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悲鳴からすでに30分経っている。もはや男の声は聞こえないが、山中は確認と自分の安全を確保するために玄関を出た。
「いつ何が出てくるかわからないし、とりあえず構えながら行こう…。」
完全に動画の見よう見まねの構えだが、山中は間違いないと信じ、危険人物が居たところまで辿り着いた。
「うっ…。わかってはいたけど異臭と血の匂いが混じって気持ち悪い…!うっぷ…。」
山中は堪らず出そうになった胃酸を堪える。食後でなくて何よりと感謝しつつ、部屋の中を見る。
「グチュグチ、ブチ、クチャクチャ」
状況は最悪だった。山中の精神的にも。
「ひぃ…!?な、なんだよ…!なんで、こんな…!」
山中もわかっていたつもりではあったが、先程悲鳴をあげたと思われる男が例の危険人物に覆われるような形でビクともしておらず、反対にその危険人物はまるで餌にありつけた獣のごとく、その男にかぶりついていた。
「あ……。あぁ……。」
山中は自分で選んだ道と自覚してはいたが想像していた以上の後悔とショッキングな現場に出くわし、頭を抱えた。
「こ、こんなこと有り得ない!有り得るわけがない!こんな、ゾンビ映画みたいなシチュエーションあるわけないじゃないか!!」
もはや山中の頭の中は混沌だった。
今まで出くわしたことのない場面。目の前で人が喰われ、危険人物もとい化け物が目の前にいる。そんなの作品の中でしかなかったからだ。
山中は思わず自分の相棒を見つめる。それがかえって山中を冷静にさせた。
「いや、夢じゃないのは確認した…。相手は現行犯で殺人犯だ…。ここでやらなければ俺が死ぬ…。あとで銃刀法違反だの何だの言われようが、正当防衛でもある…。ここはモアベターを貫く…。」
山中はレティクルを化け物に合わせ、引き金を引く。
「…」
「あれ?出ない?」
山中が弾が出ないことを確認しようとすると、
「オアアアアア!!!」
「うわぁ!!!」
化け物が急に飛びかかってきた。それも人間とは思えない速いスピードで。
思わずの急襲に山中が仰向けに倒れ、銃を境に化け物も銃を掴み山中へ噛みつきにかかる。噛みつきにかかる化け物の頭を山中は咄嗟に躱す。
「グァアァ、アァ!!」
「クッソ!見た目不健康なのに何て力だ…!」
山中は銃を盾にするように化け物へ抵抗した。
これでは体力と筋力が持たず、ジリ貧だと感じた山中は賭けに出た。
「オラァ!」
「グギッ!」
化け物が噛みつきにかかるタイミングで盾にしていた相棒を手前へ押し出し、ホロサイトの角を化け物のデコにぶつけた。
化け物が怯んだ瞬間に山中は構え、弾が出ない原因をオープンボルトストップであることを思い出し、それを解除して再び照準を化け物に捉えトリガーを引く。
「パンパンパン!」
「ガァッ!」
化け物が更に怯み、山中は効果があることに安心感を覚えて起き上がった。
「この化け物め!」
今度は頭に照準を合わせ、トリガーを引く。
「パン!パン!」
化け物は動かなくなった。