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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
躍動編
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異世界探求伝 第九十三話 宴もたけなわ

境界の餅から無事帰還を果たしたかづきらは、新たな方向に向かうべく進んでいく決意を固めたのであった。 ここに新たなるページが刻まれるのであろうか。

 クラークから、砦村に屋敷が出来上がったとの知らせを受けたのは、ちょうどかづきらがサキュバス達と合流し帰還途中の帰路の事であった。


イヤーカフでのやり取りは日課となっており、建設間近である事は了承済みであったが、何やら地名が無いとまずいらしい。 そこで、砦村の名称を考える事になったのだが、安易にキャッスルフォート名称を付けてしまったが思いの他、しっくりとくる名前であった。


当然の如く落成式を兼ねた、兵士訓練の課程修了式典これはこれで一興である。 パーティーの賓客に中にも見知った顔が居たのだが、挨拶は後でも構わないだろうと思っていた矢先、あちら側で出向いてくれたようだ。 そう、ディアンヌの祖父にあたる商工会ギルド会頭の、シュタイナル・アベルボ-グ氏である。 


しかし、話す間もなく別の人物がやって来る事になった。 クラークの婚約者であるハーフエルフの、カレンとその父親で冒険者ギルドマスターのロナード・ミルフォードである。 先走って即座に挨拶を行ったが、髪の毛も瞳の色も全く同じで、間違いようがないところだろう。


「これはこれは、領主クロサワ殿、どちらかでお目にかかった事が?」

「ああ、これは失礼、間違いがありましたら平にご容赦を」

「いや、間違っちゃいない、確かに俺は冒険者ギルドの長をやってるロナード・ミルフォードってもんだ」


「そうですか、それは良かった。 この度はお嬢様とヴァレンチノ家クラークとのご婚約、誠におめでとうございます」

「ふむ、話に聞いていた風じゃないな。 まさか猫をかぶってるのかい? なぁシュタイン爺さん」

「プッ! オッホッホ、全くその通りじゃて」


「ちっ、カヅキだ。 よろしくなギルマスのロナードさん」

「ガッハハッハ、そうこなくっちゃな。 横のお嬢さん、横に座ってもいいかい?」

「はい、すぐにお席を」


「鬼人に遭ったんだってな。 どうだった?」

「ああ、それならこれを見てくれ。 境界の森についてのレポートだ」

「ほう、手回しが良いな。 ふむふむ」


「ロナードのおっさんが見てる間に、シュタイン爺さんの話を進めておこうか」

「はて、何か約束しておったかの?」

「鉄道を作る事にしたんだが、鉄道ってのは貨物や人を沢山乗せられる乗り物なんだ」


「今舗装している道路と関係しておるのじゃな。 物資や人を乗せる乗り物なら馬車があるが、規模が違うんじゃろうな」

「ああ、全くその通りだ。 人だと千人以上乗せる事も可能だと思う」

「そりゃまた、豪気な事じゃな」


「シュタイン爺さんの商工ギルドの横に広い敷地があったろ。 そこにステーション、つまり駅を作りたいから土地を譲って欲しいんだがな」

「ふむ、してその見返りは?」

「現在この砦村、キャッスルフォートの中心部はほぼ完成している状態だが、外周の一部を一大歓楽街にする予定だ。 そこで商売する利権の一部をくれてやろう」


「フォッホッホ、そのような絵に描いたような話では、ちと返事はしかねるのう。 あの土地は厳密に言えばわしのものではなく、商工会ギルドの土地ゆえ」

「おうカヅキ! この報告書は良くできてんな。 で、鬼人とは殺り合ったのか?」

「まさか、まぁ少し付き合いができそうですが」


「ほう、あの化け物がな。 ところで魔物討伐の線引きの指針求むってのは何の冗談だ?」

「そうだな、討伐対象の一定の目安っていうのがあるのかと」

「なるほど、魔物の中には友好的なものがいるって書いてある項目だな」


「そうだ」

「ふむ、線引きは無いな。 魔物は魔物だ」

「魔物だから討伐対象なのか?」


「まぁ、人間も討伐対象になるからな。 魔物じゃなくても狩る事はあるな」

「犯罪者か、確かにな」

「なぁ、余り堅苦しく考える必要ってないんだぜ。 お前が考えてるのは共存だろ?」


「まぁな」

「過去には人族とエルフ族が戦った歴史もあるんだし、お互いに利害関係があって戦わずに済めばそう難しくはないって事さ。 そう言えば、お前達の中に魔物が居たっけな」

「なんだ、ばれてたのか」


「珍しい魔物だよな、フォルスラ鳥だろ。 あんな気難しい奴良く手なずけたな。 ティマーがいるのか」

『そっちかよ』

「どっちにしろ、人様に危害を加えなければ問題無いがあのままじゃ、どの町でも入れないな」


「その為の首輪だろ、どんな拘束効果があるんだ?」

「魔力キャンセル効果と、位置情報だな。 いくら飼いならしたペットでも、人込みで火を吐かれちゃうとな。 まぁ獰猛さによるが、テイムした魔物は街中じゃあまり連れて歩かない方がいいな」

