5.黒木からの情報
5.黒木からの情報
実奈美に見つめられて美紀は一瞬焦った。けれど、彼女が大事な情報源であることは間違いない。下手に立ち回って警戒されたら元も子もない。警戒される前に彼女を味方につけてしまいたい。美紀は咄嗟に実奈美の手を取り懇願するように訴えた。
「助けて欲しいの。叔母が…。叔母というのは森山雅代なんですけど、行方不明になってしまって…。大好きな叔母なので心配で…。何とか探し出したいんです」
目に涙を浮かべながら訴えてくる美紀の姿に実奈美は同情を覚えた。
「あなた、森山さんの…。いいわ。仕事が終わったら外で会いましょう」
美紀は実奈美と会う約束を取り付けた。
黒木は雅代が起こした傷害事件について調べていた。資料室で当時の捜査資料に片っ端から目を通した。
被害者は木下克哉。左大腿部を刃物で刺されている。ストーカーの被害に遭っていた雅代が帰宅途中に襲われた際、護身用に持っていたナイフで咄嗟に刺したということになっている。
雅代には情状酌量の余地があると実刑は免れている。逆に被害に遭った木下は暴行の現行犯で実刑を食らっている。
「現行犯?」
さらに調書に目を通していくと、犯行時、たまたま現場を車で通りかかった目撃者の証言で…。通報したのも、その目撃者…。目撃者の氏名は…。
「森山栄治だって!」
黒木は早速、矢沢の事務所を訪ねた。
「それがどうしたって?」
「どうしたって、雅代さんの傷害事件に森山社長が関わっていたんですよ!」
「だから?」
「だからって言われても…」
「お前はバカか?そんなもん、単なる二人の馴れ初めじゃねえか」
「あっ…」
「そんなんだから、いつまでたってもうだつが上がらねえんだよ。それより、その木下ってやつは今どうしてるんだ?」
「いや、どうしてるんでしょうね…」
矢沢は黒木の顔面めがけて持っていた雑誌を投げつけた。黒木は間一髪で交わした。
「よけるんじぇねえ!」
「はい!」