第六訓 だ、大丈夫だって
「依頼?」
「ええ」
姉上はこの評判の悪い万屋の印象を上げるために依頼を持ってきたらしいと言うが。
「変なのじゃないでしょうね」
「あら、弟の顔に泥を塗るようなことなんてしないわよ。」
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その仕事はね・・・キャバクラに彷徨く攘夷浪士共と外来人をぶちのめして欲しいのよ
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いや待て、外来人ぶちのめすって完全に永蔵家の終わりじゃないですか。
「完全に泥塗りたくるどころか、窒息死させようとしてますよねそれ」
「あら、何の話かしら?・・・お金ならいくらでも出すわよキャバクラが」
「あんたじゃないんかい」
いつの間にか黙り込んでいたお銀さんはしばらくして口を開く。
「何すればいい?」
「あら、簡単な話キャバ嬢に紛れて危ない時に剣を奮ってくれればいいだけよ。」
「姉上!?そんな危険すぎますよ」
「あー、いいけどよォ評判とかなんちゃら大丈夫なのか?」
「ええ。」
*
ずっと寝てばっかりだったお銀さんが、外を歩くのは初編以来初めてな気しかしない。それほど仕事が来ずに暇だったのだ。
しかし、万屋の評判が悪いのは外に出て身に染みて実感した。
「あら、万屋さんよ」
「また関係ない人たちを殺すのかしら・・・」
しかし、お銀さんのような人がそんな非道なことをするのか・・・。僕はこの人に出会ってまだ数日しか経ってないが、そんな酷い人には見えないし、むしろ優しそうな印象だ。
「おや、お滝さんじゃないかい」
「今はお銀だって」
「お琴さん!あんたのお陰でなんとかやりくり出来てるよ」
「だから今はお銀だって」
驚きの事実。お銀さんにはたくさんの名前があるという事と同時に、本名はお銀では無いことが証明された瞬間であった。
「何故こんなに偽名を?」
「同じ名だと色々と厄介なことがあんだよ。本名は基本的に名乗らないようにしてる」
「僕は従業員ですから教えてくださいよ」
「ダメだっつーのー。・・・ほら、着いたぞ」
姉上を筆頭に訪れたのは、キラキラド派手に飾られた照明と電子板だった。しかも、壁色はどピンクで完全に未成年の規制がかかりそうなお店だった。
「これ、僕が入っちゃっても大丈夫なんですかね」
「いいでしょ。お前、地味すぎて存在忘れそうだから」
「ええ。慎八なら行けるわよ」
「姉上まで・・・はいはい分かりましたよ」
どーせ僕は地味ですよーだ。
こんな茶番劇を繰り広げていると、中から変な顔の人がでてきた。
「お、お銀さん・・・この依頼本当に大丈夫なんですかね」
「だ、大丈夫だって・・・自分の姉信じろよ」
「こんにちは万屋さん」
その語尾にはハートのマークが浮かんでるように錯覚した。
そう、そこに現れたのはゴリゴリマッチョのオカマである。