日常のピリオド
顔を向けると立っていたのは、コルケシスのハイスである田宮風華だった。二人は、同盟国ということもあり顔見知りで同盟を結ぶ以前も少し関わりがあり今もそれなりに仲がよいのだ。
「あ、風華どうしたの?」
「あのちょっと言っておきたいことがあって、少し付き合ってもらえるかな?」花奈は風華に真剣な眼差しで見られ「うん」と言って承諾した。
風華が花奈を連れてきたのは、とある部屋だった。
「ここは?」
「あ、私が作ったの。今から言う事はとても大事なことだから。誰にも見つからないようにと思って。」
コルケシスのハイスの超能力は<クリエイズ>。自分が想像したものを具現化することができる。だが、自分が見たこと聞いたこともないものやただの空想の物は具現化が出来ない。しかしこの能力の一番の利点。それは、ゴーレムを生成出来ることでそれも単なるゴーレムではなく実際の人間を生成できる。つまり、クローンだ。例えば花奈を<クリエイズ>によって作った場合、花奈と全く同じ物が作られそれは<ヒールライズ>を使うことが出来る。だか、1体しか作ることはできず能力は半分以下になってしまう。それでも十分強力ではあるのだが。
「なるほどね、やっぱ風華はすごいね。またいろいろ作ってよ、あの時みたいにさ!」
「うん、戦争が無事に終わったら、ね。」風華は、自分にも言い聞かせるように呟いた。
「それで、話っていうのは?」
「あ、うん。なんか、変な手紙が届いてて見たら不気味な内容で。」
そう言って風華は、1枚の紙を花奈に渡した。
「ッ、これって」
〜拝啓・アルガイズ、コルケシスの諸君〜
君たちに忠告しておくことがある。まもなく世界は終わるだろう。
その終焉始まりとして君らハイスにプレゼントを授ける。
楽しみにしていろ!まだ、終わらない。終わるわけがない。この計画は、まだ、始まってすらいないのだから。もう一度言う、これは忠告だ。 〜敬具・ゲルノイズの長〜
「わからない、でも何かゲルノイズが企んでいるのかもって思って相談したんだけど」風華は深刻そうに言った。
「いくつかの疑問があるわね。まずなぜ風華の所に送られてきたかってこと。忠告なら私のお父さんか風華のお父さんのところに送ってくるはずだよね。あとこれは推測だけど・・・たぶんこれはゲルノイズの長が書いたんじゃないと思うの」
「うん。私もそう思う。とりあえずどうしようかな。」
「お父さんたちのところに持っていって相談するしかなさそうね。」
「わかった」2人は目を合わせ頷きあい、長たちがいる場所へ向かった。
「どうしたんだ。拓人」そう言ったのはコルケシスのロイスであるボーイッシュな女の子の成瀬一夏だ。
「あ、いや、ちょっと。近い。」拓人は、そう言いながら少し一夏から距離をとった。
「お前こそ何で会議にでなかった。あの大切な会議に出ないということは何か理由があるんだよな。聞かせてもらおうかな?」拓人は、一夏を見下すような目で見て問いた。
「自分のことは棚に上げその上、他者の痛いところをつく。とは相変わらずいい性格してるな。お前は。」
「クッ」すっかり図星をつかれた拓人は黙り込む。
「私は、技術がない。だから会議に出て何か案を出すよりも皆の足でまといならぬように、特訓しなければならないからな。だから」
「お前は強いよ。弱くなんか、ない。だから」
「だから?」一夏は聞いた。
「この世界を一緒に守ろう」
「ハハハハハハ、お前どうしたんだ。今日なんか変だぞ、なんかあったのか?ハハハ」拓人もそんな一夏を見て少し笑みを浮かべた。
ドアの扉を勢いよくあけた花奈と風華は、その部屋に二人の気配がないことに気づき呟いた。
「あれ二人ともいないね」
「うん。どこいっちゃたのかな。」
「ヒャーーーーーーーーーーーーーー」
何処からか甲高い声が聞こえたのを二人は聞き逃すはずもなかった。
「行こう」風華が言い二人は声のした方へ走り出した。
「うそ、でしょ」
「そん、な」
二人共目の前で起きていることに呆気にとられて膝から崩れ落ちた。