異世界探求伝 第九十四話 キャッスルフォートの浴場にて
無事にパーティを終えたかずきたちは、のんびりと疲れをいやす事にしたのだが・・・
落成式と訓練兵たちの打ち上げパーティーが無事終了し、要人の見送りを終えたかづきだったが、そこで思わぬ人物に呼び止められたのであった。
「ご領主様、おで迎えに上がりました」
「お、お前は! なぜここに」
「ご無沙汰しておりますクロサワ様。 わが主クラーク・ヴァレンチノ様から、あなた様のご面倒を一切合切見るようにと、仰せつかりました次第です」
「そ、そうでしたか、思わず驚いてしまって申し訳ないサウリーネ・オズモンド女史」
「まぁ、フルネームで呼ばずとも、ホホホ。 サウリーネで結構ですわ、こちらのメイドたちの教育も行わせていただきますので」
「そうか、サウリーネ、宜しくな」
「今日はもう遅うございますゆえ、部屋をと風呂をご案内いたします。 皆様は先にお向かいあそばしています」
「そうか、では案内を頼もう」
「畏まりました、旦那様」
実はこの屋敷、エレベーターが完備されている。 仕掛けは床に風魔法を組んだ魔方陣を配置しており、階層のボタンを押す事でその会に固定される仕組みだ。 密閉された空間で風を放出する事で、噴水のように上昇するように設計されており、降りる際にはエレベーターの箱自体の重さがあるので、強弱をつける事で簡単に昇降ができるというわけだ。
「凄いなエレベータまであるのか」
「全て、旦那様の知恵により作られたのだと聞き及んでおります」
「うーん、まぁヒントだけなんだがな」
メイド長サウリーネから案内された十階の最上階が、領主かづきの住いとなっており、直ぐに部屋へと案内されると、そこで待ち構えていたのは、かづきの愛する女性たち五人の姿であった。
『おかえりなさいませ旦那様!』
「ハハ、なんだ全員そろって待っていたのか」
「かづきこのお城、屋上にお風呂があるのよ。 皆で行きましょ」
「あ、うんそうだな」
「では、ご支度整えて参ります」
「ああ、すまないなサウリーネ」
最上階にバスルームを設置したのは、彼女たちの希望でもあった。 建物の高さは80mほどの高さであるが、ここは高台の砦であるし、傍から見ればかなり目立つ建造物であろう。 そうした最上階で風呂を楽しみながら周囲を見渡すのも一興との趣向なのであろうが、リフレッシュするには最適な場所であることは間違いない。
「かづき、新作の石鹸がいくつかあるんだけどどうしよう。 五つも試せないわ」
「ちょうど五人いるじゃないか、それぞれ試してみるといいよ」
「へー、ヘアソープだって、髪の毛専門かな」
「よし、俺が試してみやろう。 まず小さい子からだ、モモミクおいで」
「小さい子違うもん。 もう大人だもん」
「ミクはもう成熟した大人、いつでもOKですわ」
「ませてるな、コチョコチョ」
『ヒャァー、キャハハハ』
「シャンプーってこれか、ふむ、容器が黒か魔物の甲殻かな」
容器はホワイトアントの甲殻で、普段白い虫で腐った木や木の葉を餌にしているという。 こうした魔獣虫の幼虫は蛹から成虫になるのだが、蛹の頃に出す溶解液に甲殻を付ける事で、柔らかくして加工している。 つまり柔らかい甲殻であれば、加工がしやすいという事である。
「おにぃちゃん、なんで髪の毛は二回洗うの?」
「そうだな、人の肌から出る油脂や汚れで、一回目はあまり泡立たないからな。 そら二回目いくぞ」
「ヒャー」
「おにぃ様、前をお隠しになって下さい。 ブラブラさせてみっともないです」
「ハハハ、女性の前で悪かったな。 タオルが短いんだよ、許せ。 ふむ、泡立ちも香りもまずまずだな、指通りも良い」
「カヅキ、これを髪の毛洗った後に付けるって」
「クンクン、クリーム状だな、コンディショナーかな。 よし、後はタオルで巻いて十分程放置」
「次せっけーん」
「よし、三種類あるな、まずはこれを試そう。 泡立ちは良し、匂いが無いタイプだな。 湯あみ着じゃ洗いにくいぞ、モモミク全部脱いでくれ」
『いやーん! エッチおにぃ様』
「何を言う、ほらモコモコの泡だ、気持ちいいぞー」
「ヒャー、キャー」
「よし、後は洗い流して完了っと、どれどれ」
「やん! なんで触るのですか」
「そだそだ! スケベ」
「何を言っている君たち、これは商品開発には欠かせない大事なテストなんだぞ。 見てみろお姉さん方はおとなしく待ってるだろ」
