表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

1.逃がした魚と新たな依頼

探偵 矢沢光一、再び。

1.逃がした魚と新たな依頼


 これで何度目だろう…。確変リーチ。データによると信頼度80%。そろそろ来てもいい頃だ。既に2万をつぎ込んでいる。けれど、ここで連チャンすれば一気に取り戻せる。

「いいんですか? 先輩。こんなところで油売ってても」

 声を掛けてきたのは黒木(くろき)だった。その瞬間、当たりの数字がするりと滑り落ちて通り過ぎた。

「こら! お前のせいで外れたじゃないか」

「それはちょうどよかった。もう諦めてちょっと事務所に戻ってもらえませんか?」

「何がちょうどよかっただ! この疫病神が!」

「先輩、それはないですよ。せっかく仕事を持ってきてあげたのに…」

「どうせ、ろくな仕事じゃないんだろう…」

 矢沢(やざわ)はくわえていたタバコをもみ消して吸い殻入れに投げ捨てた。

「まあ、いい。その代り、受けるかどうかは内容次第だぞ」

 矢沢が席を立ち黒木と共に歩き出した途端、大当たりのファンファーレが鳴り響いた。矢沢が振り返ると、それはたった今、矢沢がやめたばかりの台だった。

「くそっ! この貸しは高くつくぞ」

 矢沢は捨て台詞を吐いてパチンコ店を後にした。


 事務所に戻ると、美紀(みき)が依頼人だと思われる男性にお茶を出しているところだった。

「あっ、所長、お帰りなさい。お待ちかねですよ」

「なんだ、男か」

「先輩、失礼ですよ。こちらはウチの署でもお世話になっている仕出し屋さんの社長で…」

「なんだよ。弁当屋か」

「先輩、ただの弁当屋じゃないですから…」

「いえいえ、ただの弁当屋ですよ」

 依頼人の男をかばうように黒木が口を挟んだところで、その依頼人の男は矢沢の言葉を肯定して微笑んだ。そして矢沢に名刺を差し出した。

『株式会社 全日食(ぜんにっしょく) 代表取締役社長 森山(もりやま)栄治(えいじ)

 それを見た矢沢は目の色を変えた。全日食と言えば国内最大手の食品メーカーだ。これは金になりそうだと内心ほくそ笑む。それを悟られないように、矢沢は表情を変えずに森山を見据えた。

「それで、依頼内容は?」

「実は妻が失踪しまして…」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