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7.動き出す

7.動き出す


 美紀は矢沢の腕を取り、駅前商店街を歩いていた。傍から見ればヤクザとホステスのカップルにしか見えないだろう。現に周りの通行人は二人をよけて歩いている。

「ところで、どこへ行くんだ?」

「決まってるでしょう!お寿司屋さんよ」

「ほぉー、ずいぶん気前がいいんだな」

「何言ってるのよ。所長がおごってくれるんだから」

「そんなの、話の内容次第だって言っただろう」

 美紀はそんな矢沢の声など聞こえないかのように、この界隈でいちばんの高級店ののれんをくぐった。


 小山陽(よう)(すけ)はスポーツジムを無断欠勤して信州の山間の町に来ていた。コンビニエンスストアで日常雑貨と食料品を買い込んで、街道から少し脇に入ったモーテルの駐車場に車を止めた。

「こんなところで悪いな。明日からはちゃんとしたところに住めるようになっているから」

 モーテルの一室に入った小山は連れの女にそう告げた。

「いいのよ。たまにはこういうところも面白いものよ」

 女はそう言って小山からコンビニの袋を受け取ると、それを床に置いて、小山の身体に両腕を回して抱き寄せるようにして、そのままベッドに倒れ込んだ。


 森山は郊外にある工場の視察を控えて生産実績や売り上げの推移に関する資料に目を通していた。そこへ秘書の鈴木(すずき)真理(まり)()がやって来た。

「社長、明日の工場視察の件ですが…」

「何か問題でも?」

「工場長が不在らしいんです」

「知ってるさ。業界の会合があるんだろう?」

「ご存知でしたか」

「だから視察に行くんじゃないか」

 森山はそう言うと、真理恵の手を取り、自分の方へ引き寄せた。

「飯でも食いに行こう」


 その頃、全日食の工場から勤務を終えた一人の男が出てきた。男は守衛所で退出時間と名前を記入した。守衛はにっこり笑って男に手を振った。

「木下さん、お疲れさん」

 木下と呼ばれた男は無表情で工場を後にした。





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