「トラブルの原因になると?」


「まぁな、大きな魔物は怖がられるから、預かり所で預けておくと良いな。 出入り口に厩舎があるだろ」

「フォルスラ鳥なら、馬代わりだから良いだろ?」

「危険が無ければな、もし何かあったらすべて飼い主の責任だからな」


「ああ、頭に入れておく」

「ところでキャッスルフォートだっけ? あまり目立っちゃまずいんじゃないのか」

「うーん、これだけ規模が大きくなると、隠しようがないからな」


「ガハハ、そりゃそうだ。 まあ、争いに巻き込まれないようにするこった。 ところで支部の件はどうすんだ」

「建材も全てこっちで用意するし、土地は確保してあるから、好きに使ってくれ。 他に必要なものがあるならできるだけ融通するぞ」

「そりゃ助かるな。 ついでにお前んとこの兵士全員、冒険者登録頼むぜ。 支部作るのには、キャッスルフォート出身の冒険者三十名の確保は必要だ」 


「今回の訓練兵は二十四名に、無登録のメンバーがこれに加わるから大丈夫だ」

「ああそれに、全員ランク付けもやらないとな。 詳しい資料は娘が用意してくれるはずだ」

「それについても、対応する専任官を付けるから、実施日のすり合わせも問題ないだろう」


 かづきはクラークの意見に沿って、商工会ギルドの親玉とズナン冒険者ギルドの責任者と、こうして直接情報交換する事によって、緊張のバランスを取る事ができるだろうとの考えであった。 砦の内情を全て教えるわけにはいかないが、キャッスルフォートが安全な場所と理解して貰えるだけでも、こちらにとっては大きなメリットがあるのだ。


――――

 屋敷内はかづきのいた世界に比べてみると、まるでお城のような豪華さであった。 一階にはラウンジがあり、カウンターバーとソファーが備え付けてある。 淡色で紫色の絨毯がお洒落だが、ほかにもいくつかの部屋があり、会議室にも使える談笑室や警備員の待機室と寝室なども備わっていると聞く。


二階は広間であるが、いくつかの仕切りの部屋があり、壁を移動させる事によって部屋の規模が変わるという優れものだ。 大きなパーティーなどの催しはここで行われるが、床材は中央がフローリングになっており外側には絨毯とソファーが敷き詰めてある。


三階には厨房があり、食堂が備わっているがカウンターバーや小さなキッチンも備わっている為、食事の規模によってお洒落な部屋もいくつかあるようだ。 四階以降は客間となっているが、かづきの設計によってホテルの客室とほぼ同等の部屋構成になっている。 高級とまではいかないが、それなりの家具やベッド、調度品はこれから増えていく事だろう。


六階まではこうした客間で、全室六十部屋とちょっとしたホテル並みだが、滞在客はすべてここへ泊ってもらう必要があるので、部屋数はそれなりに必要というクラークの意見を受けた為である。 七階には現在何もなく吹き抜けで大理石だけが敷き詰められており、八階と九階はかづきのプライベートルームである。


八階には訓練場がいくつかあり、鍛錬の場として用いられる予定だ。 床と壁に緩衝材が用いられており、全て木材が使われている。 数カ所に障壁を張る為の装置が備わっている為、かなり堅剛な造りだろう。 九階には部屋がいくつかあり、半数はメイドや執事となる者達の部屋で、この屋敷で働く者の住み込み部屋で執務室もこの階にある。


十階は客間よりも広い部屋が幾つもあり、かづき達の住居空間となるが、かづきの発明となっている要所部分は門外不出扱いとなっている為、この階層に書庫として封鎖されている。そして彼女たちの希望もあって、ミシェータ達の研究室もこの階層に作られている。 十一階は屋上となる部分だが、その一角はお風呂が幾つか備わっている。 もともとこの地が砦村だった頃から、地下には上質の大理石があり、建材として使い放題という事で、屋敷全体に大理石がふんだんに使われている。