「ふむーん、うーん」
「どれどれ、うんうん育ってるな」
『イヤーン! エロい、ヒャー馬鹿ぁ』
「さてさて、幼女を堪能、いやテスター完了。 次はおねぇさん達の番だな、ジュリナから行こうか」
「は、はい。 ごくっ」
「ジュリナの髪は白髪で、とても柔らかな毛質をしている筋肉質だが、非常に弾力性に富んでいるから、着痩せするんだよな」
「ちょっ! かづき、太ってるの? ねぇ太ってるの私」
「いやいや、ふくよかなこの胸と腰の括れ、最高のスタイルさ。 モミモミ」
「ひゃ、あんっ! 何かタオルが盛り上がってる」
「ザバー! よし浴槽に入って温まってくれ」
「あーん、もう終わりなの、ちっ」
次はミシェータだが、ミシーの赤髪は癖の無いストレートで太目の毛質が特徴だな。 決して美人とは言えないが、目じりの少し下がった小顔はポメラニアンを思い出させるようで非常に愛くるしい。 パーツ一つ一つが小さめで、全体に小粒だが肌がきめ細かく、少し幼児体型の残るあどけなさでジュリナほどではないが、お椀型の美乳はかづきのお気に入りである。
「いやん、脱がさないでよカヅキ。 ひゃん、くすぐったい、いや、そこ感じちゃいそう」
「こら動くんじゃない、あまり動くとこうしてやる」
「ひゃ、そこ摘まんじゃいや。 キャハハハ」
『ザバーン!』
「ヒャー、酷いカヅキ」
「ふむふむ、こっちのソープは油分を取り過ぎるみたいだな。 よし最後はディアンヌだ」
「お、お待ちくださいませカヅキ様。 そこは自分で・・・あっ、あん」
「ふふふ、ここか、ここがええのんか」
「ちょっと、お兄様、それ必要?」
「ん、コホン失礼。 ミク、これもテストのうちなのだよ」
ディアンヌもミシーと同じく赤毛だが、くせっけで天然のウエーブがエレガントなイメージである。 体形も背丈もミシーとジュリナの中間というところだが、彼女達とは全く違ったタイプで、インドア派なせいか肌はとても色白でとても美形だが、キリリと目筋の通った聡明な美女である。
ジュリナとは違い、着太りするタイプで少しあばらが浮き出てはいるが、出るところは出ておりまるでモデル体型のようにスレンダーである。 彼女の冷静で真面目な性格は、家庭環境から来ているのかもしれないが、極端に恥ずかしがるところが男にはたまらない魅力といえよう。
「デァンヌの髪の毛は柔らかくて泡立ち凄いな。 ついでに体もホレホレ」
「キャハハハ、くすぐったいですわハハハ、お止めになって」
『ザッバーン』
「エグエグ、んぷっ 酷いですわ」
「そうよね、酷いわね、よし、こうなったら全員でやっつけるわよ」
『いえっさー!』
「おいマテ! 話せばわかる、おい、やめろぉ!」
女性陣にさんざん悪さをしたかづきは、逆にあんな事やこんな事を・・・ とまでは行かなかったが、無事石鹸のテススターを終えて、全員で仲良く湯船に浸かったのであった。
屋上にある浴槽はいくつかのタイプで作られている。 室内風呂の内湯はサウナ付きで、全てが大理石造りで大浴場と仕切りのある家族風呂まで色々揃えられている。 部屋の外にあるのが唯一の露天風呂で、ベースは大理石だが岩を埋め込んだ岩風呂となっており、ベンチやテーブルなどが並んだプライベートバスというところである。
「真面目な顔して何してるの? おにぃちゃん」
「ん、まぁ見てろ、ふんっ!」
「あ、お湯の中から水の玉? 水の魔法なんだ」
「違うわモモ、これは魔力そのものよ。 魔力で水を包んでるの」
「ふーん、水魔法で水球作っちゃダメなの?」
「うふふ、その魔法の元なるのが魔力そのものなのよ。 学校では魔法を使う方法は教えるけれど、その鍛錬方法ってやらないでしょ」
「ミシーおねぇ様、寝る前の魔力を使い切るって方法が、おにぃ様の鍛錬方法だったのではなかったのですか?」
「そうね、それは魔力の量を増やすのに役立つと聞いてるわ」
「魔法の力を上げるには、魔法を使い続ける事が一番じゃないの?」
「よし、沢山できたぞ、魔力の威力なんだが、俺もミシー先生から教えられた通りやってたが、どうもそれだけじゃない気がするんだよ」
「えっ? 違うのですか」
「いや、間違っちゃいないと思うよミク、魔法ってのは要するに自分の想像力と操作、そして魔力の鍛錬力が必要じゃないかって思うんだ」
「じゃ、想像力があれば何でも魔法で作れちゃうって事?」
「それは無理だなモモ」
「ちぇ、お金沢山作れるかと思ったのに」
