戦争の終焉への一歩
「今から会議を始める」
そう高らかに叫んだのは花奈の父親だ。
「今回は本国アルガイズ同盟国コルケシスについてだ。」
この場にいるのは国の長である花奈の父と花奈、拓人、同盟国コルケシスの長とその子である大人しそうな少女田宮風華、その他は'ガイス'とよばれる警備員だけだ。
拓人の家系は代々ロイスと呼ばれるている言わば国の長を務めている家系だ。
一方花奈の家系はハイスと呼ばれる家系で主に長の補佐をする家系だ。それぞれの家系には生まれつき備わっているものがあり、光羽の恩恵で発動すると言われているものがある。それは・・・
ーーー「特殊能力」ーーー
だがその能力の詳細は、公には公表されていない、いや知るものはいないのだ。これは、サスベガルドの4つの国に共通することだ。なぜならここ10世紀は戦争などない平和な世界だったのだから。
ーー あれは5年前のことだった。ーー
それは突然起こった。隣国ゲルノイズの長がアルガイズの長であった拓人の父親を暗殺し、さらに、ソガシミスの長もまたコルケシスの長を暗殺した。
ーそして、長い戦争がはじまった。もっとも、戦争の発端である暗殺の目的も知るものはいなかったがー
その後は言うまでもなく、サスベガルドで初の世界大戦と呼ぶべき戦争の死者の数は今では サスベガルドの【人口の半分】をこえた。
その戦争が急展開を迎えたのは半年ほど前だった。当事国の長たちが亡命したのだ。つまり、4つの国の長は全員いなくなり今はハイスが実質的に長を務めているということだ。
ーー会議の1時間前ーー
「今日の会議は5年間の戦争を終わらせるための作戦を考える会議だ、必ず俺が・・・」
「そうだね、でもお父さんはきっと拓人に死んで欲しくないこの戦争で最優先するべきことはわかるよね」
「ああ、だけど俺の一番の目的はゲルノイズの長を見つけ、なぜ親父を殺したのか聞くことだ。それは譲れねえ。皆不思議に思ってるはずなんだ、なぜ殺したのかって。お前もそうだろ」
拓人は少し声を上げて問いた。
「うん、でも私は知らない方がいいのかも、しれない」花奈は俯いていった。
「ッ、なんでだ!」
「だって、もう終わったことでしょ?時間は戻らないし、知ってどうするの?復習する?どうにかなる?ならないでしょ?拓人がこの5年間どんな気持ちで生きてきたのかは私にはわからないけど、もういいじゃない!ね、私、拓人が」
「ドンッ」花奈の言葉は途中で途切れた。拓人が思いっきり壁を叩いたからだ。
「ふざけるな、そんなものは詭弁だ!この戦争は親父を殺した理由がわかるまで終わらない、終わらせない、そうじゃないと・・・親父が報わ・・れ・ない・・だろ」
拓人は涙を堪えることが出来なかった。
「そうだよね、ごめん・・・わかった私も拓人を手伝う、今日の会議で相談してみよ」花奈はしっかり拓人の目を見て言った。
「では、今後の予定だが・・・単刀直入に言うが、今起きている戦争を終わらせる!我が国とコルケシスが同盟を組んで約3年が経つ、あちらの同盟は今はただの形だけの同盟だが今後どうなるかはわからん。だが今なら敵陣営を制圧できる、そして和平条約を結び戦争を終わらせるのだ。多少の武力行使もいたしかたないだろう。だが、一番の問題は敵陣営に光羽を破壊されることだ、それだけは阻止せねばならん」
ーー 光羽とは、4つの国それぞれにある秘宝でそれぞれアルガイズの光羽は赤色、ゲルノイズは紫色、ソガシミスは黄色、コルケシスは青色をしていて光羽にはある能力が秘められているがその全容は明らかにされていない。
また、光羽が破壊されることによって起こりうることは大きく3つある。
一つ目は、破壊された国は光羽の恩恵が絶たれ特殊能力が使えなくなる。2つ目は、その国の民の人権剥奪。そして3つ目は、4つの国のすべての光羽が破壊された時に起こることであるが、それはサスベガルドの滅亡だ。つまり光羽は、良くいえば秘宝、悪くいえば悪魔の品なのだ。ーー
「もし4つの光羽が破壊されたら元も子もない、極力相手の光羽を壊さないようにしろ」
「じゃが、ゲルノイズ、ソガシミスの輩がサスベガルドを滅亡させることを企んでいたとして、自分の光羽を壊すことがあるかもしれない。その点に関してはどうする?」コルケシスの長が深刻な顔で言った。
「ああ、その場合も考えられる。だから我らの国の光羽を死守するんだ、その役目を・・・拓人頼めるか?」
「ああ」少し上の空だった拓人は名前を呼ばれて無意識に軽く返事をした。
「どうかしたのか」
「いや、何でもない。そのかわり、花奈もいっしょでもいいか?」花奈の父は二人の視線を受けながらしばし黙考した。
「わかった、連れていくがよい。だが優先するべきことはわかるよな?」
「ああ、わかってる」拓人はそう言いながらも今後の計画を練っていた。
ーーその帰り道ーー「拓人、なんで相談しなかったの?」
「うーん、よくわかんねーけど、ただこれは俺がやるべきことなんだ、だからお前の親父さんに言う必要はないと思ったから」
「でも、どうするの?光羽を守るっていう使命があるし。まさか、役目放棄するってこと?そんなことはしないよね?・・・」花奈は拓人を心配そうに見つめそう言った。
「ああ、光羽を守りながらも俺は俺の目的を果たしてやるぜ、そうしたら一石二鳥だろ!」拓人は、少し不気味な笑みを顔に浮かべなら遠くの空を見上げた。花奈は拓人の不気味な笑みを見てその表情から考えを読み取ろうとしたが何もわからなかった。