大理石は非常に堅牢だが、酸には弱いという面もあり、性質上の弱点は残るがこれは致し方の無いところであろう。 しかし、落成式で行ったかづきの魔力注入によって、全体に障壁がかかる事になる為、外観には特に問題が無いのだ。


――――

「ふむ、ようわかった。 駅になる事で、流通が盛んになり人が増える事で、さらに商いの効率が上がるんじゃな。 周辺に施設を作る事で更なる需要も見込めるというわけか、考えたな。 すると周辺の取りを買い占める手立ても考えねばな」


「ディアンヌ、あれを持って来てくれ」

「はい、アロンこっちへ運んで」

「コー、ホー」


 アロンが運んできたのは金のインゴットである。 この国の金は、金貨と粒金と呼ばれる砂金が一部流通しているだけで通常は銀の流通しかないが、これは金自体の採掘量が少ない為である。 見せ金として運んで来たものだが、粒金を加工して100gのインゴットに仕立て直したもので、その数は現在千枚ほど所有している。


インゴットの表正面には龍の印と共に24kと刻印がなされており、まばゆく怪しげな光を放っている。 千枚のインゴットはピラミッド状に積み重ねられており、その威力は見せ金としての役目を十二分に果たしてくれるだろう。


「こっ、これは全て金なのか?」

「ああ、資金が足りなくなったら言ってくれ」


商工会ギルドの会頭シュタイナル・アベルボ-グは、その一枚を手に取り全体を見ているが、これまでどっしり構えていた冒険者ギルドのギルマス、ロナードも思わず手に取ってごくりとつばを飲み込んでいる。


「商工会の職人たちには、キャッスルフォートの仕事を優先にして貰いたい。 冒険者ギルドも引退者を含め、レベルの低い奴らでも仕事を斡旋しよう」


「ふむ」

「ガッハッハ、引退者か、引退者はごろごろいるぜ。 その代わり四股のどれかが無いものばかりだぜ。 使いもんになんねぇだろうが」

「そういった奴らはどうなるんだ? 施設とかあるのか」

 

「無いな、身内が居なきゃあ野たれ死ぬだけだな」

「んー、だよな・・・なぁ、そうした奴らが居れば、引き取るから連れて来てくれないか?」

「ん? どうするんだ」


「できれば保護したいな」

「お前、手足の無い奴らだけじゃなく、世の中にそんな不幸を背負っている奴らはごまんといるぞ? それを全て救おうってのか?」

「できればな、生きがいを見つけてやりたいんだ」


「そうか、良い奴だな。 協力はするが、全てを救うのは無理だぞ」

「それはわかってるよ、だが救えるものは救っていきたい」

「ふむ、練兵や商売だけじゃなく、愛の精神の持ち主か。 変わってるなお前」


「俺の所業で地獄に落ちた奴らもいるからな」

「償いって奴か」

「そうかもな」


「ふむ、さてそろそろ、宴もたけなわじゃが、孫娘は役に立っているかの?」

「ああ、流石爺さんの孫だ。 もう手放せないぞ」

「フォッフォッフォ、あっちの味はどうじゃったかの?」


「おじい様! そのようなお話お止め下さい」

「フォーッホッホ、その顔では上手く行っとるようじゃな」

「ああ、その事なんだが、近々挨拶に行こうと思ってたんだが、その・・・」


「ああ、構わんよ。 二番手でも三番手でも」

「すまん、順位は無いがその・・・」

「ふむ、語らずとも良い。 この娘が幸せならば、じゃがこれの親もおる事じゃて、それなりのお披露目はして貰わんとの」


「ああ、勿論考えてる。 すぐって訳にはいかないが、彼女たちの式はきちんとやるつもりだ」

「カヅキ様・・・」

「あっ、ミシー大丈夫!?」


「あ、うん、今彼女達って言ったわよね」

「うんうん、言ったわ。 私たちの事よ」

「うーん」


「大丈夫ですか? ミシーさん」

「ごめんカヅキ、ミシェータ嬉しすぎて失神したみたい。 ハハハ上に連れて行くわね」

「ああ、ジュリナ、デァンヌ頼む」


「ガッハッハ、全く色男だな。 気に入ったぜ」

「全くじゃて、こうなればもちっと近くで見てみたいのう」

「部屋はあるから長居してくれて構わないぞ、ただし工房の技術は盗み出し禁止だぞ」


その後かづきはクラークの差配で、あちこちのテーブルを回り挨拶を交わした後、それぞれの見送りを終え明日からの事を考えていたかづきだったが思わぬ人物に呼び止められたのである。


今回より躍動編となります。

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