクの発展、分子を書き込むことで超大容量の情報を保存できる分子ドライブ、分子ドライブの発明によりさらなる加速を見せるAI技術。



医療は万能となり、機械工学、情報工学。

ありとあらゆる技術が円熟を迎え、

神に等しい力を付けた人類はついに真の平和に向けて動き ...はじめなかった。



技術の停滞による実力の拮抗で維持されていた仮初めの平和が、技術躍進によって崩壊を迎えた結果。


先進技術を操る《富める国家》と枯れた技術に頼る《貧しい国家》の間で類を見ないほどの大きな格差が生まれた。


資金力に勝るに《富める国家》よる武力•経済•医療•食物、ありとあらゆる支援という名の暴力に《貧しい国家》は成すすべもなく食い千切られ、飲み込まれていった。

吸収と崩壊を繰り返し、世界は混沌に飲み込まれた。


第三次世界大戦


後の世にそう呼ばれ、

もう一度だけ未曾有の大戦が起こるまでの間、人々の記憶に刻まれた恐怖の時代の幕開けである。





------------------------------





「ブラックバーン大尉のノート」 





文字を書くのは得意じゃないし、好きでもない。

だから起こった事だけを簡単に書いていく。

読んでからまだ足掻くのも、諦めてここで落ち着くのも、読んでるお前の好きにするといい。


スリムを追って装甲戦闘脚行車両(アレス)とともにあの銀球に飛び込んでから15年経つ。

多分あれは何かしらのポータルやワームホールなんだろうな。

入った途端に森の中だ。

訳の分からんままほっつき歩いてると

魔物とか言うおとぎ話の中の、

意味の分からん生物に襲われた。

もちろん60mm機関砲で血煙にしたが。


それから数日さまよって、このノートを預けてある奴らに会った。

角が生えてるし、人には見えないが、こいつらは気のいい奴らだ。信用していい。

俺たちみたいに裏切らないし、不満があれば必ず事前に伝えてくる。


こいつらを近くにあった基地の敷地内に保護対処として呼び込み、哨戒用機体にも保護対象として登録した。

元の世界に戻るまでのキャンプとして使うためにな。


それからひたすら戻る方法を探した。

馬鹿げた魔法とかを使う奴らに尋ねて回ったり、

恐竜みてぇな奴ら(なぜかは知らんが頭がいい)に研究してもらったりしたが、どうにも無理なようだ。

だが諦めはしなかった。

娘におねだりされた土産も渡してないからな。

なんとしても帰らなきゃならん。

そのまま12年。

帰れないまま12年も足掻き続けた。

我ながらすごい執念だと思う。


そんで一昨年前にまだ手付かずの北に向けて手がかりを探しに向かった。

ひと月ほど北上して吹雪に襲われた。

それでも無理やり北上を続けた。

装甲戦闘脚行車両(アレス)がなきゃ死んでたな。

いい加減辛くなってきたところで流石に吹雪が止むまでじっとしてる事にした。視界も悪くてなにがあるか見えないからな。

運のいいのか悪いのか、今となっては分からんが吹雪は2日ほどで止んだよ。

テントから出ると一面真っ白で空は真っ青。綺麗だった。

数分ほど見惚れてから、出発のためにテントを解体しようと振り返った時。

見つけちまった。


40m近くある13機のアンテナが立ち並んでた。

衛星上のMAKIに電力の送信や情報を交換するあのでかいアンテナだ。


意味がわかるか?


ここは地球だ。

俺は帰るべき場所に、初めから立ってた。


あのアンテナを修理すればMAKIとの通信も再開出来るだろうが...


俺はもう諦めたよ。

雪原にいたはずなのに、気づいたら保護した奴らの居るキャンプにもどってて、

何もしないまま、2年経ってた。



15年。

俺は、無駄に


妻に、娘に逢いたい。

耐えられない。

2年かけて動き出しちまった頭じゃ、耐えられる道理がない。



これを読んでるお前。

運悪くこっちに飛ばされて、

俺が保護した連中から運よくこのノートを受け取ったお前。


願わくばお前に、守る物も、愛も。

何もないことを祈るよ。

そうすりゃ諦めてここで生きていける。

幸運を祈るよ




(ノートの最後のページに一文がある)


これを読んでるのが坊主、お前なら。


お前なら、もしかするかもな。

俺の10倍は諦めが悪いからな。ありゃほとんど執念だ。

じゃあな坊主。いや、パイロット。

お前の訓練、楽しかったぞ。



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AL-3382(アリー)


『はい、大尉』


「坊主の事、よろしくな」


『了解。スリム少尉に挨拶をおこないます。』


「言葉のあやだよAL-3382(アリー)


「支援してやれってことだ。」


『了解。スリム少尉に()()()()を遂行。 を任務に追加します。』


「頼んだぞ。」


「世話になったな。 お前がいてくれて本当に助かった。」


『パイロットの支援は装甲戦闘脚行車両(アレス)の責務です。』


「・・・そうか。」




「・・・・じゃあな。」




「本当に世話になった。お前に幸せがあるなら、俺はいつまででもむこうで祈ってるよ。」


























『パイロットの心肺の停止を確認。』


『救助を要請します。 ・・・通信状態がオフラインです。救助要請が送信できません。』

『再度救助を要請します。 ・・・通信状態がオフラインです。救助要請が送信できません。』

『再度救助を要請します。 ・・・通信状態がオフラインです。救助要請が送信できません。』

『再度救助を要請します。 ・・・通信状態がオフラインです。救助要請が送信できません。』

・・・・・

・・・






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