6.情報収集合戦
6.情報収集合戦
美紀が指定された喫茶店で待っていると、実奈美は間もなくやって来た。
「お待たせ。もう、頼んだの?」
「ええ、コーヒーを」
それを聞くと、実奈美は手をあげてウエイターを呼び、コーヒーを注文した。そして美紀に向き直ると早速本題に触れてきた。
「それで、何を聞きたいの?」
相手に協力する意思が十分にあると判ったので、美紀も率直に一番気になったことを尋ねることにした。
「あの2人連れの女性が話していた小山さんって人と叔母の関係を知っていますか?」
美紀が尋ねた時、ウエイターがコーヒーを運んできた。実奈美はウエイターが下がるのを待って口を開いた。
署に戻った黒木は婦警たちの失笑に耐えながら資料室へ向か合っていた。途中でトイレに立ち寄り用を足した後、手洗い場の鏡で痣の出来た顔を眺めてうなだれながら、先ほどのことを思い出していた。
「まったく…」
矢沢に投げつけられた雑誌を交わした直後に矢沢の罵声とガラス製の灰皿が飛んできたのだ。矢沢によけるなと言われてそれをまともに受け止めた。
「バカ!それはよけろよ。危ねえじゃねえか。怪我したらどうするんだ」
「先輩、そりゃないっすよ…」
そして、黒木は再び署に戻って来たところだった。
ハンカチを水に濡らして顔に充てると、いくらか腫れも引いたように感じた。
黒木と入れ替わるように事務所に戻った美紀は来客用のソファにどっかりと腰を下ろすと矢沢を睨み付け、これ見よがしに呟いた。
「あー疲れた。優雅にジムで汗を流すはずだったのに、掃除のお姉さんだなんて…」
「それを言うなら、掃除のおばさんだろう。それに、疲れるのはどっちも一緒じゃねえか」
「そりゃあ、疲れは同じでも立場によっては精神的なものが違うんですよ」
「それで何か収穫はあったのか?」
矢沢に聞かれて美紀はニッと笑って見せた。
「まずはお茶でも淹れてもらおうかしら」
「ほう…。じゃあ、飯でも食いに行こう。内容によっちゃあ俺がおごってやる」
「やった!」