13.手がかり
13.手がかり
別荘に着いた小山は勝手口のキーボックスに暗証番号を入力して鍵を取り出した。玄関に戻ると雅代を連れて中に入った。何年も使われていない割には掃除も行き届いていてきれいだった。
「素敵な別荘ね」
「これからは、ここで一緒に暮らそう」
雅代は小山の身体に手を回して唇をせがんだ。その時、奥の部屋で物音がした。
「ちょっと見て来る」
小山はそう言って物音がした部屋の方へ行った。しばらくすると、両手を頭の上にあげた格好で小山が出てきた。その後ろに誰がかいた。
「こんなところで綾さんに会えるなんて、神様も粋な計らいをしてくれる」
その男に雅代は見覚えがあった。
一旦、本社に戻った森山は事情を聴きに来た黒木を怒鳴りつけた。
「いったい、君たちは何をやっているんだ! このまま木下を自由にしていたら雅代の身にも危険が及ぶかも知れんだろう」
「面目ありません。早急に雅代さんを保護して、木下を確保します」
「あの男はどうしている? 何の報告もないじゃないか」
「安心してください。報告がないのは何も起こっていないからだと思います」
「冗談じゃない! 何か起こってからじゃ、遅いんだ。雅代の身に何かあったら、お前たちを訴えてやるからな」
黒木たちは必死で木下の足取りを追ったが、何の手がかりも見つからなかった。もはや、雅代の消息を云々言っていられる状況ではなくなっていた。
一方、矢沢はスポーツジムに潜入させていた美紀から耳寄りな情報を得た。
『小山さんの実家は信州の地主で地元の山間にいくつか別荘を持っているんだって。もし、雅代さんが彼と駆け落ちをしたとしたら、そのうちのどこかに隠れているんじゃないかしら』
「その別荘の所在地は解かるか?」
『ええ、小山さんの実家に問い合わせて調べてあるわ』
「よし! そこはもういいぞ。すぐに戻ってこい。昼飯に寿司を食わせてやる」
『やった!』
電話を切った矢沢はすぐに車を出した。戻ってきた美紀のがっかりする顔を想像してにやけながら信州を目指した。
 




