仄かなセンリツ
戦争終焉のために動き出すのは1週間後。そのために皆剣術、体術、魔法それぞれの特技を鍛えていた。拓人の特技は、剣と魔法の両方である。どちらも毎日欠かさず鍛錬してきた拓人は、体術の神と呼ばれる花奈の父に負けず劣らずでアルガイズでは英雄とも呼ばれているが拓人本人は、というと気に入っていないようだった。
花奈は、魔法が得意でアルガイズのハイスの家系に伝わる超能力<ヒールライズ>は花奈に合った能力でありその能力は自身、他者ともに魔法効果の増強、傷回復、攻撃魔法の合成。それだけではなく、敵には逆のことも出来る。簡潔にいえば<ヒールライズ>は、バフ・デバフともに非常に有効な能力ということだ。
一方、ロイスの家系に伝わる超能力<ファンティラスリスト>は、自身のあらゆる攻撃に対して属性、炎、氷、光、闇。4つのエレメントを剣で攻撃する時には剣の周り、素手で攻撃する時には手の周りに生成できるなど、バフ・攻撃特化の能力である。だか、<ヒールライズ>と違いバフの具合がかけ離れており超攻撃特化であるが他者には付属させることが出来ないなどが欠点である。また、それぞれの属性は実態があり例えば炎に触れれば燃える、だがそのエレメントを他者が消すことはできないのでそういうところは利点であるといえる。
だが、ロイスとハイスが特段に強いというわけではなく、努力だけで特技を高めてきて拓人たちに渡り合えるようになったものもいる。それがガイスと呼ばれている者であるが、やはり超能力という先天性のものに勝ることができないのは否めないことではある。
花奈は、剣の鍛錬をしている拓人を見つめながら考えていた。
「私が、拓人を守らないと。絶対に」そう心の中で呟いて立ち上がり魔法の鍛錬を始めようとした時だった。
「花奈ちゃん、ちょっといいかな?」
後ろから誰かに声をかけらた花奈は、その声が少し遠慮気味で震えているのを感じて微かに背筋がゾクッとしたが振り払い、声の主の方へ顔を向けた。