異変
6月7日金曜日 04:13
山中はどこからか漂う異臭、そしてどこからか聞こえる騒音に目を覚ました。
「ドンッ。ドンッ。ドンッ。」
不定期に聞こえるその音はまるで何かにもたれかかるようなものだった。
アパートの廊下から聞こえたようで、山中はその音を聞くために廊下に出ようとするが、あることに気づく。
「これは、弾薬?弾薬ケース?なんでこんなたくさんあるんだ?」
おおよそ1600発分くらいはあるだろうか。それくらいの弾薬ケースが積まれてたり、山中が覚えてる限りこぼしたBB弾のところとおおよその位置に実弾が転がっていた。
山中は過去に本物っぽい弾薬を1発、フリーマーケットから買ったことがあったが、流石にこんな大量に購入した覚えはもちろんなく。
「誰か入ってきて交換した?ご丁寧に元々あったBB弾の弾の数だけ?しかもちゃんと転がって放置していた場所に置いて?なんか逆に尊敬するな…。」
そう思いつつ、床に転がる弾に気をつけながら歩いて段々強くなる異臭も我慢して、玄関ドアを開ける。
「ドンッ!ドンッ!ドンッ!」
開けたことによりさらに大きく聞こえ、異臭も強くなる。山中は恐れつつ周囲を見渡し、背筋が凍る。
「は…?何あの人…!?」
それは体中血まみれで自分の部屋からは2部屋離れた部屋の玄関ドアへ、まるで何かに吸い寄せられるように体当たりしていた。
「ガチャン、カチ」
「やべぇのがいるぞ…なんだあいつ…。血まみれで体も変色してたし、ゾンビみてえだな…。」
咄嗟にドアを閉めてドアロックをかけ、自分のベッドまで戻り辺りに散らばる弾薬や弾薬ケースを見渡す。そして今度はエアガンに手を伸ばし、お気に入りのアサルトライフル、HK416Dを手に取る。
「まさか…ねぇ…?」
疑惑に思いつつ空のマガジンを銃から抜く。
「おいおい……、これマジかよ…。夢か?夢の中?痛え…夢じゃねえぞこれ。」
空のマガジンはHK416Dが使用する5.56mm NATO弾が入るような形に変わっていた。試しに山中はコッキングレバーを引いてみる。
「うわ、これも最後まで伸び切る…。リコイルショック機能があるから途中までしか引けないはずなのに…。エアガンも本物になっちまったのか…。」
他の装備にも手をつけて物を確かめるがどれも山中が知りうる限り軍が実際に使っている本物になっていた。
「なんじゃこりゃ…。さっきの人と言い、俺の装備と言い、まるで俺の妄想の世界の中じゃないか…。」
ふぅ…。と深呼吸をしながらベッドに腰掛けた瞬間…。