戦闘準備
「ぎゃああああああああああああああ!!」
「っ…!?おっ!?な、なになになになに!??」
突然男の悲鳴が聞こえた。山中は慌てて玄関ドアを開き、先ほどの危険人物がいた方を見た。すると、そこにはおらずどうやら中に入っていったようだった。
「え、まさか襲われた…とか?どうする!?助けに行くべきか?それとも部屋にこもるか…!?」
山中は迷う。ヒーローという存在に今も憧れていて、「弱きを助け、強きをくじく」そんな言葉が山中は好きである。が故に、今山中は自分の正義心と恐怖心が戦っている。
「どうするどうする!いや、ここは落ち着け…。慌てた方がダメなんだ…。アニメや漫画でもそうだしな…。なんの根拠もないが…。」
山中は深呼吸を繰り返し、様々な状況を想定して結論付けた。
「自分を守れる自信が無い…。ということは自分が守れなければ、誰かも守れない…。手遅れになるかもしれないが、ここは装備を整えて…。備えあれば憂いなしとも言うしな…。」
山中は再びドアロックをかけ、まず服を寝巻きから実物になってしまったコンバットシャツに着替えた。部屋の中ではあるがすぐ動けるように靴も軍靴に履き替えた。そして、何故かある5.56mm弾、9mm弾をマガジンに1発1発手で込め始める。
「動画で見たあのチャージングロッド?みたいな奴あれば弾込めも楽なんだが…。」
不満を垂らしつつも全てのマガジンに弾を込め、プレートキャリアを装着し、マガジンポーチにマガジンを収める。残った弾薬やポーチに入りきらなかったものは会社でいつも使うリュックサックに詰め込んだ。
「かなり重たいだろうけど…、すぐには移動しないし、相手は1人だ。とりあえずこれで行くか。」
相棒とも呼べるHK416D本体にホログラフィックサイトを取り付け、416DとハンドガンのP226にマガジンを差し込みセーフティを解除。セミオートに切り替え、過去友人に指摘された指トリガーに気をつけながら山中は足音をなるべく立てないように慎重に玄関へ歩き出した。
「よし…、気づかれないようになるべく静かに近づこう…。」
こうして1人の新米兵士が誕生し、初の戦闘に一歩踏み出した。