「ハハハ、物理的に可能ならできない事も無いだろうさ」
「ぶつり?」
「自然の理の事よ。 貴女たちも授業で習ったでしょ」
「えっと雨は大地に注ぎ、植物を生やしそれを草食獣が食らう。 草食獣は肉食獣に食べられやがて死に、大地の肥やしとなり水に流される。 水は蒸発し大気と混ざり合う事で雲を作り再び雨となる。 でしたか」
「良く出来たわミク、でもね、実はその先があるのよ。 然るに水は大火をも消し、生き物ののどを潤すが大地に飲まれる。 大地は底から火を産み出すが風に削られ砂となる。 水は火と混ぜられ風を呼び雲を起こす雷となり、水と大地が交われば草木を生じる。 水から火を取り去れば氷となり雪を降らす。 また火は灯りを呼び影を生む」
「ああ、魔法経典に在りましたわね、その文言」
「そうデァンヌ、でもねカズキの思考はその先を行ってるのよね」
「そう言えば、カズキは不思議な見た事も無い魔法を使うわよね。 消えるように素早く動いたり、身体を重くしたり」
「確かにジュリナの言う通り、私が言いたいのはそうじゃなくって、魔法の根本的な考え方が違うと思うのよ」
「えっ? 俺何か間違ってるかな」
「そうね、例えば今遊んでるその水球。 普通の人なら魔力を魔法に帰るのならいざ知らず、放出しながら操作をするのは不可能よね」
「えっ? そうなのか」
「ちょっと皆でやってみよう」
「できませんわ」
「無理ぃミシー」
「ジュリナには期待してませんわ」
『出来た、出来ましたわ』
「ほらね、やっぱり」
「えっ、ちび達なんで出来んのよ」
『パチン!』
「きゃ、ジュリナお姉さまがそんなこと言うからぁ」
「どういう事? ミシー。 あんたもできないの?」
「そうね出来ないわ。 多分認識度の違いだと思うのよ」
「お前達、それは固定観念っていうもんだよ。 外見が貧相だったら貧乏人、着飾ってたら金持ちって見るだろ?」
「違うの?」
「ハハハ、違う事もあるさ。 男と思ってても女性であったり、魔物だからって全て人間に敵意があるとは限らないだろ」
「ハハーン、確かに今回の境界の森の時がまさしくそれね」
「まぁな、人をだまそうと思ったら、金持ちの格好をして安心させるのは詐欺師の手口さ」
「そう言えば、小さな頃優しいおじさんにお菓子貰って着いて行ったことがあって、大騒ぎになりましたわ」
「会頭の孫娘攫ったのか。 ただじゃ済まなかったろう」
「ええ、門の前に張りつけにされていましたわ。 わたくし判らなかったもので、なぜ優しいおじさんに酷い事をするのかと、お爺様に泣いて懇願しましたの」
「許したのか?」
「ええ、その場は収まりましたが、大きくなって事の真相を聞かされ身震いしましたわ。 身代金目当てだったそうですが、奴隷商人に売られる算段だったそうです」
「へー、結局闇で葬られたのか」
「まぁ、奴隷商人と商工会ギルドの仲ですから、わたくしの面は直ぐ判ったそうですわ。 結局、奴隷落ちで鉱山行きだったらしいですわ」
「ちょっと、あんたら脱線し過ぎぃ」
「ホホ、ごめんなさいジュリナさん」
「えっと、認識度と固定観念の話だったな。 つまり、一旦経験してしまえば問題ないんだろ。 えっと、一番へぼな魔法使いはジュリナだな」
「ちょ! 酷い」
「違うのか?」
「ち、違わないわ」
「ジュリナ、こっちへ来て俺の膝に座って見ろ」
「はーい、喜んで」
かづきは、ジュリナを膝に乗せると、両手を背後から取って集中し始めた。 しばらくその様子を伺っていた他の女性達は、そこで驚くものを見せつけられたのである。
「あっ、出来た」
「え! 何で出来るのよジュリナ」
「んとね、カヅキの魔力がずーっときて、ダーッと流れて来たの、そしたら・・・」
「もう、結構! カヅキ私にもやって見せて」
「わ、わたくしにも」
かづきは、自分の魔力を相手の体内に流し込む事によって、魔力の流れを教え込んでいたのである。 お陰でコツをつかんだ彼女らは、夢中で練習を始めるがすぐに全員倒れてしまい、かづきが五人を慌てて湯船から引き揚げて介抱したのは言うまでもない。 これは魔力切れでは無く、のぼせてしまったものによるものだ。
ミシェータ:凄いすごい、出来たわ水球
ディアンヌ:わたくしも、ほら、こんなに大きく
モモ:私3つ連続ぅ
ミク:4つできました。
ジュリナ:むむ、じゃこんなでかいのどうよ! フフ・・・フフフ
かづき:お前達いい加減に上がれ。 おい、そこ沈んでる!?




